百貨店型のVMD例

「VMD」(Visual Merchandising)がいわれて久しいが、捉え方はそれぞれの立場で異なるようだ。百貨店では「ディスプレイ」に近いプレゼン技術として使われているが、チェーンストアではプレゼン効果に加えて「フェイシング管理」を軸とした在庫の流体制御技術として使われている。どうして「VMD」は立場によって捉え方がこんなに違うのだろうか。

百貨店のVMDはショールーム陳列

 百貨店のコンセショップは狭く「定数定量陳列」(ラック当たり陳列量を規制)ゆえ品揃えを出し切れず、消化仕入れだから新鮮商品と売れ筋ばかりを奇麗に見せることが求められる。ゆえにVMDも中心サイズのみのショールーム陳列になり、旧サイクル商品や動きの悪い商品は後方ストックに押し込まれるかブランドの倉庫に戻され、ECや期末のファミリーセールに回される。

 高級ブランドなどワンサイズ陳列に徹して奇麗に見せているが、接客ごとにサイズをストックから探したり戻したりする手間は大変だ。元よりショールーム陳列なのだから、ECとリンクしてショールーミング販売に徹したらよいと思うが、ECへの売上流出を恐れてタブレットの持ち込みを認めない百貨店が多いのは矛盾している。

 消化仕入れの百貨店では旬の商品(それも主要サイズのみ)だけ陳列し、端サイズ品や前サイクルの売れ残り品などは陳列しないから、品揃えの全体を見せる「水平VMD」や継続補給してフェイスを維持する「垂直VMD」、前サイクル商品を売り切る「再編集VMD」は育たなかった。百貨店のショールーム陳列は消化仕入れと派遣店員に依存するが故の“徒花(あだばな)”で、自社店員で運営して自社リスク商品を販売消化していくアパレルチェーンのVMDとは乖離が大きい。

チェーンストアのVMDは流体制御陳列

 チェーンストアのVMDは「棚割」と「フェイシング管理」に象徴される在庫の水平・垂直(時系列)流体制御陳列だ。商品は売場を通過していく流体だから、スムースに流れるよう仕掛けて管理する制御技術が問われるのは必然だ。

「棚割」はラック内の品揃えを一覧表現して補給でフェイスを維持するものだが、同一品補給の「台帳型」と類似品切り替え補給の「心太型」、自社で補給するCMIやSMIとベンダーが補給するVMIを使い分ける。長期補給の定番品は「台帳型」、中期切り替え補給のデザイン品は「心太型」だが、一播き売り切りのスポット商品はフェイス量が急速に減少するから固定的な「棚割」はせず再編集陳列で売り切っていく。販売期間を終えてフェイスを明け渡した「棚割カセット」残品の売り切りも同様な手法によるか、二次流通販路に移動する。

「棚割」は品揃えの一覧という水平表現、補給という垂直運用の両面の機能を果たすが、品揃え全体を見やすく買いやすく配置しアドレスを時系列に切り替えていく売場レイアウトも、水平的な品揃え表現と時系列な運用という点では同様だ。

 チェーンストアのVMDはSKUごとのフェイス量を「棚割」で定め、欠品が生じないよう定時補充する「フェイシング管理」(EOSは定量補充)が運用の基本で、百貨店のように接客ごとに在庫探しにストックに走っては売場運営が成り立たない。在庫も売場運営もベンダーに依存する百貨店とは根本的に運営思想が違うのだ。