ベイクルーズグループはマルチブランド戦略を取るメーカー出身の大手セレクトショップだ。売上高は1000億円を超えたが、今も新たなブランドや事業を開発し続け、時代の変化に対応し続けている。ファッション部門のトップである古峯正佳副社長にグループのこれからの戦略を聞いた。
※CUO=Chief business Unit Officer(最高事業単位責任者)。古峯氏はファッション事業単位のトップ

(聞き手/『ファッション販売』編集長・西岡克)
photo/杉田容子

古峯正佳

1974年1月26日埼玉県朝霞市生まれ。拓殖大学商学部卒業後、制服や作業着の衣料品製造会社に約3年間勤務。99年3月ベイクルーズに入社し「エディフィス」新宿店の販売スタッフからスタート。2001年9月同銀座店店長。02年からの同渋谷店店長の後、本社勤務に。08年7月「ドゥーズィエム クラス」ディレクター、10年9月ラクラスの初代CEO(最高経営責任者)に。14年3月ルドームのCEO。16年9月ベイクルーズ上席取締役副社長に就任。趣味はサーフィン。

 ――ベイクルーズグループの概要は。

 古峯:ファッションを中心にフード(飲食)、ファニチャー(家具)、フィットネスを含めて約50ブランドを展開しています。事業持ち株会社であるベイクルーズの下に主なグループ企業が6社、他に伊藤忠商事との合弁会社もあります。

 創業者で代表取締役会長である窪田祐には「多くのリーダーを世に送り出したい」という思いがある。だからある程度の事業規模になったら分社して、そこに社長を据えているのです。

基幹ブランドごとに分社経営、親会社が次の事業を育成する

絶好調の「イエナ」。パリの暮らしがモチーフ。アッパーラインの新ブランドもデビューする予定だ。

 ――グループ企業の機能分担は。

 古峯:基幹ブランドを主軸に分社しています。最初は2003年9月に設立したジョイントワークスでアウトレット業態がメインです。次は06年9月に設立したフレームワークスで「スピック&スパン」が母体になっています。JS.ワークス(08年9月設立)は「ジャーナルスタンダード」、ルドーム(同08年9月)は「エディフィス」と「イエナ」、ラクラス(同10年9月)は「ドゥーズィエム クラス」、アクメ(06年買収)は家具です。

 トライワークス(16年6月設立)は伊藤忠商事との合弁会社で現在は東京・南青山の「シティショップ」だけですが、今後は伊藤忠商事が持つブランドのビジネス拡大をサポートしていきます。

 ――親会社ベイクルーズの機能は。

 古峯:収支を含めまだ補助輪が必要なブランドはまずベイクルーズが運営をしていきます。

 また人事、総務、経理といったスタッフ部門やEC(電子商取引)部隊があります。生産部門も統括していますが、各ブランドの商品企画は各販社が行います。

 ――メーカー出身の会社だが、ファッション部門のオリジナル商品の割合は。

 古峯:65~70%ぐらいです。OEM(生産委託)やODM(企画・生産委託)はあっても数%。どうしても納期に間に合わなければOEM会社を使うこともありますが、基本的には自社で開発します。

 ――残りのセレクトの部分は。

 古峯:セレクトショップの役割はこれまで無名のブランドを発掘して紹介することでした。しかし今はある程度名が知れている安心感のあるブランドにお客さまのニーズが強く、仕入れがそこに偏り始めており、危惧しています。

 ただ最近はお客さまが再び変化し始めていると感じています。人と違うもの、特徴のあるものを求め始めており、われわれの役割をもう一回見直さなくてはいけない時期に来ているのかなと思います。

 当社はバイヤーが出張に行っても「街で必ず現物を探してこい」という予算の設定をされます。何とか新しいものを開拓してこいという仕組みなのでしょうか、そういうマインドを残そうとしています。

