一意見が、高価格帯ヒット商品を生む

 そんなわけで私は引っ越し後の現在でも同じお米を購入し続けているのですが、実は当初、ネット通販HPには今まで買っていた銘柄の無洗米がありませんでした。恐らく無洗米加工は手間と時間が掛かるため、店頭でのオプションサービスだったのだと思います。

 引っ越し後の初注文時、電話でその旨を相談すると「あぁ、購入ボタンを作れば買えるけど今すぐにはちょっとできかねます」と答えてくださりました。

 販売できるニュアンスは感じられたので、図々しいなと思いつつも別のお米を頼んだ注文時にダメ元で「お忙しい中難しいとは思いますが、できればうれしいです」とコメント欄に書き添えると、何とすぐに希望銘柄の無洗米の購入ボタンを作ってくださりました。

 そして現在、何とその銘柄は単品としては高価格帯ながら常に販売ランキング上位に入る売れ筋商品となっています。「高くてもおいしいお米が食べたい」「でもお米をとぐのは面倒くさい」「できれば農薬が少なかったらラッキー」という消費者ニーズは、他にもあったのです。余談ですが、私自身もお店に貢献できたようで何だかうれしくなってしまいました。

 販売者が商品に思い入れがあればあるほど、こうしたニーズに気付くことは困難です。この場合、米店にとって「米をとぐ」という行為は当たり前のことです。私のようなズボラで面倒くさい消費者がいるとは思わない、むしろあまり考えたくないことかもしれません。

 でもそこに、売上げの見込める見えない潜在顧客が隠れているとしたらどうでしょう?

 前述したように、私の買っていた米は他のラインアップと比べて高額な部類に入っていました。けれど「高価でも、簡単に炊けて完全無農薬でおいしいお米」が欲しい人は、他にもたくさんいたのです。

 もちろん全てのお客さまのワガママを聞く必要はありません。ただし、私はリクエストするまで一年以上継続的にお米を買っていました。こうした顧客の要望を信じ、見極めて対応することは新しい商機を生み出すきっかけにもなるのではないでしょうか。

まだまだ工夫できる余地は残されている

 購買の先にいるのは、「人」です。ロボットが買物をしているのではありません。人間には感情があるので、消費行動には必ず合理的な理由があります。

 インターネットは流通のスピードを大きく変えました。近年のスピードは速過ぎて、中にはついていけない人もいるでしょう。でも昔からある企業は、こだわって守り抜くものを決めています。その上で、それ以外の部分をそのときどきの状況に合わせて少しずつ変えてきた結果、今日でも営業できています。

 第10回コラム「インターネット時代でも生き残るリアル店舗の条件」の6でも書いたように、「常に考え、稼ぎ続ける店」は長く続けることができるのです。

 楽しいから、便利だから、お得だから―――お客さまの直接ニーズや隠された複雑なニーズを察して施策を打つことは、今後も流通・小売業に求められていくでしょう。人間が生活する限り、決してなくなる分野ではないのですから。