(3)著作権法などによる規制

 商標法・不正競争防止法の他、著作権法の適用も考えられますが、イベントのマスコットについて活用することはできるものの、アンブッシュ・マーケティングとの関係では、やはり規制の範囲が限定的であるといわざるをえません。

 また、景品表示法や独占禁止法(不公正な取引方法)などによる規制についても、その規制の範囲は限定的です。

グレーな行為には特別法が制定される可能性も

 以上の通り、アンブッシュ・マーケティングは、そのすべてが網羅的に規制されているわけではなく、むしろ、小売・流通業者の多くが気にしている③や④のような行為との関係では、法規制がほとんどないような状況にあります。

 しかし、今後の動向には注意が必要です。

 実は、東京オリンピックの開催にあたっては、IOCと東京都およびJOCとの間で「東京オリンピック開催都市契約」が締結されており、同契約には、東京都とその後ろ盾となった日本政府がアンブッシュ・マーケティングを規制する法律を整備することが契約条件として盛り込まれています。

 そのため、今後、商標・不正競争防止法などによる規制から漏れるアンブッシュ・マーケティングをカバーするための特別法(アンブッシュ・マーケティング規制法)が制定されることも考えられます。

 実際、2016年リオデジャネイロオリンピック(ブラジル)や、2018年平昌オリンピック(韓国)では、アンブッシュ・マーケティングに対応するための特別法が制定されています。

 東京オリンピック開催までまだ2年ほどあるため、アンブッシュ・マーケティング規制法が制定される可能性には注目しておく必要があるでしょう。

規制の意味を理解し、ともに大会を盛り上げていこう

 オリンピックを運営するためには莫大なお金が必要であり、それを支える知的財産制度が重要であることは言うまでもありませんし、これを逃れようとするようなアンブッシュ・マーケティングについて、東京2020組織委員会などが規制の必要性を唱えることも無理はありません。

 イベント関連の標章と同一・類似の標章があちこちで使われたり、行き過ぎた便乗商法が横行したりすれば、高いお金を出してスポンサーやライセンシーになろうとする者はいなくなり、その結果、オリンピックの運営が成り立たなくなるおそれもあります。

 他方、アンブッシュ・マーケティングの過剰な規制は、イベントの盛り上がりを損ねることになりますし、スポンサー以外の事業者の営業の自由などとの関係でも問題があります。

 IOC、JOC、東京2020組織委員会には、利権の確保にのみ走ることなく、バランスのとれた対応を求めたいところです。仮にアンブッシュ・マーケティングに関する特別法が制定される場合であっても、明確な要件を設けた上で、バランスのとれた法律となることを期待したいところです。

 そして中小事業者は、オリンピックに絡めた広告やキャンペーンなどを実施する場合、商標・不正競争防止法などの法令との関係はもちろんのこと、不当なフリーライド(ただ乗り)にならないように配慮すべきでしょう。

 前述の通り、行き過ぎた便乗商法は、オリンピックからのスポンサー離れを引き起こすこととなり、イベントが成り立たなくなる可能性もあることを理解しておきたいところです。

 オリンピックに関わるすべての人々において、スポーツが公共的なものであることの意味をよく考えながら、4年に1度のイベントを盛り上げていきたいものです。

《参考文献》
足立 勝『アンブッシュ・マーケティング規制法――著名商標の顧客誘引力を利用する行為の規制』(創耕舎、2016)