前回は日本最大の小売企業であるイオンの取組みを聞いた。しかし日本の小売業の多くは中小企業である。そのような企業はイオンのようなサプライチェーンの掌握、コントロールは難しい。

 第4回では小規模の小売企業ができることについて、ヤマダストアー株式会社 店舗運営部 部長 中野 篤氏に同社の取り組みについて伺った。

 ヤマダストアーは兵庫県に8店舗を展開するスーパーマーケットだ。2017年、価格が高騰していた絶滅危惧種のイカナゴの取り扱いをやめ、2018年の節分には恵方巻の発注数を欠品覚悟で昨年準拠としたことで話題になった。

 ホームページを見ると、「ヤマダストアーでは、出来るだけ持続可能な漁法を選択し海に優しい漁法をつづける漁師を積極的な販売を通して応援することで、お客様・ヤマダストアー・生産者・地球環境、すべてが喜ぶWIN-WINの関係を築きたいと考えています。」とあり、環境問題に取り組む姿勢が見てとれる。

 実際に売れ筋の旬の商品の扱いをやめることでどのような影響があったのか、どのような意識で取り組んだのかを伺った。

価値が伝わらなければただ高いだけ

中野さん:水産資源の保護が主題というわけではなく、「儲かるから獲れる分だけ獲ってしまったらいいという状況でいくと長続きしませんよ」とどこかが言わんといかんかなと思って、僭越ながら一言だけ声を上げたというだけの話です。イカナゴ、特にくぎ煮は文化なので、続けていくためにはどこかで一度考え直す時間がいるんじゃないかということです。

――売場にPOPがたくさんありました。

鮮魚売場では吊り看板で漁法や水産資源について説明している。

(資源の)状況を把握するには消費者よりも我々小売業の方が、情報源に近いので。日々の仕入れの中で値段がどんどん上がっていったり、ものがなくなったり、知りえた情報は発信していくくらいしかできないかなと思っています。

――発信の手段は?

 広告なり売場のPOPなりくらいです。SNSも若干はやっているんですがあまり本腰入れてっていう感じではないですね。

――HPには持続可能な漁法をしている漁業者さんを応援するとありました。

 できるかぎりは。全部揃えきれないのでそれじゃないとダメとは言わないんですが、応援はしていきたいなあと思っています。

 まじめな飼い方、育て方、漁法でやればやるほど効率が悪くなって、値段も高くなることが多いと思うんですが、値段が高くても、というか正当な価格で、そういう商品を売るお手伝いをうちがどうできるか、それには情報が必要かなと思います。どこに価値があるかが伝わらなければただ高いだけ。

 例えばたこつぼ漁※だと、たこつぼ漁にはどういう価値があるのかを見せることによって「たこつぼ漁やってもいいかな」っていう人が1人でも増えてくれたら水産資源の維持、保全につながると思うんです。

(※たこつぼには小さなタコは入らないため、乱獲を防ぐことができる)

 それでその価値の分だけ漁師さんにも利益が出てwin-winの関係になれれば続けていける。

――どうやって漁師さんを見つけるんですか。

 仕入れの時に話を聞くとか。聞けばわかることです。今の段階でそういう人ばかり集めてるわけじゃないんですけど、増やしていきたいという取り組みです。

――そうやって仕入れた商品を積極的に売っていくということですね。

 そうですね、情報を付けて広告に載せます。広告を入れないと伝わらないので。

――通常の商品との構成比は。

 どれぐらいだろう…。あまり比べたことなかったので。10~20%くらいだと思うんですけどね。売り上げはそんなに変わらないと思います。他のもんも売れますから。よそよりは構成比は高いと思うんですけど。

――「取り組みが伝わってきたな」という感覚はありますか?

 イカナゴの件でもそうですけど、売場でお客さまから怒られることも意外とそんなになくて。2017年は一週間くらい(イカナゴを)販売したんですが、あまりにも量が増えてこないし、値段も下がらないので「危ないな」と思ってやめたんです。2018年は最初から一尾も売ってません。

思想を主張するより「皆で考える」

――2017年はそれでも売り上げが落ちなかったということですが、2018年はどうでしたか。

 今年は多少下がったんと違いますかね。2018年は生魚だけじゃなくて、釜揚げとアウトパックのくぎ煮もやめたんですが、これはちょっとやりすぎたのかもしれないなっていうのは若干あります。うちの主張もあるんですが、お客さまをないがしろにするのも…。程度、レベルというのは考えていかないといけない。スーパーはお客さまのためにあると思っているので。

――その辺難しいですね。

 バランスですよね。ただイカナゴが本当に少なくて、今年(2018年6月)もずっと揚がっていませんし、どこかで一度立ち止まらないといけないんじゃないかなあという思いはあります。

――ウナギはどうですか?

 ウナギもまあ少ないですけど、難しいところで。全部やめちゃうとエゴが出すぎるかなと思います。今はまだ、ウナギに関してはバランスが悪いというか。なんていうか、思想を入れすぎるとちょっと偏りすぎるかなというところがあるんです。

加工肉について消費者に一考を促す看板。

――思想の話になるとそうですね。

 思想、信条というより「みんなで考えようね」っていう話でやってるので、ウナギに関しては販売をやめようとまでは考えていません。イカナゴに関しては旬の時期の問題ということもあるので。ウナギは特売を去年より減らしてます。僕らはイカナゴの方が危機感をもっています。

――マグロはどうですか?

 ホンマグロはもともと特売をかけてはいないんです。うちらがやりたいのは「ホンマグロ絶滅するから食うなよ」っていうよりも、「本当に皆で考えないと長い間続きませんよ」ということなんです。「だからマグロをずっと食べたかったら我慢するタイミングもいるよ」っていうことですね。

 獲りすぎてるのは間違いないと思うんです。しかも産卵する前に(30kg未満の魚体を)獲り続けたらなくなるのは道理ですよね。ただ売らないとは考えていません。もちろんたくさん売ろうということもないです。通常通りで。手に入らなくなって値段が上がったらそれはそれで仕方ないのかなと。

――条例を守って漁獲されたマグロを選んで仕入れることはできるのですか?

 マグロに関してはそこまで行けてないです。(仕入れの)量がそもそも少ないので、そこまで意識がないというか。(漁獲が制限されている30kg未満のものかどうか)仕入れる段階では正直わからない。たぶん、基本的に「さく」やブロックで買っているので、元が何kgの魚体かはわからないです。