イラスト/永谷せん

ヒトの心は不思議がいっぱい。それを探るのが心理学。心理学は実践の科学です。実際に使えば理解も早いし応用も利くようになります。ご紹介する心理テクニックは現場で役立つことばかり。ぜひ使って販売力をUPさせましょう。

 販売のプロは、来店したお客さまの顔を見ただけで買う気のあるなしが判断できるといいます。買う気のあるお客さまを選んでセールスするのですから、それができない販売員と差がつくのは当然かもしれませんね。

 でも、そうしたプロの目を養うのは一朝一夕にできるものではありません。経験と努力の積み重ねが必要です。

 その点、今回ご紹介する心理技法は、新人販売員に不足している“経験と努力の積み重ね”をカバーしてくれるもの。ですから、知っておいて損はないどころか、強い味方になってくれることでしょう。

 その技法の名は、『ローボール・テクニック』

  ローボール、つまり、相手にまず受け取りやすい球を投げ、その後に本当に投げたい球を投げるという技法です。

 まず相手が受け入れやすい提案、例えば、「80%OFF」といった思い切った値引き広告を出して、消費者を買う気にさせるのです。人は安く買物をするのが大好き。ですから、お客さまは買う気満々で店にやってきます。買う気のあるなしを判断する必要もない、というわけ。

 でも、お目当ての80%OFFの商品にはお客さまが殺到しますから、欲しいサイズが無かったり、既に売り切ていたり。

 そのとき、代わりに似たような商品だけれど20%OFFのものがそばにあったら、さてお客さまはどうすると思います?

 実験でも確かめられていますが、かなりの確率で20%OFFの商品を買い求めるという結果が出ているのです。

 人は一度自分で決めたことは守ろうとしたがるもの。それを心理学では『一貫性の心理』といいます。

 例えば、連続試合出場を続けているプロ野球の選手が多少ケガをしても翌日の試合に出てくるのは、この心理が働くからです。

 この場合でいえば、買うと決めて来てしまったので買わないわけにはいかないという心理が働いてしまうのです。

 だから値引き率は低くても、いえ、たとえ定価でも買ってしまうというわけです。

 ユニクロが低価格商品を中心に販売しているにもかかわらず高収益を上げ続けている秘密もそこにあります。

 新聞の折り込みチラシにある目玉の低価格商品に引かれてやってきたお客さまは、結局、定価で売られている他の商品も買ってしまうので、顧客単価は大きく下がらないのです。

 また、お客さまが買う気満々でやってくるので、新人販売員でも十分に対応できるのがこのテクニックの優れた点。

 商売の言葉に「損して得とれ」というのがありますが、損をしているようで実は得をしてしまうのがこの心理テクニックなのです。