日本には外国人向けの料理教室があまたある。飲食店でもインバウンド向けの料理体験コースは増えてきている。がんこフードサービスなど寿司を提供している日本料理店では「寿司握り体験」が定番になっている。

「ハラール専門の料理教室」を運営する清成弥生さん。

 この動向の中で、「ハラール専門の料理教室」を運営している人がいる。ちなみに「ハラール」とはイスラム教の戒律上「許された」という意味だ。

 この主宰者は清成弥生氏。料理研究家である清成氏は、2013年から東京・上井草の自宅キッチンで日本人向けに日本野菜ソムリエ協会認定料理教室を主宰していた。これは旬の野菜を使用した料理教室で、子供連れも歓迎していたことから、離乳食や食育の講座も行っていた。23区最大の農地面積を有する練馬区の豊富で新鮮な野菜を直接仕入れ、農家の主婦の調理法なども参考にしながら、野菜の特徴を最大限に生かしたレシピを考案していた。時には参加者と共に農作業体験なども行っていたという。

 その清成氏が「ハラール専門の料理教室」を運営することになったのには、次のような経緯がある。

「外国人向け」から「ハラール専門」になった理由

 

 清成氏は2016年の正月に「今年の目標」として、外国人向けの料理教室を開きたいと思った。そして夏にトライアルを行った。このときは清成氏の知人のアメリカ人1人、中国人2人が参加した。そして「内容をきちんと伝えたい」という趣旨で英語の通訳を入れた。

「このときの参加者の反応が今でも忘れられません。料理を一口食べた瞬間に『わぁー』と言わんばかりに表情が明るくなりました。今まで食べたことのない料理に感嘆する姿を見て、心が震えました。知らなかったものを知ったときの感動がダイレクトに伝わってきて、胸が熱くなりました。『私はこのようなことをやりたい』と確信しました」

 こう語る清成氏であるが、このような経験から「世界中に日本食を伝える役目をしたい」と思うようになった。そこで外国人向けの料理教室を調べたところ東京だけで約100件が数えられた。主流は東京や大阪であるが、長野・白馬村の外国人が訪れる観光地などでも運営されていた。そこで気付いたことは「ハラール対応」の文字があっても、料理教室のシーンの中にムスリム(イスラム教徒)が写っているものがないということだった。

 清成氏はテレビでムスリムの観光客が日本で食事をするときに、店の看板のメニューを見ては、「ここは駄目だ」と次の店を探している光景を見て、せっかくの旅行で日本を選びながら、実際にやって来たのに食べられるものが少ないことを残念に思っていた。

ハラールの調味料を用意することも課題となった。

 こうしてハラールについて知ろうと思い、関連書籍を読みセミナーに参加するなど、学びを増やしていった。そして知れば知るほど、自分がこれまで行ってきた料理教室をハラール専門にしてみたいという思いが強くなった。

 ハラール専門の料理教室を開講するに際してのハードルは、一般の食材でハラール認証がないものをいかにして「ハラール」として認識するのか、ということである。また、ハラール認証を持たない料理教室でどのように情報発信するか。さらに、ハラールの調味料を用意すること、調理用具や保管庫などどこまで対応するのかということも課題である。

 清成氏の料理教室は10時30分から13時30分の3時間。この時間帯には礼拝の時間に重なる。そこで礼拝の場所、お清めをする場所、礼拝用マットなど、さまざまな準備も必要となる。清成氏は「ムスリムの観光客に日本でハラール料理を安心して体験していただきたい」という思いが高じて、これらの課題を解決していった。

礼拝用マットも人数分用意している.

 料理教室で使用する食材や調味料は日本産にこだわり、ハラール認証を得ているものを使用。認証のないものはメーカーに問い合わせて、アルコールや豚由来のものではないことや製造ラインの状況を確認している。家の中では新たにハラール専用の冷蔵庫を購入し、保管庫、調理用具、食器なども全て専用に新調した。礼拝用マットも人数分用意している。お清めは自宅のシャワーを使ってもらえるようにし、タオル代わりに和柄の手ぬぐいを用意している。