スタートはF1レースと同じ会場。F1と同様にフラッグを振る演出(写真は事務局提供)。

 

 首都圏の市民ランナーにとって春から秋にかけての半年間はオフシーズンとなる。10月下旬、荒川河川敷の「タートル国際マラソン」からスタートし、4月半ばの「かすみがうらマラソン」あたりでシーズンを終える。気温が上がり日差しが強くなると熱中症や脱水症状のリスクが高まるからだ。

 それにしても、オフシーズンの半年間は長過ぎる。間近の大会がないと練習に励むモチベーションが湧いてこない。

 シリアスランナー(上級者)は、こう諭す。

「真夏でも早朝や日没後、あるいはフィットネスジムなどで地道なトレーニングを積むことが翌シーズンの成果になって表れるのだ」とか。

 確かに皇居周辺には真夏でも日没後にランニングする人たちの姿を多く見掛ける。ロッカーとシャワーを備える日比谷のランステ(ランニングステーション)には会社帰りの人たちが続々と現れる。夏場でも長距離を走る筋肉を落とさず、マラソンシーズンに向けて身体をつくるのだ。

 そんな姿を見るにつけ、だったら“真夏の夜に数万人規模の大会やったらどうだ?”と常々思っていたが、シンガポールにそんな大会を見つけたのである。

「(OSIM)Sundown Marathon」。訳すと日没マラソン。アジア最大規模のナイトマラソンをうたっている。頭のOSIMはスポンサー名で、マッサージチェアをはじめとする健康関連商材を、25カ国132都市以上に653店舗を展開するシンガポールの企業である。

(OSIM Sundown MarathonのHPトップ。大会の異質さが際立つデザインだ。

5つの問題意識を持ち、走った!

 この大会に急きょエントリーし、5月19日(土)25時スタートのフルマラソンを実際に走ってみた。

 自身の興味として、真夜中に街中を走ってみたいだけなのだが、次の5点を問題意識として持ちながら出場した。

第一に「大会が楽しいかどうか」

第二に「コース設定に工夫があるのか」

第三に「ナイトタイムエコノミーに貢献できるのか」

第四に「外国人が喜んで参加しているのか」

第五に「真夏(夜間)の東京マラソンはありか」

レースは4種目、景観も楽しませる工夫あり!

風船を付けたランナーはペースメーカー。自身の想定ゴール時間に合わせて幾つか選択できる(写真は事務局提供)。

 第一の「楽しいかどうか」。

 もちろん当人の感受性にもよるのだが、各々の実力に見合った種目が用意されているのかは、レースの楽しさを決定づける重要な要素になるだろう。Sundown Marathonには4種目が用意され、距離の短い順からスタートする。制限時間はかなり緩い。ゴールまで全ルートを普通に歩いても、5キロ、10キロ、ハーフの種目は時間内に楽に“完走”できるだろう。

OSIM Sundown Marathon 種目別データ

 上の図表を見ると、10キロのエントリーが圧倒的に多い。レース後に公共交通で帰途につける理由もあるが、フィットネスジムで軽く汗を流す程度の大多数の人たちでも“挑戦”できる距離であるのが理由であろう。

 ちなみに東京マラソンは(ジュニア枠の10キロを除けば)選択肢はフルマラソンのみ。マラソン初心者に負荷を掛けている様子はテレビ中継で繰り返されている。

 Sundown Marathonのスタート会場はF1レースのスタート&ゴール地点を使用する。筆者がエントリーしたフルマラソンは、スタート地点に並んでいるランナーに向けて、大音響のクラブミュージックと光の洪水を浴びせていた。深夜の眠たいランナーに対して嫌でもテンションを高める狙いだ。DJがスタートゲートに上り、延々とランナーを鼓舞している。

 大会事務局に確認すると「イベントをよりエキサイティングなものにするために、有名なクラブZoukのDJによる照明とサウンドを駆使してエンターテインメント要素を追加した」とのこと(「zouk singapore」で動画検索すると雰囲気が分かります)。真夜中の大会には派手な仕掛けが必要なのだ。

 第二の「コース設定の工夫」について。

コースは湾岸、海辺、公園など、一般交通に負荷をかけずに景観にも配慮した設定(事務局提供の写真に筆者が加工)。
明け方の美しい景色に歩を止めて休憩タイム。

 前半は国立競技場を横目に見ながら街中を走り、中盤は片道8キロ以上の海浜の公園を行き来し、後半はシンガポールの新アイコン「マリーナベイサンズ」(屋上にプール付きのボートが乗っかった高層ホテルでおなじみ)の周囲を巡る観光客も満足させるコース設定。内海沿いの道や公園内の歩道、ゴルフコースの脇、植物園の中など、交通規制を最小限に抑えながらランナーに景観を楽しませる工夫が施されている。