中国ではコンビニばかりでなく飲食店もどんどん“無人化”しているそうだ。どちらもモバイル決済がベースだが、コンビニが無人精算に留まるのに対し、後者は精算もパントリーも無人化されている。無人化はわが国でも飲食店が先行しており、牛丼屋も立ち食いそば屋も随分と前から券売機による無人精算が定着しているが、小売店ではようやくセルフレジが普及し始め、無人精算は実証実験が始まったばかりだ。この差はいったい何に起因しているのだろうか。

小売店と飲食店の運営はどこが違う?

 小売店のオペレーションはフロントヤードのエントリー(購買意向の掌握)/販売/決済という接客業務、バックヤードの搬入/品出し陳列/補充整理/在庫管理などマテハン業務から成り、セルフサービス店ではエントリーと販売が不要で、ピッキングも顧客が分担する。飲食店のオペレーションはフロントヤードのエントリー(配席と注文取り)/パントリー(配膳・下げ膳)/決済というホール業務、バックヤードの仕込みと調理、食洗というキッチン業務から成り、セルフサービス店ではフロントヤードのほぼ全業務を無人化できる。

 小売店には生鮮食品を除いてキッチン業務が存在しないから飲食店では一般的なフロント(ホール)とバック(キッチン)の分業もなく、飲食店でホールが分担するパントリー業務が小売店のマテハン業務に相当する。最大の相違は売上対比人件費率で、業態や規模で幅はあるが、小売店では高くても20%までなのに飲食店では35%前後と倍近く違う。ゆえにセルフ化/無人化に真剣に取り組まざるを得なかったのだ。

セルフ化/無人化で先行する飲食店

 小売店では決済のセルフ化が進み始めたばかりで無人化はまだ実験段階だが、飲食店ではタブレットPOSやタッチパネル券売機が定着。エントリーと決済はセルフ化/無人化が進み、チャットボットAIによるメニュー推奨や配席指定も始まっている。小売店でもECフロントと連携したタッチパネル・エントリーが普及すれば飲食店に近い無人化が可能になるだろうが、タブレット接客やセルフチェックアウトが連携なく進む状況は無人化にはほど遠い。

 飲食店ではエントリーと決済の無人化に加えてキッチン業務も調理から食洗までどんどん自動化されているが、上げ膳・下げ膳のパントリー業務が課題で、顧客にやってもらうセルフ化が進んでいる。中国で見られるパントリーボックスはスマホ決済と連携しただけでセルフパントリーと何ら変わらず、わが国でもセルフパントリーにエントリー決済(要は券売機です)か画像認識AI決済を組み合わせば同様な無人化がいとも簡単にできる。中国人はよほどスタッフと顔を合わせたくないのだろう。

マテハン業務の自動化が難しい小売店

 小売店のマテハン業務は物流センターのような自動化が難しく、飲料の後方自動補充を除けば放置されたままだ。自動化するよりECプラットフォームに乗せて“販物分離”するショームーム販売の方が現実的だから、キッチン業務のような自動化は今後も期待し難い。

 小売店にはパントリー業務はないと思われるかもしれないが、実は販売対応で生ずるマテハン業務が少なからぬ負担になっている。顧客要望による在庫探し、試着品や返品の棚戻しがそれで、接客中に煩雑に発生すれば販売に支障をきたしてしまう。ZARAがロンドンのストラットフォードシティSCにリニューアル開店した4500㎡のEC一体型未来店舗では、EC購入品の受け取り(クリック&コレクト)とサイズ試着に対応する自動ピッキングのロボット倉庫を装備したことが注目されるが、試着品の検品と棚戻しは人海戦術のままだ。

 飲食店では原則、ホールスタッフがキッチンに入ることはないが、小売店では接客スタッフがバックヤードに入って在庫を探すという“変事”が日常的に発生している。これなど自動化以前にフェイシング管理の励行と分業で解消すべきで、小売店にもパントリーカウンターを設けてフロントヤードとバックヤードを分業すべきかもしれない。