本部と店舗が存在するチェーンストアはマトリックス組織のため、数値責任が不明になる場面をよく見掛けます。

 IT技術が進展し、マーケティング、マーチャンダイジングでは数値分析にその技術が生かされていますが、マネジメントではその効用がまだ出ていない企業が多いのです。その理由は数値ごとに管理可能と管理不能の概念を整理できていないからです。

値引きは店舗、値下げは本部が管理する

 値引きとは売れ残ったため、売り切るために価格を引くこと。値下げとは大量に売るために計画的に価格を下げることです。責任の所在が違います。

 値引きは店舗の現場で発生します。売場計画の発注を失敗して大量廃棄につながりそうなとき、また、販売計画で売り込みを掛けたが、強気になり過ぎて在庫過多になりそうなときが代表例です。この値引きでは売場責任者には責任がありますが、本部には責任はありません。

 一方、値下げはチラシ特売で主力商品を低価格で販売するときに発生し、計画以上に売れ過ぎて計画以上の値下げ額が発生したとき、その責任は本部バイヤーにあります。

 つまり、値引きは売場責任者には管理可能で、本部バイヤーには管理不能。逆に値下げは売場責任者には管理不能で、本部バイヤーには管理可能となります。

 このように管理可能なものと管理不能なものをごっちゃに考えてはいけないわけですが、こうしたことは値引きと値下げ以外にもいろいろあります。

値入高は段階により管理可能者が入れ替わる

 商品ごとの値入率はバイヤーが決定するので、バイヤー管理可能なもの。仕入計画段階の値入高もバイヤーが計画するので、バイヤー管理可能なものですね。

 しかし、発注段階になると商品ごとの数量を決めるのは店舗の売場責任者なので、この段階では値入高はバイヤーにとっては管理不能なものになります。 

 値入高は荒利高の前提となる大変重要な指標ですが、このように段階によって管理可能者が入れ替わる厄介なものなのです。

 きめ細かく役割分担と管理の手法を決めないと、値入高コントロールが利かなくなり、目標荒利高を確保できない原因となります。

ロス基準設定の責任を果たさないバイヤーが多い 

 部門別荒利高は店舗とバイヤーのマトリックス組織から、店舗売場責任者とバイヤーの共同責任となります。

 荒利高の前提となる計画段階の値入高はバイヤー管理可能なもので、バイヤー責任です。一方、ロス高は店舗売場責任者が管理可能なものとなります。

 では、売場責任者がロスをコントロールするために必要なロス基準設定は誰の責任でしょうか? バイヤーが部門全体のロス基準を設定している企業は見掛けますが、カテゴリーごとのロス基準を設定している企業は極一部です。

 本来、バイヤーは目標とする荒利高を達成するのに必要な値入高を計画段階で考えるはずです、そのときに、カテゴリーごとにロス高を想定しているはずです。しかし、バイヤーはカテゴリーごとのロス基準を売場責任者へ提示できていないことが多いのです。

 実はここにも、目標とする荒利高を確保できない原因が潜んでいます。カテゴリーごとのロス基準設定はバイヤーのみが管理可能なのですが、この責任を果たしていないバイヤーが多いのです。