ファッションの不振は大きく変わる消費形態に対応できていないことに原因がある。デジタル分野での新たなテクノロジーの活用も求められている。
  • スタートトゥデイ時価総額1兆円突破!好決算で急伸
  • イズミの新業態SC『レクト』。脱物販で体験重視し、居心地の良い空間が受ける
  • GUの新店舗はテクノロジー駆使したデジタルストア
  • スポーツメーカーの出店環境が好転、ファッション不振で引き合い増加
  • フリマアプリ使ったことがあるが5割弱に、利用者の7割はメルカリ
  • グランツリー武蔵小杉の小型百貨店『西武・そごう』が8月末に閉店
  • 楽天がエアウィーブの第三者割当増資引き受け
  • シーズメン、ネクスと資本業務提携財務体質を強化
  • ストライプインターナショナルのアメリカン ホリックは“色”で個性と知名度向上、今期19出店予定で販売効率重視へ
  • オートキャンプ人口増加中、手ぶらで参加!イベント初心者向けにテントメーカー店が後押し

 

〈業界の今〉EC化の遅れが「ZOZOTOWN」の先行を許した

 ファッション業界を取り巻く環境は厳しい状況が続いている。物質的に恵まれたこの国で必需品の衣類から嗜好性を楽しむファッションまで全てを売り尽くすには多難な時代となったのだ。

 この要因はいくつか考えられるが、その一つが富の集中だ。

 流通業界全体にもいえることだが、アマゾン、楽天などオンラインの成長と寡占化が際立っており、ファッション業界ではスタートトゥデイが運営する「ZOZOTOWN」の躍進には目を見張るものがある(2016年度決算では商品取扱高が前期比33.0%増の2120億円、売上高は40.4%増の763億円と、業界全体の市場がシュリンクしていく中で、毎年2ケタの高成長をしている)。これはファッション業界全般がECの取り組みに遅れた結果、先行した「ZOZOTOWN」が、ネットによるファッション購入者のプラットホームとして広く認知された結果といえるだろう。

 オンライン以外のリアル店舗でも、やはり大手企業の躍進が際立つ。全国専門店売上高ランキング(繊研新聞社)をみると、16年アパレル専門店127社の合計金額は4兆3647億円と前年比3.5%増に対し、ランキング1~10位の合計が2兆7062億円で前年比5.0%増と、上位企業の伸び率の方が高い。

 好調な大企業を中心に躍進しているのは豊富な資金力を背景に、大胆なプロモーションや商品開発、店舗環境などに積極的な投資ができ、そうした施策がおおよそ当たっていると見てよい。

 業態別に見ると、ファーストリテイリングをはじめとしたSPAモデルの企業が強い。非上場ではヤングレディスのストライプインターナショナルやライフスタイル総合型のマッシュホールディングス。上場企業でもSPA複合ブランドタイプのアダストリアなどが好調企業として挙げられる。

〈注目ニュース〉ファッション苦戦の中で起こる3つの変化

 17年上半期のニュースで注目したものの1つが、4位の「スポーツメーカーの出店環境が好転、ファッション不振で引き合い増加」だ。

 これは健康意識の高まりや自然派志向の流れが背景にある。カジュアルにスポーツアイテムやそのエッセンスを取り入れたスタイリングがファッショントレンドとなり、本来スポーツブランドが得意とするテクノロジー素材を組み合わせた商品に人気が集まっている。

 7年目に突入ともいわれるスニーカーブームも未だ健在だ。エービーシー・マートはスポーツ部門が3.8%の増加(17年2月期決算)。コンバース、ニューバランスの人気も続いており、スニーカー熱はしばらく続きそうだ。

 さらに政府もスニーカー通勤を奨励する動きが出てきた。スポーツ庁が日常的な運動を促し、病気を未然に防ぐ施策として打ち出している。これは膨らむ医療費の軽減にもつながるとし、靴の小売業や地方自治体などと連携してキャンペーンを実施するようだ。ノーネクタイ、クールビズが定着する中、職場のカジュアル化が増々進化しそうだ。

 5位の「フリマアプリ使ったことがあるが5割弱に、利用者の7割はメルカリ」にも注目している。

 リユース市場は活況。16年のリユース概算市場規模は約1.8兆円(自動車、バイク含まず)。品目別ではブランド品、衣料・アクセサリー、パソコンが多く、中でも古着市場はアパレル市場が大苦戦を続ける中にあって大きく伸びている。

 これまで個人間取引(CtoC)サービスといえば、「ヤフオク!」(Yahoo! JAPAN)をはじめとするネットオークションが一般的だったが、フリマアプリのネットオークションとの決定的な違いは、オークション形式ではなく、出品者が指定した固定価格で取引できる点だ。

 メルカリが成功した理由を分析すると、私はあえて『カッコいいデザイン』や『カッコいいサービス』を目指さなかったことだと思う。メルカリのサイトを見ると、ベースのデザインが大衆的であるだけでなく、出品者が自宅の床で撮った写真が無数に並ぶ。そうした“素人っぽい”デザインやムードが、『私でも手軽に出品できそうだ』と思わせたのではないだろうか(既にフリマアプリから撤退したLINEの『LINE MALL』は、素人だけでなく業者も出品していたため、プロ仕様のキレイなプロダクト写真が並び、素人の出品への障壁を上げてしまったのではないか)。

 総務省が行った15年末の情報通信機器の普及状況では、スマートフォンの保有率が72.0%(前年比7.8ポイント増)とパソコンの世帯普及率の76.8%に迫る勢いだ。ZOZOTOWNでもPCからの注文は年々下がり続けているのに反してスマートフォンからの注文は毎年増え続けて、今や77.5%がスマートフォンからの購入となっている。

