第21回は、「チェーンストア理論と個店経営」です。

 読者の皆さんには普段、小売業やサービス業に従事されている方が多いかと思います。今日の小売業、サービス業を支えるベースとなる理論が、この「チェーンストア理論(モデル)」なのです。

チェーンストア理論は1960年代に登場した

 このチェーンストア理論(モデル)が登場したのは、今から60年前の1960年代にまでさかのぼります。1960年代当時、通商産業省(現在の経済産業省)主導の下、日本の流通業の近代化が盛んに叫ばれ始めていました。その理論的支柱となった存在は、東京大学の林周二先生、学習院大学の田島義博先生でした。彼らが日本の流通業近代化のために必要であると主張した内容が『流通革命』という書籍の中にまとめられています。

 時は同じく、1962年、アメリカで生まれ育ったチェーンストア理論を日本の小売企業に普及させるために奔走した人物、団体があります。それは経営コンサルタントの渥美俊一氏であり、渥美氏が主宰したチェーンストア研究団体が「ペガサスクラブ」です。そのコンサルティング企業が「日本リテイリングセンター」です。当時、30代の若手経営者であったダイエーの中内功氏、イトーヨーカ堂の伊藤雅俊氏、ジャスコの岡田卓也氏、ニチイの西端行雄氏・岡本常男氏、ヨークベニマルの大高善兵衛氏、ユニーの西川俊男氏、イズミヤの和田満治氏など、そうそうたる日本の小売業を代表するメンバーが渥美氏の指導を受け、自社の経営を通じ、チェーンストモデル確立に尽力してきました(このメンバーを見ると、日本の小売業でもアメリカ同様、マクネアが主張した「小売りの輪の理論」による栄枯盛衰が生じていることに気付くと思います)。

チェーンストアモデルの特徴は3つある

 チェーンストアモデルの主な特徴は次の3点です。①本部と店舗の役割が明確化され、本部主導の意思決定システムを採用、②多店舗展開に向いている、③店舗運営業務の標準化に向いている。その結果、チェーンストアモデルは各業態・企業の生産効率化に大いに貢献し、事業の持続的成長を下支えしてきました。チェーンストアモデルとは、「仕組み」そのものであり、それが実現できなければ、いくら優れた店舗運営がなされていても、持続的成長を遂げることはできません。

 渥美氏は、生前、日本のチェーンストアモデルの進展は、大きく2期に分かれるとおっしゃっていたそうです。1期は地盤固めの時期。すなわち、多店舗展開のメリットを享受するためにも、最低限、11店以上の出店を早々に目指すことが重要で、100店以上を超えるとスケールメリットが享受できるとおっしゃっていたそうです。その実現のためにも、店舗に権限を与えると効率性が落ちるため、極力、本部にマーチャンダイジング(MD)や価格決定権などの権限を集約し、本部が事業を主導し、店舗は本部の指示通り、無駄な動きをしないよう徹底して指導されたそうです。

 次の2期では、多店舗のスケールメリットを生かし、消費者が求める真のプライベートブランド(PB)開発を目指すべきだと考えられていたそうです。真のPBとは、安売りPBではなく、欧米のような「高品質で値頃なPB」を意図されていたのでしょう。