首都圏でターミナル型ファッションビルを15館運営するルミネはJR東日本グループが展開する商業施設の中核企業だ。同社は新井良亮社長が会長に退き、JR東日本常務だった森本雄司氏が社長に就任するトップ人事を6月23日付で実施した。そこで森本新社長にルミネに懸ける思いと今後の戦略について聞いた。

(聞き手/『ファッション販売』編集長・西岡克)
photo/小田駿一
森本雄司

 1954年12月14日神戸市生まれ。東京大学法学部を卒業後、79年4月国鉄に入社、国鉄分割民営化に伴い87年4月JR東日本に入社。国鉄清算事業団への出向や支社の総務部長、鉄道事業本部営業部次長などを経て07年6月取締役総務部長。08年6月同人事部長、JR東日本総合研修センター所長。11年6月常務取締役事業創造本部副本部長。12年6月同本部長。14年6月常務取締役総合企画本部長。17年6月23日からルミネ社長。趣味はぶらぶら散歩。

 ――ファッションビジネスは初めての経験になる。

 森本:そうです。ただJR東日本の事業創造本部で2011年から副本部長1年、本部長を2年していたので生活サービス部門全般、それと前職は総合企画本部長でグループ会社の再編とか経営戦略などを担当していたので、全体の方向性は一応理解していました。

ルミネの理念と行動指針を実践に落とし込む

 ――社長就任の抱負は。

 森本:ルミネは「お客さまの思いの先をよみ、期待の先をみたす。」という企業理念が社員に浸透しています。しかも行動指針である「ルミネSPIRAL(スパイラル)」の中で「次のライフスタイルを提案する」と掲げているように、ショップと一体となって鮮度感があり買物が楽しくなるような売場づくりに取り組み、あるいはショップスタッフとの会話の中から価値を見いだしています。

 理念がしっかりと実践されているという点を大事にしながら、さらに発展させていくのが私の役割だと思います。

 ――ルミネは駅ビルの中核会社だ。

 森本:東京・新宿を拠点にして、女性の社会進出もあって「もっとおしゃれをしたい」という女性の思いが原動力になって伸びてきたのだと思います。

 原点はルミネの理念です。お客さまに合わせてショップと一緒になりながら、より価値を高め、そして買物が楽しくなる。そういう「価値を伝える」「次のライフスタイルを提案する」ことをしっかりと大事にしていきたいと思います。

 ――実践していく上での課題は。

 森本:売場の人手不足と働き方改革です。ショップのスタッフも女性が圧倒的に多く、ルミネの社員も20代、30代を中心に7割が女性です。

 結婚して子育てをし、人手不足の中で働き方と生活を両立させることに取り組まないと本当にいいサービスは提供できない。今までも営業時間の見直し、休館日の導入、会議時間の短縮、デジタル化などを進めてきました。これをもっと浸透させていこうと考えています。

 もう一つはオムニサービスというか、お客さまに対する情報の発信の仕方です。アイルミネはインターネットでの販売と捉えられがちですが、お客さまにルミネらしく楽しい画面を見てもらい、実際の売場の情報発信をする。情報を取る手段としてもオムニサービスはリアルな売場を補助するという役割でこれからますます重要になってくると思います。

 またインバウンド(訪日外国人客)のお客さまにも「日本に来たら服を買ってファッションを楽しもうかな」と思ってもらえるようにしたいです。

上期は一転して順調な推移、夏のセール後ろ倒しの影響なし

 ――2017年3月期は増収増益に転じたが、既存店は0.2%減と6年ぶりに前年を割った。前期の苦戦の理由は。

 森本:夏場に女性の服があまり売れなかったからです。本体の鉄道も大雨や台風で第2四半期はあまり良くなかった。ただこれは一過性のものだと見ています。

 ――新宿の売上げは断トツでルミネエストとルミネ新宿で961億円となった。16年3月に開業したニュウマン新宿は。

 森本:ニュウマン新宿の売上げは別で約140億円です。

 ――現在15館体制だが各館の特徴は。

 森本:新宿はルミネエストとルミネ1と2とそれぞれに特徴があり、ファッションを中心にかなり引っ張っています。

 大宮や立川、横浜、北千住といった大型店になると食品のウエートが高まり、生活全体にファッションの色彩が加わるという複合的な要素が高くなります。

 大船や荻窪は地域との密着度が強い。このように立地に合わせてかなり特徴があります。全体から見るとルミネが他の駅ビルと違うのはファッションとの関係が非常に強いことだと思います。

 ――上期の状況は。

 森本:既存店は第1四半期(4~6月)は2%を超える伸びで、第2四半期も7月とセール終了日の8月6日までで比較して2%は超えているので順調です。

 ――夏のセールは7月28日スタートと昨年より2週間も遅らせたが影響は。

 森本:トータルで7月、8月を見れば前年を十分超えたので影響はなかったと言えます。ただ相当きめ細かく努力をした結果です。他がセールをやっている時期にどう見せるか、セール時にはどうするかと6月下旬から対応したからです。

 ――4月から12施設で閉店時間を30分繰り上げた。営業時間の短縮の影響は。

 森本:お客さまに営業時間を丁寧に周知し、時間帯別の利用実態を見ながら実施したので売上げへの影響はありません。ルミネは単に売場で物を売るのではなく人が価値を伝えながら物を売っている。人を生かす意味で営業時間の短縮や休日を増やすことは必要だと思います。

 ――渋谷のルミネマンが7月末で閉店した。エキソトは難しい?

 森本:元々JRが工事用に使う場所を短期間借りた暫定的な開発でしたから。また渋谷でルミネカードを使える場所はあそこしかなかった。ただ一定の役割は果たしたのではないかと思います。

 ――再びエキソトに出店する可能性は。

 森本:可能性はあります。エキソトでもルミネカードや接客のオムニサービスといったベースになるものがあれば、ルミネらしさを求めて来てくださるお客さまもかなりいるのではと思います。

 有楽町の場合もエキソトだからというよりルミネカードをお持ちの方があの近辺にいなかった。やがて売上げが上がってきてルミネカードをお持ちの方のエリアが広がったのです。だから駅から離れているからというより今までルミネになじんでいた人がいないエリアか、いるエリアかという面もあったと思います。