 こうしたショッピングツールの変化を背景に、消費者と消費者を直接つなぐフリーマーケットでもスマートフォンの果たす役割は大きい。フリマアプリは売りたい商品をスマートフォンで撮影した後、そのまま出品手続きができる簡単なユーザーインターフェースになっていることが多いのが特徴だ。フリマアプリでは扱われる人気商品は「レディスファッション」「コスメ、香水、美容」で、主に女性や主婦を中心に広がっている。また近年、若者の間ではいずれフリマに出品すること前提に衣服を購入するケースがあるようだ。

 フリマ利用未経験者の今後の利用意向は多く、フリマアプリなどの便利なツールが個人に提供され、かつ取引の安全性や利便性が確保されれば、リユース市場の規模の拡大が予想される。

 3つ目に注目したニュースが、3位の「GUの新店舗はテクノロジー駆使したデジタルストア」だ。

 オンラインとリアル店舗を融合させた大型実験店が誕生した。ジーユー横浜港北ノースポート・モール店で初導入したのが、「オシャレナビ・ミラー」と「オシャレナビ・カート」。電波によって非接触でもデータを読み取るRFIDシステムは商品を近付けるだけで反応し、店舗、オンラインストアでの在庫状況や購入者からのレビュー、モデルや一般人によるコーディネイトなどを表示。売場に設置されたビーコンに近づくと、各売場のお薦め商品やプロのスタイリストによるコーディネイト情報が「オシャレナビ・カート」設置のモニター上に表示される仕組みだ(目新しい取り組みだったせいか、オープン当時は常に「オシャレナビ・カート」はフル稼働状態という人気ぶりだった)。

 セルフレジも10台導入してスムーズな購買体験を提供しようとする。業態にもよるが、一般的にレジ周りには総従業員数の3、4割ほどの人員が必要とされる中で、この部分の省力化が図れると、店舗コストに大きく反映されるだろう。1年半ほど前からGUの他店でもセルフレジ導入は進められているが、スムーズに使用できているのは一部の常連客くらいで、多くの一般客や外国人観光客などは手助け要員が常時必要な状態にある。特に日本人は意外とセルフサービスに抵抗を感じる人も多いようで、随分と普及したイメージのセルフ式のガソリンスタンドでも全国レベルでみると3割程度の普及率に留まっているという。1998年の消防法改正を機に登場し、約20年の月日をもってしてもその程度なので、セルフレジの普及には時間をかけてじっくりと取り組むことが必要だろう。

〈来年はどうなる?〉「食」「美容」「健康」との複合型が増える?

 現在のファッション業界で伸び代が期待できる流通チャネルとして引き続き有望なのはインターネットだ。もちろん、使用ツールはスマートフォンを基本として新商品、リユース市場も含めて旺盛となる一方だろう。

 ショッピングにかける時間と労力を節約する流れが続くと予想しており、リアル店舗がネットショッピングで体験できない快適さや心地良さ、楽しさを提供できないと、ますます客離れを起こすことになるだろう。

 ネットとリアルを線引きして考えるのではなく融合させた店舗がこれからは理想的となる。欧米の店舗では売場にはもちろん、マネキンにビーコンを搭載させて、情報を発信するケースが増えてきている。米国のブルーミングデールズの2階では2分間で身体の2万ポイントをスキャンしてくれて、ブランドごとにサイズマッチする品番などの情報をプリントアウトできるサービスを提供している。

 食の欧米化や生活文化も変わり、日本人の体格も昔のままではない。既製品とはいえ、対象ターゲットに合ったサイズ対応が顧客満足度を高めることにもなるだろう。従来と比べ、安価なイージーオーダーやパターンオーダーに対応した企業もあるが、ほとんどビジネスシーンを前提とした商品しかなく、もっと着用オケージョンの広がる品揃えが欲しいところだ。何も特殊サイズに対応せよと言っている訳ではない、既製品のサイズスペックに不満を覚えるお客は想像以上に多いと考えた方が良いのではないだろうか。

 時代とともにファッションの消費形態そのものが変わりつつあることも意識しなければならない。長らく続くデフレ・低金利・低賃金からの生活防衛意識を背景にバーゲン消費や低価格ファッションが隆盛してきた。それがさらに一歩進み、節約・リサイクル意識が強まり、余計と思われる物や着る頻度の少ない洋服をリユース市場に出品する。

 情報量も豊富になり、売れ筋情報の共有化が招いた品揃えの平均化から個性的な店舗が減り、消費者に価格以外での価値観を納得させられていないのが、今日のファッション不信を招いている原因の一つと考えられる。

 特に若い人たちの「ファッション」の価値観は大きく変わりつつある。ファッション誌を読まなくなったし、洋服やオシャレに関した情報はインターネットを通じて仕入れている。かわいく着飾ったり、格好良くキメたりするよりも、仲間たちと安価でおそろいの洋服でテーマパークに行って遊んだり、花火大会では浴衣を借りたりしている。ファッションが地位やライフスタイルや自己を表現するものから、その時の気分や場を盛り上げるためのツールになりつつあるように感じる。

 こうした服自体の価値観の変容は若者だけに留まらない。それは洋服に対しての憧れの低下や先物買いをしなくなった今日の消費者の洋服の買い方の変化と言い換えられる。そうした流れに反してファッション商品の供給過剰が常態化してしまっている現状が、ますます洋服への関心を低下させ、ファッション離れを起こすことにつながっている。

 今の消費者が「食」「美容」「健康」に関心を持っていることを考えると、今後はこうした要素をうまく取り入れた複合カテゴリーミックスしたブランドが増えてくると予想する。