ECのみならずその経済圏が加速度的に膨張して店舗流通の経済圏まで浸食する中、店舗流通の経済圏を支配してきた「館型プラットフォーマー」たる商業施設デベや百貨店のプラットフォーム戦略が問われている。このまま“やられっ放し”でよいわけがない。

プラットフォーマーの“傘”とコスト

 フロントのシステムからバックヤードの物流、ウェブマーケティングやAIプロモーション、決済関連までEC業界を取り巻く関連サービスの多様性は驚くほどだが、直近で新サービスの台頭が目立つのが決済代行などフィンテック関連だ。それもECに留まらず店舗小売業までサービス対象を拡げている。

 EC分野にあふれる多数のプレイヤーはサービスが重なったり連携したりと複雑かつ流動的で、個々のサービス料率は知れているようでも積算していけば利益を食いつぶしかねないし、個別に精査して導入する手間も少なからぬ負担になる。ゆえに、これらサービスを一貫装備した有力ECモールのプラットフォームに丸乗りする方が手間いらずでコストも見える、という選択もある。

 EC分野に比べれば過去の累積が厚い店舗小売業界の関連サービスは整理淘汰されてシンプルだが、逆にいえば利権関係が固まってコストが高止まりしている。近年はECとも連携するモバイル/ID決済サービスの新規プレイヤーが目につくが、コストの高止まりは一向に解消される気配がない。IT/AI関連は新技術検証的な重装備が目立つが、シンプルで実用的なシステムの登場で、そのほとんどは過渡的なギミックに終わるだろう。モバイル/ID決済サービスも既存の通信回線や決済プラットフォームに便乗する(せざるを得ない)ケースがほとんどで、利便性は高まってもコスト削減効果は知れている。

 店舗小売業でもECと同様、個別のサービスを精査して組み合わせる手間とコストを考えれば、有力プラットフォーマーの包括サービスに乗った方が手間いらずでコストに見合うと期待されるし、出店契約で決済関連を委託するようしばるデベも多い(強大なチェーン店はこの限りでない)。商業施設デベや百貨店など「館型プラットフォーマー」が在庫連携やC&C、ID決済などES(ECとStore)一体のサービスをリーズナブルに提供できれば、有力ECプラットフォーマーと張り合う武器になるのではないか。

オムニチャネル利便の傘と呉越同舟

「館型プラットフォーマー」は不動産投資がかさむこともあって『リテールサービスの傘を提供する』というプラットフォーマー意識が希薄で、『家賃と手数料で投資を回収する』という大家意識が強かった。ゆえに個別サービスごとにテナントにコスト転嫁したり差益を抜いたりという姿勢で来たが、ECプラットフォーマーとの直接・間接の競合が深まる中、トータルコストを抑え、テナントと顧客の利便を最大化してECと張り合うというプラットフォーマー戦略に転じないと館そのものが衰退してしまう。

 実店舗という利便はもちろん売上規模やグループのネットワークも駆使してトータルコストを抑え、利便を最大化し、テナントの期待に応える「プラットフォーム・サービス」が問われているのだ。対ECプラットフォーマーという視点に立てば、「オムニチャネル利便の傘」と言い換えても良いだろう。

 それができないならテナント企業はECシフトを加速して店舗販売は衰退し、館の“経済圏”も萎縮して行く。C&CやID決済などシステム確立に手間取るようなら、有力ECプラットフォーマーと大手館プラットフォーマーの提携という呉越同舟策も選択肢となる・・・・乗り遅れて孤立するリスクは大き過ぎるからパニック的椅子取りゲームになるかもしれない。

 今月末に商業界から刊行する筆者の新著『店は生き残れるか』をご一読いただければ、ECと店舗販売のせめぎ合いと交錯の構図、店舗販売生き残りの策が見えてくると思う。