イラスト/永谷せん

ヒトの心は不思議がいっぱい。それを探るのが心理学。心理学は実践の科学です。実際に使えば理解も早いし応用も利くようになります。ご紹介する心理テクニックは現場で役立つことばかり。ぜひ使って販売力をUPさせましょう。

 あるとき、友人に付き合って大きな家具店へ行ったときのこと。そのお店では一組の客に必ず一人販売員がつくシステムになっていて、さまざまなフロアに連れて行ってくれるのですが、見せてくれる家具は全て見た目も質も素晴らしいけれど、お値段も100万単位の“素晴らしい”ものばかり。

 いくら薦められても高過ぎて買える代物ではありません。私たちは熱心に薦めてくれる販売員の方に恐縮しながらも出口へと向かいました。

 すると出口の手前にサービス品コーナーというのがあるではありませんか。そこには安い価格ではないものの10万円前後の品がずらり。それを見て友人は即決で探していたソファを買ってしまいました。

  良い買物をしたと友人が喜んでいたので口には出しませんでしたが、心の中では「ああ、なるほど、これが『ドア・イン・ザ・フェイス・テクニック』の応用なんだな」と、感心したものです。

 人は、相手の申し入れを断ることに多少なりとも罪悪感(申し訳ない気持ち)を持つものです。その心理を利用したのがこの心理技法。

 まず初めに誰もが拒否するような負担の大きな要請をして、わざと相手に断らせます。くだんの家具店でいえば、100万単位の高価な家具をわざと先に見せるのです。

 それを気に入って買ってくれればもうけもの。もし断られてもガッカリする必要はありません。

 断って申し訳ない、何か穴埋めをしなければという心理がお客側に働いてしまうからです。そのため、その後にそれよりも負担の小さい要請をすると、YESと言ってもらえる確率がグンと高まるのです。

  友人が決して安くはない10万円の商品を買ってしまったのも、きっと同じ心境になったからなのでしょう。店側もそれを狙って、出口の手前に高級品と比べればかなり手頃に思える商品のコーナーを設けていたのですね。

  このテクニックの興味深いところは、店側が値引きをしなくても、お客の方が勝手に値引きをしてもらったような気持ちになってしまうこと。商品は違うものの、金額的には100万円が10万円になったのですから、そう思っても不思議はないのかも。

 この心理技法は驚くほど効果を発揮しますが、より効果を高めるためには、断られると分かっている高額商品であっても誠心誠意セールスをすることです。