戦国時代に狙うは「お財布シェア」

 ではこの戦国時代、狙うべきポイントは何か。ここから具体的な買物をイメージしながら整理する。ここで戦国時代と例えたのは、日本の限られた土地の中で自分たちの領地をいかに拡げていくかという戦国時代の争いが、まさに今の小売業界が置かれている環境に類似しているからである。むしろ、その限られた土地さえ、人口減少の影響を受け、小さくなっているのだからさらに過酷である。

5000円を持ったAさんがとる行動は?

 普段、あなたのお店も利用しているAさんが今日、夕飯の材料を買いに行くとしよう。お財布の中には5000円。(ここではその他の詳細な条件は割愛)もし、Aさんが全ての買物をあなたのお店でしてくれたら、最大この5000円が売上げとなる。ただ、支出配分の決定権は当然Aさんにあり、必ずしもこの5000円全てをあなたのお店で使ってくれるわけではない。まさにこの5000円という領地を競合を含めて奪い合うのだ。

 ただ待っていても、Aさんは来店してくれない。Aさんが今日の買物であなたのお店を選んでもらえるかどうかが、最初のハードルとなる(店舗選択)。この店舗選択には、自宅や職場からお店までの距離や移動手段なども大きく影響するが、出店時以外に動かしがたい要因を除くと、「Aさんにとって普段、あなたのお店がどう見られているか?」ということが影響してくる。

 Aさんは今日、すき焼きを食べたいと思っている。普段から野菜の鮮度を強みにしてきたあなたのお店は、その訴求、価値がAさんにも支持されてきた。そこであなたのお店では、野菜と豆腐、しらたき、卵は買おうと思っているが、肉は別のお店で買いたいと考え、結果的に、あなたのお店では1500円しか支出しなかった。お財布のシェアは30%(1500円÷5000円)、残り70%は競合に流れていってしまった。

 もちろん、70%が競合に流出してもそれを埋め切るだけの客数を稼げればいいが、前述の通り、人口は減少、マーケットは縮小している中でそう甘くない。

 では、どうするか。もちろん客数増を諦めるわけではないが、狙うは「お財布シェア」である。(図表③)。

 

 その起点となる「普段からのコミュニケーションで顧客満足度を高めておく」が重要となる。しかし2017年に実施した当社調査によると、毎日1人で買物をする主婦が抱える主な悩みとして、

①商品選びに失敗したくないから冒険はしない

②商品を価格でしか比較できないのでワクワクしない

③毎回1人で購入を決断するのがつらい

の3つが挙げられた。

 つまり、主婦の多くにとってルーチン化した食事のための買物は「調達活動」と化してしまっているわけだ。そうした活動を普段の接点の中で、『このお店にいけば、便利で、お得で、私のことを分かってくれている商品・サービスがある。だから、いつもお買物が楽しい。』に変化させるには、彼女らのことを理解し、彼女ら目線でのコミュニケーション(品揃え、販促、店頭コミュニケーションなど)することが必要となってくる。まさに、お客さま視点の徹底である。

セブン&アイも戦略を転換させている

 既に大手小売企業も動き始めている。2018年2月期決算で(株)セブン&アイ・ホールディングスが過去のオムニチャネルの取り組みについて234億円の減損を計上、よりCRMへシフトすると発表した。これは「お客さまの声・行動を新たな商品・サービスの開発と次のPDCAに活用していくことで、1人1人のお客さまに魅力的な購買体験を提供する」ということで、まさに「普段からのコミュニケーションで顧客満足度を高めるための戦略」への転換といえる。

リアル店舗とネットスーパーの併用がポイント

 ここで1つ具体的な事例とともに、お財布シェアを高める可能性についてご紹介したい。今回は、インテージが提供する全国5万人からなる消費者パネル SCIデータ(以降、SCI)を用いて、同一チェーンにおけるリアル店舗とネットスーパーの利用実態について分析した。SCIはインテージが自主的に集めた5万人のモニターから日々の買物データを集めている。そのためPOSデータとは異なり、「どのような人が、いつ、どこで、何を、いくらで、何個購入したか」が分かる。

 以下は、2016年4月~2017年3月の1年間において、SCIモニターの西友の「リアル店舗利用」「ネットスーパー利用」の併用状況である(図表④)。

図表④ 店舗/ネットスーパー利用状況