購入場所によって変わる値段

 また、購入場所によって値段が変わるのも興味深い点です。まずリアル店舗までわざわざ買いに来てくれる顧客には「お持ち帰り特売日」やアプリでの特典を設けており、基本的には一番安く購入が可能です。

 過去の私のように対象エリアに住んでいる人なら、送料無料での配達の恩恵が受けられます。そしてネット通販は、送料込みの販売価格ですが一番割高となっています。

 近所に住んでいたころは配達と一緒に試飲や野菜販売イベントの案内のチラシも受け取っており、自然とリアル店舗での購入を促す仕組みづくりも上手だなあと感じていました。

生産者や地域の人とのつながりを大切に市場を創る

 このようにリアル店舗もネット通販も専用アプリも対応している森田屋米店ですが、人とのつながりを大切に考えているから愛されているのだと思います。

 同店店主はプロとして責任感を持ち、生産者がどんな人物なのか、どんな育て方をしているのかを知った上で商品を販売していると、HP上で明記しています。

 小売業として、商品にこだわっている店はたくさんあります。でも、プロとしての「目利き力」で自信を持って販売できている店はどれくらいあるでしょうか。また、伝えられる覚悟のある店がどれだけあるでしょうか。

 同店は定期的に、生産者の農家と消費者をつなぐ田植えや稲刈りのツアーも募集しています。他にも、同店が子供の職業体験で米袋へのシール貼りを担当させている記事も目にしたことがあります。こうした取り組みは時間と手間が掛かる、与えられる適当な仕事がないなどの理由でやらない企業も多いでしょう。

配達時に毎回入れてくれるおいしく食べるためのお米の保存方法は、プロだから知っている情報がぎっしり

 普段の営業もありながら片手間ではできないはずですが、実は未来のお客さまを呼ぶ種まきになっているのではないかなと思います。お米がどう生産されているかなど、消費者が目にする機会は意図的に作らなければなかなかありません。

 直接の作業工程に関わるのは難しくても、実際に体験の場所を提供することで「ねえ、今日こんなことをしたよ!」「こんなお店が〇〇町にあるんだって!」と話題になれば、子供の親や自分たちではリーチできない誰かの耳に入ります。

 広告を打たなくても、自店の存在を知らせることはできるのです。

 ましてや今日の日本では食卓に米以外の主食が並ぶ日も多いです。パスタやうどん・そばなどの麺類、ピザやハンバーガーなどのジャンクフード、朝食は手軽に食べられる食パン1枚という家庭も多いでしょう。

 米を身近に感じさせて自分たちの主力商品である「米」を守る、コメ市場を農家と協力しながら自分たちで創るという姿勢に、私はすっかりお店のファンになってしまいました。