店は「何」のためにある?

 五感――見る、聴く、嗅ぐ、食べる、触るーから得られる情報は、私たちが想像している以上に多いです。

 単品では目立たない商品も、関連商品とイメージ陳列されると魅力がグッと引き出され、欲しくなることはよくあります。「百聞は一見に如かず」ということわざにもあるように、店は「商品」を見る、体感するための場所という位置づけもあると思います。

 また平日の昼間に大きな商業施設やショッピングセンターを訪れると、ご近所の顔見知りと思われるお客さま同士がお茶を片手に座って長話をしている光景をよく見かけます。オフィス街では、仕事の打ち上げで会社員が集まる場として盛り上がっている居酒屋もあります。

 もちろん、彼らは店で消費をしていますが、こうした姿を目にすると、私は買うという行為よりも店を「居場所」と捉えているようにも見えます。買物をするというよりは話をする場所として、「店」を選定しているのではないかと思います。

 基本的に店はお客さまを選べませんが、自店のターゲットを明確に打ち出すことはできます。会員予約制の店とタイムセールの呼び込みを行う店では、それぞれ魅力を感じる人は違います。プライバシーを守りたい人や商品をじっくり見たい人は前者を選ぶでしょうし、欲しい商品に対しての予算が少ない人やお得な買物を重視する人は後者に殺到するでしょう。

 店側も、お客さま側も、選ぶべき選択肢は圧倒的に増えました。言うまでもないことですが、店側はどんな店を作るかを自分たちで決めることができます。無料・安価に利用できる販促ツールやリソースも増えており、大企業も中小企業もどんどんチャンスが平等になってきています。

 そしてお客さまの消費行動も少しずつ、でも明らかに変わってきています。ちょっと調べれば競合店はすぐ見つかるので、商品を比較して買い分ける手間を惜しまなくなりました。大量の品揃えがある店と一カテゴリーに特化した店は脚光を浴び、どっちつかずの中間層の店は目立たないようになってきました。

 ファッションを一例に挙げるなら、少ない顧客を大切にした、ハイブランドを目指すのか。それとも、多くのお客さまの手に届けるためにリーズナブルな商品を販売するのか。どちらを選ぶかによって、店が取るべき行動は全く変わります。

 日常業務で忙しく、目の前の仕事に追われていると、どうしても自分たちがどちらを軸に考えていたのか忘れてしまいがちです。

 売上げが高いうちはそれでもいいかもしれませんが、売上げが下がる、お客さまが離れたらどうでしょう。そこから急いで考えたアイデアを試したり、新しい対策を取ったところで、状況をすぐ好転させるには時間がかかるはずです。働く場所が異なる本部と店が、常に同じ目標を共有していることも重要だと感じます。