「先生、上昇傾向の人件費が一転して下がり始め、人時生産性が改善してきました。ありがとうございます」とあるチェーンの社長の一言です。

 こちらの企業はもともと利益水準が高く、店舗改装を中心に収益を上げてこられました。不思議なもので、売上げの好調な企業ほど、こうした業務の改善への取り組み遅れ気味となります。このチェーンも例外ではなく、新店や改装依存から脱せず、販管費は上昇傾向にありましたが、社長自ら、高い人時生産性目標を掲げることを課し、人時生産性向上について口を酸っぱく言い続けたことで、成果が出始めたところといえます。

「四半期ベースで、売上客数が厳しい中で、業務を減らすことに着手していなかったら、大変なことになっていたと思います」と運営部長も少しホッとされ、笑みがこぼれていたので、必死にお手伝いしたかいがあってよかったと思っています。

手を伸ばせば届くものは目標とは言わない

 私も、こちらのチェーンに対しては当初からかなり厳しいことを言わせていただきました。そうした中で、運営部長自らがさまざまな手を打ち、つま先立ちで背伸びをし、精一杯ジャンプし続けたことで、得られた成果といえます。

 何でもそうですが、手を伸ばせば届くようなところにあるものは目標とはいいません。チャレンジして背伸びをしても全く届かないところにあるものが目標であるべきで、そこに向け、経営陣として「もうこれ以上無理!」というところまでやり切った経営者だけに、初めてゴールへの秘密が明かされます。

高い目標を掲げることで、業務改善が大きく進んだ

 このチェーンでも社長自身がそうした高い目標を掲げることで、これまで停滞気味だった業務改善の動きが大きく変わってきました。

 例えば、作業指示書のLSP化を推進し、効果的な人時配分の適正化を図るために、週次のミーティングで他部門への人時移動を積極的に行うようになりました。

 また、本部からの報告書や計画書の作成もガイド時間が設定され、今までは社員が残業してやっていたものを、所定内でスケジュールに組み入れてやることで、集中して時間内に終わるようになっています。

 本部を中心に、こうした業務項目を洗い出し、整理していくことで確保できた時間を、品切れ点検であるとか、商品ロス点検業務に再配分しています。その結果、販売管理費は下がり、荒利益高が増えていくようになり、一つ一つの業務が収益を引き上げる業務に生まれ変わることになりました。

本部が動きを変えれば店舗の意識も変わっていく

 本部がこうした動きをすることで、店舗で「やってもいいんだ」「やればいいんだ」「やればできるんだ」といった意識が芽生え、非効率な業務を発見し、店内でできることを標準化していく体制を根付かせられたといえます。

 少子高齢化、労働人口減少という漠然とした課題に対して、経営陣が主体となり、具体的に業務量を減らしていく決断をしたことで、店舗がそれを受け、行動するようになった結果といえます。