厚生労働省のデータによれば、平成26年時点で専業主婦世帯は687万世帯、1114万世帯が共働き世帯と発表されています。数値は昭和55年時点とほぼ逆転、女性の社会進出や雇用形態の変化、少子高齢化など複合的な要因で、共働き世帯の割合は今後も増加していくと推察されます。

 この連載では実際に共働きしている家族を料理・買物・生活という切り口で取り上げ、どんな日常を送っているのかショートエピソード形式で毎週お届けします。

第4話 ちゅうぶらりんな妻・ゆかりの目線

 私の無給の第2ラウンド延長戦は、18時から始まる。

 会社を出たら電動ママチャリを走らせて保育園にお迎えに行き、帰宅するとスーパーのビニール袋にまとめられた洋服、お食事エプロン、口拭きタオル、水着、使用済みオムツを手早く仕分けする。

 洋服と口拭きタオルには、子供が保育園生活をエンジョイした証の米粒や泥、手強いクレヨンのラインがこびりついている。水着はオシッコしていないか洗濯機に入れる前にチェック。使用済みオムツはまとめてゴミ箱だ。

 遊んでほしそうに足元にまとわりつく娘の華に歌を歌ってごまかしながら、夕食を作る。定番は、鍋を使うみそ汁や煮込み料理。正直マンネリだけど新しいレシピは試さない。火にかけているわずかな時間、子供の遊びに付き合えるからだ。

 自分の食事もそこそこに、華が食べ終えたら床の食べこぼしを片付けてお風呂イン。身体を洗ってあげて、タオルで拭いて、さらっとしたボディオイルを乾燥肌に塗り、パジャマを着るのを応援して(テンションを上げないと脱いでしまうのでやり直しだ)、お茶をあげ、髪の毛を乾かして、逃げ回る娘の歯を磨いたら、ようやく寝る前の絵本タイムだ。

 就寝時間は彼女の気分次第で、21時半なら上出来だけど大抵22時を過ぎてしまう。こんな生活リズムではいけないと毎日思うが、どうしようもないのだ。そして今日みたいに運が悪いと、夫が帰ってきてその就寝時間はさらに遅くなる。

 子供を産むまでは、21時半なんてエンジニア仲間と飲んでいる時間だった。仕事は自分のペースで成果を上げることが楽しく、思う存分、同僚と意見交換して、勉強していた。

 育休の復帰後は、自然と一人で完結する仕事は任されなくなった。面と向かって言われたわけではないけれど、いつ休むか分からないリスク要因を抱えているからだと思う。

 いつからだろう、同僚の「大丈夫だよ」という笑顔を疑うようになってしまったのは。何度も「すみません、お先に失礼します」を言って帰らせてもらって、愛する人と幸せな家族を作れていて、保育園にも入れて。ありがたい境遇なのに、暗い寝室で涙が出る。

 職場に私がいる価値はあるのだろうか? なぜ、うまく両立できないんだろう?

 時短の2時間分、給料は下がったけれど、精一杯仕事をしている。自分なりに前倒しで仕上げる工夫もしているし、スピードは上がった。体が資本なので、毎晩の献立もできる範囲で栄養バランスを考えている。でも、そもそも物理的に時間が足りないのだ。

 夫も父親なのに。私だってもう少しで昇進できるはずだったのに。ワンオペ育児をしているとどうしても落ち込んで、中途半端な立場でどこにも所属していないように感じる。

 先週、「この写真、ハナちゃん良い表情だよね~」と夫が言うからスマホ画面を見たら、彼の写真フォルダはほとんど私が送った娘の写真で埋まっていた。彼は知らないんだ。私がお迎えに行ったときの華のはじけるような笑顔も、あの地獄の歯磨きタイムも。

 仕事も家庭も育児もできる今の恵まれた環境は、分かっている。だから苦しいんだ。

 夜遅く帰ってきた優樹のために、冷蔵庫には、食べると思って残していた一人分のおかずが入っている。でもきっと彼はまだ気付いていない。

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>第5話 週末が生きがいの夫・茂の目線

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