くず餅は和菓子で唯一の発酵食品

 その繁栄に暗い影を落としたのが第二次世界大戦。6代目は戦局が悪化する中、くず餅の原料の大樽に水を張って空襲から守り、戦後の焼け野原からの復興に尽力し、今日の船橋屋の礎を作った。

 くず餅は和菓子で唯一の発酵食品。船橋屋は原料の小麦粉を練り、水洗いしてでん粉を沈殿させ、450日もかけて乳酸発酵させる。その製法は創業して200年以上たった今も基本的には変わることはない。

 8代目の渡辺雅司社長は、2010年、ひょんなことからその乳酸菌の存在を知った。亀戸の工場に知人の紹介で気功師が訪れたが、でん粉の入った原料タンクにただならぬ雰囲気を感じたのだそうだ。その上澄みを捨てていると話すともったいない、ものすごいパワーがあると言われため、専門家に研究を依頼。2016年に「くず餅乳酸菌®」(学名ラクトバチルス属パラカゼイ種)という特有の乳酸菌を見つけた。

 くず餅乳酸菌®は、6代目が死守したことで、200年以上江戸時代から生き続けている日本古来の乳酸菌で、植物性で乳アレルギーの人でも摂取できる優れたもの。  

 そこで、船橋屋は、今年6月、1杯に10億個のくず餅乳酸菌入りのシロップのかき氷を発売し、「亀戸天神前本店」をはじめ6店舗で9月(一部店舗は8月)まで展開している。

 これからもくず餅乳酸菌入りのようかん、ぜんざい、甘酒などさまざまなアイテムを開発していく計画で、今秋にはマカなど他の成分も加えた栄養系ドリンクを展開する予定だ。

 これらに先立ち、昨年から生菌に比べて品質が安定する殺菌済みの菌を使用した医療用カプセルを販売しているが、ジェル化した一般向けのサプリメントの分野にも進出する。

 さらに大手化粧品メーカーと連携して化粧品の開発にも取り組んでおり、健食から美の領域へも事業を広げていく。

 こうした新たな取り組みを行っていくために、社内ベンチャー的な組織を立ち上げ、それぞれのターゲットを見極め明確にした上で、新たなマーケットを開拓していく。