SUSHIはその美しさとヘルシーなイメージのために世界的にブレイクしている。

 訪日外国人が食べたい日本食に寿司、天ぷら、焼き鳥があります。

 これら3つの日本食に共通するのは、カウンター越しに好きなものを注文すると、職人が慣れた手つきであっという間に食材を料理にして提供してくれるショーのようなプレゼンテーションの存在です。

 中でも寿司は職人の技を目の前で見られる外食として知られ、本場・日本では「本当の旨さ」を味わえると人気になっています。

 今、寿司を扱う飲食店は世界中に約3万店あるといわれていますが、実は多くの店で提供されるのはネタを切り、シャリと合わせて握っただけの「SUSHI」です。

 SUSHIが世界的にブレイクしたのはネタの色合いがカラフルで美しく、体に良くヘルシーで、おしゃれなタパス的グルメメニューである点が分かりやすかったためです。特に欧米先進国の富裕層セレブ達が支持したことでSUSHIという看板があるだけで人気を博すような状況にあります。

「寿司」になれば訪日外国人は好奇心をくすぐられる!

寿司職人が人さし指に力を集中させた包丁は弓のような曲線で操られる。

 このSUSHIと寿司は本質的には異なるものです。

 単にネタを切り、シャリと握るだけのSUSHIに対して、寿司はネタの鮮度と職人の技とシャリの具合の3つがそろうことが条件になります。

 たとえ新鮮なネタであっても包丁の切れ味を最大限に生かして切らないと、ネタに生臭さが残ってしまう。これに対して、寿司職人が切れ味鋭い包丁を使ってネタを切ると、人さし指に力を集中した包丁は弓のような曲線で操られ、ネタの縦の繊維にある角が削がれ、口に入れた時にネタのまろやかさを感じさせます。そして噛んだ瞬間、酢の利いたシャリと合わさり、絶妙の風味となって口の中に嫌みのない旨み(アミノ酸)が広がっていくのです。

 現状は、多くの訪日外国人がアートとして食べているわけですが(SUSHIの段階。「インスタ映えがして、インスタで自慢できる!」と興味を持つ)、日本の包丁だけが持つシャープな切れ味が旨さも醸し出していることに気が付けば(寿司になる)、好奇心がくすぐられることに違いありません。

自国で体験できない食文化がストーリーになる!

嘘のないおもてなしには日本ならではの美しさが宿る。

 もう一つ、寿司にはストーリーがあるという特徴があります。

 寿司職人は目の前にいるお客の注文を聞きながらその人の好みを分析し、いつどのようなネタを勧めればよいかを瞬時に読み取っています。お客が最大限においしいと感じる瞬間を提供する、究極の“おもてなし”のストーリーが寿司には含まれているのです。

 例えば、寿司職人はお客が寿司の味に慣れてきたころを見計らってお口直しの漬物を提供し、「次はトロを握りましょうか?」と薦めます。

 漬物の浅い塩味と酸っぱさが残った口に脂ののったトロを頬張ると、不思議としつこさを感じない(鋭い包丁で切ることでトロの繊維を感じさせないからでもあります)。こうした味覚を最大化できる瞬間にまで配慮することで、ここに“おもてなし”の「寿司」ストーリーはクライマックスを迎えるのです。

 今、インバウンドを顧客とする全ての業種・業態に求められるのは、訪日外国人の意識を『見るSUSHI』から『食べる寿司』へと転換させ、「日本文化のこだわり」を通じて、日本だけの本物のおもてなしの世界を見せることです。

 その取り組みを3段階で説明すると以下のようになります。

1 美しくて(写真写りがよくて)、おしゃれか、ヘルシーのどちらかの要素で興味を抱かせる。
2 地元の素材と匠の技でお客とコミュニケーションし、記憶に残す。
3 道具を最大限に生かした「ここだけの体験」を提供し、思い出をつくる。

 本物の「寿司」を食べることは、寿司職人が「目に前のお客に嘘のものは出さない」という日本にしかない“おもてなし”に込めた美意識の体験そのものです。

 訪日外国人が本当に求めているのは、日本の本物の食文化体験の先にある、日本独自のおもてなしを味わう異文化に感動する経験なのです。