悩みながら進む「舞台裏」は見せてもいい

『嫌われる勇気』の著者・古賀史健さんは、糸井重里氏の本をまとめた著者として自らの意志で文庫本のワゴン販売&会期中の密着取材を敢行。私もちゃっかり買いました。

 初めて百貨店やショッピングセンターのバックヤードに入ったとき、表の華やかな売場とのギャップに驚いたことをはっきり覚えています。狭くて暗い、迷路のように入り組んだ通路。店頭や売場がキレイだからこそ、その落差はちょっと衝撃的でした。

 今までファッション業界は、完成品をいかに美しく『魅せる』かに力を注いできました。商品は店頭に出すまでとことんこだわり抜き、スタッフはスムーズによどみなく接客できるようにロールプレイング大会を行い、売場の陳列やディスプレーをああでもないこうでもないと閉店後に作り上げてきました。

 でも、もしかしたら、そういったことが優先される時代が終わってきたと私は感じています。商品も買う場所もあふれ返った現在、革新的なショップを作ることはとても難しくなりました。玄人目線でなく消費者視点で見れば、同じようなアイテムが似たようなショップで販売されているように感じます。

「生活のたのしみ展」では複数のショップが集積していることもあり、接客技術はショップによって差がありました。それでも私が結果的に買物したのは、「これ、本当にイイんですよ」とスタッフが思っていることが伝わってきたからです。無理やり接客用に上げたハイテンションではなく、知り合いにお勧めするような平熱の接客。

 バッグの絶妙な大きさ、リーズナブルな価格、スタイル良く見せるデザイン、どんな商品にも必ずウリのポイントがあるはずです。もしないというなら、それはきっと自分が知らないだけで、どこかに光る良さがあるから商品として生産されたのです。

 スタッフが商品の良さを理解した上で「これ、本当にいいと思います」と自信を持って紹介する。接客の技術や細かな商品知識、売場づくりは、その土台の上に積み重ねるべき知識だと私は思います。

業界の常識は、お客さまの「常識」ではない

河野書店では、突然シアターカンパニー・カクシンハンが売場に乱入してシェイクスピア移動演劇が始まりました。それまで静かに本を吟味する場所だった本屋が突然大音量で歌い出す舞台になるというカオス。

 接客での無言やミスを恐れるあまり、私たちは武装し過ぎて大切なことを忘れていないでしょうか?

 案内看板の矢印の向きを間違えて作成してしまったこと、店舗設置に必要なアイテムの入った段ボールを何時間も探し回ったこと、急きょ変更となった会場マップを手書きで公式のものとしてネット上にアップすること、自分たちの作業する裏方やストック置き場を撮影すること。

 ほぼ日が会期中にサイト上にアップしたこれらの事実は、恐らく今までの流通業の常識なら「隠すべきもの」でした。お客さまには関係ないことですし、手書きのマップは鉛筆書きだし、バックヤードは荷物や在庫が散乱していて本来なら見せなくていい場所です。

 けれど、もう私たちは隠さなくてもいいのかもしれません。格好悪さも不器用さも、時には失敗さえも、丸ごと過程を見せて販売していくこと。それは決して完璧ではないけれど、試行錯誤して汗をかいている姿を見せてしまうこと。

3日目の購入品&会場でもらったもの。右上から時計回りに、書籍『思えば、孤独は美しい。』、文庫『古賀史健がまとめた糸井重里のこと。』、HAPPY NUTS DAYの粒ありピーナッツバター、日替わりコーヒー「FUGLEN COFFEE ROASTERS」を飲んだときにもらったカード、ciobenの「たのべん」、東京台湾の「魯肉飯弁当」、5日間のフリーパス、ほぼ日のやさしいタオル。フリーパスは4色から選べ、中に会場マップが入っていてミニクリアファイルとして使える。
最終日の購入品&会場でもらったもの。右上から、プレゼント用に買ったBambooCutのウメボシカルタ(梅干し3個)、ほぼ日20ッスのステッカー、鉄のカプセルトイ灯台(ガチャガチャ)で出た鉄のキーリング、シアターカンパニー・カクシンハンからもらった言葉、河野書店でもらった「ほぼ日の学校 オンライン・クラス」のしおり。


 悩みながら頑張っている姿は、見せてもいいのです。似たような商品と代わり映えしないショップだらけの今、販売する側のこうした姿を思い切って見せることは個性になっていくのではないでしょうか。そしてこうした姿は、お客さま側も意外と面白がって受け入れてくれる時代がきていると感じています。

 ちなみに9月19日から24日までのシルバーウィーク期間中、阪急うめだ本店にて「生活のたのしみ展」の出張巡回展が行われることが既に決まっています。内容は一部変わるそうですが、関西方面で興味がある方はぜひイベント運営の参考にどうぞ。