ポロラルフローレン、ベルサーチ、ナイキ、アディダス、アシックス。ヒジャブを被った女性たちが楽しそうに有名ブランド品の買物に興じている。明らかに外国人観光客と分かる集団も目立つ。マレーシア語、英語、中国語。明るい陽光の下でさまざまな言語が飛び交うこの商業施設は、「三井アウトレットパーク クアラルンプール国際空港 セパン」(以下三井アウトレットパークKLIA)。名称から分かるように、クアラルンプール国際空港の敷地内に誕生したアウトレットモールだ。

 三井不動産は三井アウトレットパークをマレーシアで展開するにあたり、共同事業パートナーであるMALAYSIA AIRPORTS HOLDINGS BHD.と共同で合弁会社MFMA DEVELOPMENT SDN. BHD.を設立。三井アウトレットパークKLIAは2015年の5月のソフトオープン(一部の店舗のみのオープン)を経て、同年7月にグランドオープンした。予定通り、2018年2月には2期開業を迎え、店舗数は現在トータルで200店に達している。

運営するMFMA DEVELOPMENT SDN. BHD.のマネージングディレクター・福井健人氏。

 三井不動産にとって、商業施設ではマレーシアは中国に次ぐ2番目の海外進出国。経済発展著しい東南アジアの中で、なぜマレーシアを第1の舞台として選んだのか。マネージングディレクターの福井健人氏は言う。

「東南アジアに進出するにあたり、選択肢は2つありました。シンガポールかマレーシアか。さまざまな条件や環境を考慮して出した結論がマレーシアだったのです」

 アウトレットモールが成立するには幾つかの条件をクリアしなければならない。1つは市場のポテンシャル。人口が伸び、可処分所得が増え、肥沃なマーケットであることが望ましい。ブランドが認知されていることも重要な要素だ。

「アウトレットモールは、ブランドもののB級品や傷のある商品、在庫品などを年間を通して販売する商業施設。扱うブランドがそもそも消費者によく知られていなければビジネスが成立しません。供給者側に在庫がある程度あることも必須。その点、人口も生産人口も富裕層の数も伸びているマレーシアは有望な候補地でした」

 東南アジア唯一の先進国であるシンガポールは、ロケーションに問題があった。アウトレットパークの立地は、カニバリゼーションを避けるため、ブランドのレギュラー店舗から車で最低でも1時間の距離にあることが求められる。だが、国土の狭いシンガポールでその立地は望むべくもない。

「シンガポールの土地の入札システムもアウトレットモールには不向きでした。価格が1円でも上の企業が落札する仕組みなので土地代が出ない。その点、マレーシアでは価格だけでなく提案の中身も審査の対象になる。私たちが培ってきたアウトレットモールのノウハウも活用できました」 

開業後に直面した予想外の2つの出来事

日系のアウトレットモールということもあり、日系ブランドには力を入れている。アシックスは人気の高いブランドの一つだ。

 三井アウトレットパークKLIAのテナントの構成は主に次の3つに分けられる。まずは、ラグジュアリーインターナショナルなブランド。アウトドアやカジュアルスポーツ系のブランドもここに含まれる。日本の三井アウトレットパークでも核となっている店舗群だ。

 2つ目は日系ブランド。カバンのエースやアシックス、シチズンの他、日本食のレストランが該当する。3つ目が地元で人気のローカルブランド。マレーシアの百貨店・パークソンやファッションブランドのPADINIといった地元で根強い人気を得ているブランド群だ。

 三井不動産は国内で13のアウトレットモールを展開し、既に中国でも実績がある。リーシングのノウハウはお手の物といっていい。華やかな顔ぶれが出そろった三井アウトレットパークKLIAのロケーションは空港からバスで約10分。ローカルのお客だけでなく旅行客も狙える立地は理想的だ。

 だが、いざオープンしてみると予想外の事態が待っていた。

「ブランドは認知されていましたが、アウトレットモールとは何かという知識がなかった。通常のセールと同じように考えている人が大半で、在庫品やB級品などを安価で販売する店だと理解してもらってなかったんですね」

 なぜ安いのか。その根本的な理解がないとアウトレットモールでの購買意欲にブレーキがかかる。クレームにもつながりかねない。福井氏は、FacebookやInstagramといったSNSの他、ラジオなどのメディアを通してアウトレットの啓蒙活動に力を入れ、各店舗のスタッフにも来店客にどういう商品が並んでいるのかを丁寧に説明してほしいと働き掛けた。

 その甲斐あって、今は普通の特売と勘違いするお客は減っている。お客は安さの理由を理解した上で買物をしている。