「販促をドーンとやって、売上げをバーンと上げられないか」「データを分析すれば、何かいいことがあるに違いない」「ツールを導入したから、うまくいくはずだ」

 こうした会話をさまざまな場面で聞いたことがあるのではないだろうか。

 今、小売業界(スーパーマーケット、ドラッグストア、コンビニ、ホームセンターをイメージしている)を取り巻く環境変化は激しく、その影響は大きい。

 人口の増加、市場の成長が前提だった高度成長期とは違う。「巨大なEC企業の台頭」。あらゆる産業のデジタル化の加速は日本も例外ではなく、巨大EC勢力がリアル店舗勢力を脅かしている。それに「世界の先を行く人口減少、少子高齢化」が追い打ちをかける。“胃袋”を含め、市場総計が小さくなることと同時に、生産年齢人口の減少で人手不足もいよいよ深刻になってきた。

 生活者に目を向けても、時代を経てライフスタイルや志向性も多様化してきた。40代女性といっても1つの切り口で語ることはできない。専業主婦もいれば、働きながら子育てをしている人もいる。高級志向の人もいれば、節約志向の人もいる。欲しいものを欲しいときに手に入れられる(インターネットという)インフラが定着したことで、それら異なるニーズがより顕在化してきた。

 こうした中、ビッグデータに注目が集まり、それを活用したロボット、AI、マーケティングオートメーションなどに期待が集まるのは当然のことだろう。そして、冒頭で記した高度成長期のやり方では今後はうまくいかないことも自明の理だと理解してもらえるだろう。

 この連載では、小売企業がビッグデータをどう生かしていけばよいかを、活用事例や成功事例とともに紹介していく。第1回は、「ビッグデータ活用でのよくある課題とデータを利活用する意味」。少しでもこれからビッグデータを利活用していこうとしている小売業の皆さんの参考になればと思う。

データ利活用に関する小売業からの相談が増えている

 ビッグデータという言葉がもてはやされる前から、当社は主に小売業の販売データ、ポイントカードデータ、マーケティングリサーチデータを扱い、消費財メーカーや小売業のマーケティング業務を支援してきたが、近年、特に小売企業からのデータ利活用に関する相談が増えている。

小売企業からよくある相談

1 トップからデータ活用を推進するように言われた。/
 専任のセクション(CRM〈Customer Relationship Management〉課など)が設置されたが、何から手を付けていいか分からない。

2 ベンダーのBIツールを導入したが、一向に社内で利活用が進まず、使える人もいない。

3 分析の労の割に効果が小さく、もう止めた方がいいのではないかと迷っている。

 言い換えると、「やれと言われたが、これからどうしていったらいいか」「とりあえずツールを入れてみたが使い切れていない」「かつてのチラシのようなインパクトある売上げがつくれない」ということだ。

 それぞれ深掘りしていくと、共通するのは、「データを分析すること/分析するための環境を整えること」が目的になり、解決すべき課題、つまり片付けないといけない用事とのひもづけができていないということだ。特に、3に限っていえば、(本当に効果が出ていないケースもあるが)店頭や施策実現がやり切れていないことが背景にある。

 過去に当社で調査した結果によると、販促物設置における店頭実現率は40%程度。これがここ何年も改善されていない。100%は無理だとしても、50%強の店頭が改善されると、1つ1つの効果は小さくても、積み上がったトータルの効果は無視できなくなる。これはデータ利活用でも同じで、どんなに良いデータ、ツールを持っていても、重要なのは使い方。利活用はちゃんと実行できてこそ(店頭実現、現場オペレーションへ落とし込む)、効果が出るのだが、なかなかやり切れない。

 つまり、あくまでデータ分析は手段の1つであり、目的ではない。利活用で効果を出すには、何を解決したいのかを設定することから始めるべきだ。そして、分析結果を共有するだけでなく、それを現場オペレーションまで徹底することが必要で、(特定の部署、人だけが関わるのではなく)皆で使っていくことが重要になる。それができない限り、やって終わり、労の割に効果が出ないということになってしまう。