アマゾンがホールフーズ・マーケット買収直後の店舗入り口。「農場のフレッシュさ」「旬のセレクト商品」というバナーでエコーを値下げして販売。出所:筆者撮影

 世界を驚かせた両社の婚約発表から1年、見掛け上、ホールフーズ・マーケット(WFM)は特に変わってはいないが、6827億ドル[1]のスーパーマーケット(SM)市場、特に2022年には市場規模1000億ドル[2]といわれているオンライングローサリー市場制覇に向けての準備は着々と進んでいる。

プライム・エコシステムにホールフーズ・マーケットを移植

◆インスタカートからホールフーズ・マーケット・デリバリーに転換

 買収の1年前にWFMは食品即日配送サービス、インスタカートと5年間の契約を結び、同社モバイルストアを通じてオンライングローサリーおよび宅配サービスを、最短1時間で提供していた。しかし今年2月よりプライムナウのサービス都市のうち当初4都市、現在ニューヨーク、サンフランシスコ、ロサンジェルス、アトランタ、ボストンを含む14都市[3]で宅配を自社化している。

 店内にあったインスタカートの冷蔵冷凍ロッカーはWFM・アマゾンのロゴに置き換わり、プライムナウのシステムと人員体制で配送を行う。ただしピックパック・出荷は店舗からだ。配送手数料もプライムナウと同様となり、35ドル以上買えば2時間配送が無料だ。

◆主要品目の値下げは第3弾まで、ぜいたく品は最大半額に

週に2回入れ替わるフルーツのセールのゴンドラ。「私たちは良いものを育てています」の下に両社のロゴが。この後、店内には必ずアマゾンのロゴが掲載されるようになった。出所:筆者撮影

 オーガニックの牛乳、バナナ、卵、アボカド、枝付きトマト、ヨーグルト等は買収完了日の8月28日から値下げとなった。ビジネスインサイダー紙のバスケット調査[4]では買収前後で$97.76から$75.85へと22%下がった。ただし、WFMのコア顧客は世帯年収の高いファミリー客だ。当然ながら、他のヘルシーでグルメで高額な食品がカートに占める割合は大きい。実際の効果は「ちょっと下がった気もする」程度か

……と思っていたら、11月に第2弾、今年5月に第3弾の値下げが実施された。対象商品には「プライムパーク(特典)」という名称も付き、アメリカでは高級魚のオヒョウ、オーガニックイチゴなど、人気だがぜいたく品の商品が最大半額になる。ただしプライムパークはプライム会員のみが対象だ。

 今後も段階的に「高品質な食品をアマゾン価格に」変更し、配送体制を広げれば、自ずからオンライングローサリーは拡大する、というのがアマゾンの目的のようだ。

 なお、WFMが買収前に行っていたモバイルクーポンは廃止された。

◆プライム会員に5%のキャッシュバック+特定品目の10%オフ

 2月からプライム会員がプライムビザクレジットカードで購入すると5%、非会員だと3%のキャッシュバックが付いた。プライム会員にとっては最も目に見えるうれしい変化ではないだろうか? その上、先月、プライム会員には特定のアイテムに会員限定10%オフが適応されることが発表された。

 管理が大変なのでクレジットカードは1枚しか持たない派の筆者も迷いなくWFMではプライムカード購入にスウィッチ。支払遅延金が怖いので自動支払いに切り替え、店内では常に「プライム会員10%オフ」カードの付いた商品を探し、完全に彼らの思うツボだ。

◆アマゾンロッカー店内設置で商品ピックアップの来店が増加

 WFM内への設置は進んでいるが、ロッカー設置によるアマゾン顧客のWFM購入効果はあまりはっきりしない。マーケティング企業inMarket社の調べによると、調査対象98店舗中ロッカーが設置されている76店舗では5分以内に退店する人は11%増加、設置されていない店舗の7%と比べると、明らかに滞留時間が短く、商品ピックアップだけの来店が増えている様子だ。思惑が外れたようでもあるが、アマゾン側から見れば顧客の利便性が増したことは確かだ。また、前述の価格変更やキャッシュバック制度が浸透していけば、店内回遊も始まるかもしれない。

 ちなみにWFM設置分も含めて、現在ロッカーは全米2000カ所以上に設置されている。

◆アマゾンエコーの販売、最近はショールーム効果の方が大きい

 買収直後は入店口近くのフルーツ売場にエコー・ワゴンを組んで販売していたが、ホリディ商戦終了後はレジの近くや生活雑貨も販売しているホールボディの近くなどに移動させている。買収直後やホリディ期間中は一番安いエコードットを食品とともに買っている人の姿も見掛けたが、最近はむしろショールーム効果の方が大きい様子。

 なお、ミシガン州、フロリダ州、コロラド州など一部の地区のWFM店内にはアマゾンデバイスのポップアップストアを展開しており、専任スタッフが接客にあたっている。

◆ホールフーズ・マーケットPB「365」商品をアマゾン上で販売

 主にアマゾンフレッシュ[5]での販売だが、年内に6店舗体制となるはずのアマゾンゴーでも販売している。