商業界主幹・倉本長治氏を迎えて(右端が捧 賢一氏)*コメリ所有の写真より。

―開業の初心忘るなと春一番風雪のなか白梅の咲く―

 5月8日、肺炎のため86歳で亡くなったコメリの名誉会長・捧 賢一(ささげ けんいち)氏の言葉。氏の歌集『微笑佛(みしょうぶつ)』(2006年 商業界刊)の一節。1000億円突破時、2000年の頃に詠まれた。

 国内にホームセンター(HC)1186店舗(2018年3月期)を展開するまでになったコメリの創業者である。

 同社の原型は1952年、新潟に開業した米穀商、米利商店。その名の通り、米・穀物、燃料販売を手掛ける店で賢一氏は高校卒業後から携わっていた。72年、商業界主幹・故倉本長治氏と出会い、本格的な商いの道を志した。85年、コメリに商号変更、HC展開へと軌道をとっていった。

―競争は世の常なれどきびしかり学びし老舗の廃墟むなしき―

 1980年代、第1回コメリ・アメリカセミナーに際し、その思いを詠ったもの。

 捧氏は早くから米国のチェーンストアに学び、その競争の厳しさ、栄枯盛衰の姿を目の当たりにするとともに、流通が遅れているとされたわが国の園芸、農業、建築資材分野の効率化のモデルづくりを志向した。

 プライベートブランド(PB)による商品力強化、店頭でのEDLPを軸に多店舗化を進め、2010年にはHC業界唯一の1000店に到達。特に家電、インテリア除く園芸、農業に特化した小商圏タイプの「ハード&グリーン」は沖縄除く46都道府県に展開しており、コメリ成長の土台となるフォーマットとなっている。

 顧客サービスでは通常のハウスカードに加え、アグリカードと呼ぶ収穫期に対応した12カ月後の決済方式を取り入れ、中心客層である農業関係者の経済的な利便性を高めたサービスを取り入れている。

 全店売上高は3419億円(営業利益169億円、営業利益率4.9%*2018年3月期)。カーマ、ホーマックを擁するDCMホールディングス(全店売上高4435億円、営業利益195億円、営業利益率4.4%*2018年2月期)に次ぐが、店舗数、収益性の面において最強最多のHCであるといっていい。

 2003年には捧 雄一郎氏を後継社長とし、賢一氏は経営でのバックアップ役に徹する一方で、地域での文化活動に注力した。地元の八幡宮再建の先頭に立つ一方で、雪梁舎美術館を創設、若手芸術家の育成を支援するなど、地域における経済、文化の基盤づくりを支えてきた。また自ら筆をとり、先述の短歌、文学なども嗜んだ。

―入社式コメリの夢を語らえば新入社員の瞳かがやく―

 4月の歌であろう。『微笑佛』の最終章、2006年に詠まれた。次代に直接語る役は雄一郎氏に引き継がれた。しかし、日本屈指のチェーンストアをつくりあげ、園芸、農業に関わる生活者の仕事と暮らしを高め、支え続ける土台を築いた捧 賢一氏の功は残り続ける。

新潟県三条にあるコメリ1号店。