『メルカリ』が人気です。メルカリしかない価値とは、一言でいうと、「手軽に節約できて小遣いを稼ぎ、お得に買物ができること」です。一例を挙げるなら買い手が高級ブランド品を安く買いたいと思えば、コメント欄に「○○○○円になりませんか?」という値引き交渉を気兼ねなく普通にできる。こうした売買プロセスのハードルの低さが強みになっています。

 なぜ、これが実現できているのか? それは、メルカリはフリマアプリ企業でもあり、リサイクル企業でもあるのですが、実は今や月間1000万人が利用するまでの社会現象になった不用品の売買を通じて交流するSNS企業でもあるだからです。

 メルカリが支持されている理由は、買い手と売り手の双方が売買プロセスを通して交流することで、仲間同士で売買している感覚を持つ仕組みにあるのです。

メルカリはSNS企業だから、競合企業と一線を画せた!!

 メルカリは買い手にはお得感を、売り手には納得感を提供し、売り手と買い手双方が匿名を守りつつも交流できるという仕組みですが、そこにフォロー機能を加えることで、コミュニティーが生まれる楽しさを生み出したところにも特徴があります。

 ここで、メルカリが提供する売り手の納得感について考えてみたいと思います。

 日本で不用品を売るには、リサイクルショップや『ヤフオク!』や『アマゾンマーケットプレイス』しかなく、これまでは常に買い手が優位に立つ状況がありました。売り手は「不用品なので売れないのでは」という不安を抱き、買い手の言い値でしか売れない、買い手を絞ることにネガティブになる、そして買い手の素性など知ることができないという、売り手側の思い込みや不満がありました。

 メルカリはそうした売り手の思い込みや不満をデメリットと捉え、次のような売買プロセスを仕組み化し、この問題を解決しました。

・売り手の個人情報は匿名で開示されない(匿名であれば買い手にコメントしやすい)

・売り手が買い手の条件を指定できる(買い手のコメントがなければ販売しないなど)

・売り手が買い手からの値段交渉を受けることで買い手の価格以外の要望を知ることができる

 メルカリは、このように不用品売買では常に不安を持っていた売り手の心理に焦点を当て、それを解決しているのです。

不用品の売買が1つの商品をシェアすることになる!

 メルカリは『誰かには価値があるのに捨ててしまうなど地球資源の無駄になっていることが多い』と考えています。この地球規模の課題を解決する取り組みを進めるのがメルカリなのですが、リサイクル企業であるというイメージを消費者へ訴えていない点もポイントです。

 いわば、「不用品を売買することでシェアできる取引の場を提供する」のがメルカリ。売り手にとっての不用品に多くの買い手がつき、最終的に要らなくなったモノが再利用されれば、同じモノがシェア(共有)される流れにつながります。

 メルカリがスマホに特化して、手軽に操作できる仕組みを追求するのも、多くの人が常に携帯するスマホは接点が非常に多いから。買い手は次々とアップロードされる商品に刺激され、SNSで友達と会話するように、「いいね!」を押しやすい。そこから値段交渉も始まり、売り買いが頻繁に起こる可能性が高まるというわけです。

 メルカリが描くシェアのビジネスは、互いの信頼を築きながら売り手と買い手がワイワイと楽しくモノを売買するコミュニティーづくりともいえるのです。

メルカリはなぜポートランドにオフィスを構えたのか?

 メルカリは日本の成功を軸に、2015年から取り組むアメリカ市場進出を進化させるべく、数十億円の投資をつぎ込んでいます(先の上場で得た約600億円の資金が力を発揮します)。

 同社のミッションでもある『新たな価値を生みだす世界的なマーケットプレイスを創る』を実現すべく会長兼CEOの山田進太郎氏自身が陣頭指揮にあたっているのですが、その拠点は“日々スタートアップの話題が飛び交う”サンフランシスコと、“市を挙げて捨てることを止めサステナブル(持続可能)な街を作り上げた”オレゴン州ポートランドでした。

 アメリカでフリマアプリ企業として事業展開をする場合、フリマ機能『マーケットプレイス』が人気のフェイスブックや同社にリンクする『オファーアップ』や、フリマアプリである『アマゾン』『イーベイ』、募集や求人なども含めた広告サイトである『クレイグリスト』と競合することを意味します。アメリカでは正確に短期間で届く宅配サービスが整備されていない点も課題です。そうした環境の中で、日本のメルカリが「便利さ」だけで他社と差異化するのは困難な様相です。

 メルカリが単に不用品を売買する日本のフリマアプリ企業で終わるか? それとも、シェアという価値が常識になりつつあるアメリカで、サステナブルな世界をアメリカ発でつくれるのか?

 その際のポイントとなるのは、日本で構築したお得感を入り口にSNS的要素で新たなシェアの価値を生み出す世界的なマーケットプレイスを創り出せるかにあります。

 もしアメリカという地で日本発のユニコーン企業であったメルカリが、日本の消費者に支持されたノウハウを駆使し、ポートランドで住民の支持を獲得できたなら、メルカリが「サステナブルな世界を提供する企業」とのブランドを全米で確立できる近道になるのは間違いありません。