「ザ・ベネチアン・マカオ」のライトアップ。

日本でのカジノの推進についてのシリーズ第2弾。今回は日本の弱点は何か考えてみる。物事には功罪、または正の面、負の面が必ずあるが、マカオでは雇用が増え、所得も上がった一方で、カジノ経営の幹部にはあまり地元マカオ人がいないことが悩みとなっている。マカオ以上にIR運営のノウハウを持った人材がいない点が、日本のカジノの大きな難点といえよう。

カジノを運営できる日本人がいない

 マカオといえば、「カジノ」と「世界遺産」というイメージで、実際のマカオ市民の生活レベルや所得水準をイメージできる人はそう多くはないだろう。世界銀行が発表した「World Development Indicators」によると2016年の1人当たりの総所得(GNI)をみると、アメリカの5万6850米ドル(約618万円)、香港の4万2940米ドル(467万円)に対してマカオは6万5130米ドル(708万円)と2つを上回っている他、この数値は世界的にみてもトップクラスだ。ちなみに日本は3万8000米ドル(418万円)なので、国内総生産(GDP)が世界3位の経済大国とはいっているが、1億2000万人という人口に支えられての積算された数字なので、質という意味では悲しい現実を突き付けられる。

 マカオがこれだけ繁栄したのは、2001年からカジノのライセンスを外資に開放することを決断したことが大きい。雇用を見てみると、マカオ政府がディーラーなど実際のカジノで働く人はマカオ住民に限定した結果、失業率でみれば2000年代初頭は6%だったのが2%台とほぼ完全雇用となった。

IRはベッドやソファ、カーペット、ランプなど部屋の数だけ受注できるのは魅力だ。

 カジノにおける直接雇用でいえば、マカオには30を超えるカジノがあるため統計の詳細は不明な面があるが、マカオ最大級の統合型リゾート(IR)である「ザ・ベネチアン・マカオ」を例に出すと、約1万5000人が働いている。日本のちょっとした「町村」の住民全員が同一施設で働くという規模になる。日本でこれに相当するような大型施設があまりないが、東京ディズニーランドを運営するオリエンタルランドが正社員と準社員合わせて約2万2000人(2018年4月現在)なので、その辺の規模を想像してもらえるといいだろう。

 もちろん、問題もある。地元優先の雇用とはいえ大型IRの管理職の約8割は外国人が占めている点だ。彼らは合理化するときに先に退職させられるという取り決めもあるが、現実として地元のマカオ市民はカジノ客と直接やり取りをするディーラーであったり、レストランのホール担当であったり、掃除をしたりとカジノ運営のポイントとなる役職に就けていないのが現状だ。現在、カジノの学校であったり、語学講座を創設したりと裾野を広げようとする試みがされているので、将来的にマカオ市民がカジノの中枢を担う可能性があるが、それはまだ先の話だ。

 日本には、パチンコの運営、競馬の運営などがあるではないかという考えもあるが、カジノは全く違う。ホテル業の運営だけとも違う。全てを総合的に俯瞰できるスキルが必要だ。日本の様子をみていると、カジノは日本人が担うと漠然と考えている人が多いのが気になるが、そのノウハウを持つ日本人の人材はあまりに少ない。フィリピンで「オカダマニラ」というカジノを経営するユニバーサルエンターテインメントがあるが、2017年創業者の岡田和生会長が親族の内紛で解任されており、どうも落ち着かない。

 外資ではラスベガス・サンズを率いるシェルドン・アデルソン氏は何度も「日本へ進出したい」という野望を隠さず、数年前、筆者がマカオの銀河娯楽集団(GEG)のロバート・クレイグCFOと日本メディアとの会食に参加したときは「日本には時々赴いて、企業や官庁、自治体、関係者との話し合いを持っている」と話していた。2018年5月22日付の新聞『香港経済日報』によるとGEGは2018年中に日本事業の担当者を決め、日本のカジノの動きに対応すると報じている。彼らはまさに経験豊富な人たちで、日本でのIRの権利取得を着々と狙っている。外国企業にIRリゾートの運営を任せるのか、外国企業より失敗する可能性が高まっても日本主体で経営するのか……、この方向性を決めることが重要だ。カジノ・ライセンス取得者が日系企業となっても、外国人に頼らざる得ない状況も十分考えられる。