唐揚げ、まぜそば、サラダ、寿司の裏巻きにも使える

 競合よりも安い価格に加えて、食感も成功のポイントだ。柳川氏はあえて唐辛子を固めに仕上げ、サクサクとした食感を追求した。

「口に入れたときの『おや?』という感覚を大事にしたいと考えました。これなら唐揚げやまぜそばの具材としてもいいし、サラダや寿司の裏巻きとしても使えますからね」

 価格面でのアドバンテージと食感の妙。「食べるラー油」はミシマフーズタイランドの売上げを順調に牽引している。

どら焼きは最後の最後に客単価が上がると大好評

 三島食品のラインアップとして、「食べるラー油」はさほど違和感はない。ご飯やおかずをおいしく演出するアイテムだからだ。

 しかし、冷凍のどら焼きややわらび餅となると全く別物のカテゴリー。なぜ、三島食品はタイで冷凍の甘味商品に着手したのだろう。その理由は、タイ人の無類の甘い物志向にあった。食後には必ず何か甘いモノを食べたいタイ人に向けて、レストランはデザートや果物をメニューに取り入れているが、いまひとつ雑に扱われている。柳川氏はそう感じたという。

「何か甘いモノをそろえておけばいいという発想なんでしょう。真剣に営業すればいけるかもしれないと考えました。どら焼きにしたのは持ち帰りやすいからです。お客さんが日本食の店で食べて飲んだ後、家族にお土産として持ち帰るにはちょうどいいデザートなんですよ」

タイ人の甘いモノ志向に応えるデザート、どら焼き。冷凍で飲食店に提供し、客単価アップに貢献している。

 実際、営業をかけてみると反応は悪くない。飲食店からも、最後の最後で客単価が100〜200バーツ(約350円〜700円)上がると好評だ。

 ミシマフーズタイランドがタイだけで生産している製品には業務用の丸餅もある。競合製品はあるにはあるが、伸びが悪く、食感もざらざらで決しておいしいものではなかったことから、柳川氏はタイ産の米を使い、日本式の製法でタイの工場に生産を委託。日本の餅同様、よく伸びる餅の実現にこぎつけた。今ではしゃぶしゃぶや鍋の店にも「鍋の具」として採用されている。

 真剣に開発されてこなかった商品群。既存品はあるが、品質がいまいち、あるいは価格が高過ぎる製品。そうした「隙間」ニーズを見出すのが柳川氏はうまい。タイのマーケットに横たわるニッチなチャンスを見つけたら、日本の三島食品の品揃えにあろうとなかろうとまずは実践に移してみる。これがタイの三島食品の成功パターンだ。

「価格を抑えて販売すれば狙えるパイは大きくなる」

 価格へのこだわりの強さも市場開拓を後押ししている。日本食ブームに沸くタイには日本から進出する企業が絶えないが、「メイドインジャパンなら高くても売れるはず」という思い込みが強く、価格は二の次というケースが少なくない。

 しかし、それではマーケットが限られる。

「タイの人口は6000万人。高い日本食を利用してくれるのはそのうちせいぜい1%ですが、現地の志向に合うものを現地で開発し、価格を抑えて販売すれば狙えるパイは大きくなる。ただし、価格を安くする以上、量を増やさなければならない。そのためにはタイだけではなく周辺国を巻き込んでいく必要がありますね」

 日本製なら何でも受け入れてもらえるほどタイのマーケットは甘くない。本格的に市場開拓を図るなら周辺諸国も見据えた上で、価格を抑えるために現地生産をするなり、あるいは三島食品のように現地企業に委託生産をするという選択肢は必須である。

「何かにプラスαとしてかける」ふりかけ開発中!

  今、柳川氏が検討しているのは、ご飯にかけるという従来型の発想を脱した「新しいタイプのふりかけ」だ。

 ご存知のように、このエリアで食されている米は粒が細長く粘り気が少ない。水分量が多くもちもちしている日本の米とは対象的だ。日本のふりかけは日本のご飯にはよくマッチするものの、東南アジアのぱさぱさとしたご飯との相性が良いとは言い難い。

 そのせいか、海外では日本人が予期せぬふりかけの使い方が続出している。シンガポールでは、あるとんこつラーメンの専門店がご飯用としてテーブルに設置したふりかけを客はラーメンにふりかけて食べているという。

「かつおのふりかけでしたが、かけると豚骨スープに魚介のだしが効いた風味になるんですね。そのせいかシンガポールでラーメンにふりかけをかける人が増えてきました」

 アメリカではカリフォルニアロールの内側にふりかけが使用されている。柔らかいご飯やネタと、さくっとしたふりかけの食感の合わせ技が受けているからだ。

「ハワイやロサンゼルスではポップコーンにふりかけをかけて食べる習慣があるので、原料として供給しています。日本人からすると奇妙に感じますが、ポテトチップスにのり塩をかけるようなものでしょう(笑)。ご飯にかけることを前提とすると視野が狭くなる。

 タイであれば麺料理のクイティアオにふりかけをかけて食べるのもいいかもしれません」

 タイをはじめとする東南アジア諸国にマッチしたふりかけがあってもいい。柳川氏は現在、タイでふりかけを生産するプロジェクトを進めている。目指すは、今ある技術や設備を生かし、ローカルの食文化に溶け込むふりかけ。ご飯にとらわれず、「何かにプラスαとしてかけるモノ」としてふりかけを定義し直すと用途は無限に広がりそうだ。