今絶好調な「イエナ」と「ドゥーズィエム クラス」

 ――17年8月期の見通しは。

 古峯:リアル店舗は前年並みくらいで厳しい。それをECが前年比約20%増で補完しており、全体では7%増前後で着地の見通しです。来期は前年に対して1%成長する目標を掲げています。

 ――好調だったブランドは。

 古峯:絶好調だったのがフレンチエッセンスを利かせた「イエナ」でECを含めたブランド合計で約20%増。トラッドをベースにした「ドゥーズィエム クラス」も好調を持続し約6%増でした。

 シーズンインの1年半ほど前までにシーズンのディレクションがスタートして、方向性を決めるのですが、このディレクションが早く、やりたいことやブランドの女性像が明確なのが要因だと思います。

 全体にはリアル店舗が厳しく、ECが好調なのですが、この2ブランドはいずれの販売チャネルも絶好調でした。「店の売上げがウェブに取られる」というのは被害妄想だと思えました。

 ただ両ブランドとも「店に来て買ってほしい」というスタンスが強い。「ECで売れればいい」というブランドはECでは売れません。店にわざわざ買いに行きたいぐらいのブランドがリアル店舗でもECでも売れるのがよく分かりました。

 ――苦戦したブランドは。

 古峯:少し足踏みしたのがトレンドとスタンダードをミックスする「スピック&スパン」です。マーケットに合わせ過ぎてブランドの軸がぶれ過ぎてしまった。全般的にメンズは苦戦しています。

 ――「エディフィス」も苦戦している。

 古峯:「エディフィス」や「ジャーナルスタンダード」のメンズは苦戦しました。しかしディフュージョン業態「ジャーナルスタンダード レリューム」のメンズは好調でした。まだ1店ですが東京・南青山にあるメンズセレクトの「レショップ」も約20%増と好調でした。

 ――売上高で上位だったブランドは。

 古峯:1位はアウトレットの「ベーセーストック」で、2位が「ジャーナルスタンダード」、3位が「イエナ」。4位以降は「スピック&スパン」「ドゥーズィエム クラス」「ジャーナルスタンダード レリューム」、そして「スローブ イエナ」の順です。

 ――飲食部門の事業規模は。

 古峯:飲食事業は70店で80億円。その他ファニチャー、フィットネスがあります。だから多角化といってもファッションはまだ大きな屋台骨です。

 ――EC事業の17年8月期見通しは。

 古峯:売上げは前年比約20%増で、EC化比率は約23%。自社サイトでは業界ナンバーワンだと思います。自社サイト「ベイクルーズストア」とゾゾタウンの割合は大体半々くらいです。

 ――ECが好調な理由は。

 古峯:十数年前から自社サイトの開発をしていたこと、一カ所で全部のブランドを見られる利便性、在庫がなくなっても引き当てがすぐ掛けられるという利便性、ポイント付与や顧客情報もリアル店舗と連動していて店とECのどちらでも買えるという利便性かなと思います。

 顧客データの一元化と在庫の一元化、倉庫の一元化は既に済みました。ECは5年後に400億円を目指しています。EC発のブランドの開発、ECだけの事業化も現在進行しており、9月に立ち上げる予定です。

 ――新規ブランドの状況は。

 古峯:4月に東京・渋谷キャストに開いた「パルプ 417 エディフィス」は苦戦しています。当社はトラッドベースのブランドが多いですが、ラグジュアリーストリートという新しい分野に挑戦したのです。この流れが来ているのは間違いないので、早急に軌道に乗せていきます。複合している飲食業態「パルプ デリ&カフェ」は計画値に乗っています。

 ――「アルディー ノアール」は。

 古峯:当社には一般の社員からの提案を事業化する「スタートアップキャンプ」という制度がありますが、ここから生まれた黒にこだわったブランドです。

 まずは「スピック&スパン」の中の一ブランドとしてスタートさせて、8月末まで東京・青山の骨董通りでポップアップストアを展開。当社はファッションだけで30ブランドあるので、ゆくゆくはその仕入れブランドのようにしたいと思います。ECの専用ブランドとして事業規模を拡大する戦略も考えています。