後日届いた再来店を促すハガキには、こう書いてありました。「親が子どもと遊べるのはせいぜい小学生までです。雪遊びをさせませんか。グッズはお貸しします」。「ご自宅までの120サイズのお荷物を1つ、配送料を負担します」

 山奥で雪まみれの中、大変な思いをして泊まりにくるお客さまはなかなかいません。それでも働く人たちがいるから、営業停止にするわけにもいかず、恐らく「どうしたら来店していただけるのか」を考えたのではないでしょうか。

「雪にほとんど触れずに大人になる子どもたちも増えています」――私はこれらの何気ない文にぐっときてしまいました。自分たちの旅館への来店を促すことは大前提として、お客さまの立場になっても考えて共感の目線を持ち、心に響くような最適なメッセージを綴る。環境要因でマイナスにもなり得る雪すらも味方につけている。なんてすごい視点なのでしょう。これこそ立派な「おもてなし」ではないでしょうか。

「ブランド」は諸刃の剣。期待に苦しめられることも

 実は、別の機会にもっと有名な、ブランドを掲げた子連れリゾート施設に泊まったこともあります。HPには施設の写真がたくさん載せられていて、時間滞在型の宿泊を楽しめるように、近隣にはショップやアクティビティも多数設けられているようでした。

 けれど昼前に到着すると、チェックインの時刻は15時からのみ。「私がウッカリ見逃してしまったな」と反省すると、他にも部屋に入れずに手持ち無沙汰そうなお客さまがちらほらロビーに……。大切な情報も分かりにくければお客さまには届きません。到着早々、楽しみにしていた気持ちが重いトランクを引きずってしゅるしゅると萎んでしまいます。

 受付で施設のシステムについて簡単な質問をすると、新人なのかスタッフはマゴマゴ。「そうですね…(沈黙)…〇〇だと思います」と自信なさげなご案内。その他のスタッフも、忙しいのかあまり気持ちいい対応がされなかったことが強く印象に残ってしまっています。けれど、宿泊値段は前述のなかや旅館より高いのです。

 料理や設備は最新で、確かにクレームを出すほどの接客ではない、いわゆるマニュアルシステムなのだけれど、「〇〇ブランドでもこんな程度なのか……」と思ってしまったのは、私だけでなく、夫も同意見でした。

 ブランドを掲げた施設には人は集まりますが、お客さまは当然ブランドに期待して訪れています。名前が知れていることは集客面ではメリットですが、時に高い期待に応え続けなければいけないので厳しさもあるのです。

「何もない」ことを大きなチャンスにしよう

帰りの電車を待つ湯檜曽駅。人はおらず、マジで文字通り何もない

 私たちは、「何もない」ことをとかく嘆きがちです。「もっといい立地にあれば」「もっといい商品が入ってくれば」「もっと買う気のあるお客さまがいれば」、もっと、もっと、もっと……。

 理想を高く掲げることは大切です。けれど、「何もない」ことはチャンスになります。「何もない」ということは、これから新しいイメージを作っていけるからです。

 ファーストリテイリングのユニクロは、機能性だけでなくファッション性をもたらすために、毎シーズン多額の投資をして多くのデザイナーとのコラボ商品を発表しています。話題性という観点もあるでしょうが、「ユニクロをファッション」と捉える世代を増やしたい、日常着だけでない新しいイメージを作りたいように見えるのは私だけではないと思います。

 今「何もない」と嘆いている人も、ショップも、大きなチャンスなのです。こう書いている私自身も、まだ独立したばかりでほとんど仕事がなく不安がないわけではないのですが、これから自分が何色に染まるのかとても楽しみにしています。今できることに焦点を当てて、ぜひ、自分たちの強みを作っていってください。