10年で売上げ倍増、経常利益は8倍に

 思いもかけない形から、くず餅乳酸菌®の大発見に至ったわけだが、そこを出発点とし、老舗にありがちな店を守るという考えにとらわれず、渡辺社長は新たな事業を展開する決断をした。

 もともと、渡辺社長は店を継ぐ気はなく、大学卒業後、大手銀行に就職。支店で融資や営業を担当し、債券トレードの仕事にも従事していた。銀行を辞めて船橋屋に入社したのが1993年。祖父も養子、養子は先代にいろいろ気を遣うこともありがちで、経営の舵取りも思うようにいかないというケースもままある。

 だが、自分は長男として気兼ねなく家業に携われる。200年以上続く暖簾の重み、それを支えるモノづくりを伝承し、企業の大多数を占める中小企業を強くする、そうした思いで跡を継ぐことにした。

 父親からバトンタッチする形で2008年、代表取締役社長に就任。10年間で売上げを倍増させ、経常利益も約8倍に伸ばした。そして今、くず餅で発酵和菓子文化の次世代へ継承する役目を担いながら、くず餅由来のくず餅乳酸菌®による健康と美を提案する事業を展開し、次の100年を見据えて持続的に成長する企業に育て上げていこうとしている。

 100年後、いや、10年後、船橋屋はバイオ企業に変身しているかもしれない。そのとき、社名は船橋屋それとも? いややはり船橋屋か……。老舗のチャレンジはどのような物語を紡ぐのか極めて興味深い。