そこでソラノイロは、中華そばとべジソバの2本立てでスタートした。

 独立開業の店の立地を麹町にしたのは河原氏と相談した上でのことだ。河原氏は「宮崎君のつくるラーメンは下町のものではない。都会的だから東京の中心で営業するのがいいのではないか」と言った。また、マスコミ関係者に相談したところ、「山手線の内側がいい。このエリアから離れて、東京の郊外になると取材にはなかなか行かない」ともいわれた。そこで、宮崎氏にとってサラリーマン時代に過ごした麹町に土地勘があったことから、ここで独立開業の店をオープンすることにした。

 麹町で働く人は「士業」や芸能関係が多い。また裕福な人が多く、「価値のあるものにお金を惜しまない」といったカルチャーが存在している。そこで宮崎氏は「麹町には自分のラーメンを受け入れてくれる土壌がある」と認識するようになった。

「ソラノイロ」という店名の由来は、『般若心経』の中にある「色即是空、空即是色」、つまり、この世にあるもの全てのものは因と縁によって存在しているだけで、その本質は空であるということ。また、その空がそのままこの世に存在する全てのものの姿であるということだ。宮崎氏は力の源の「変わらないために変わり続ける」という経営理念に傾倒しており、その流れをくむものとしてこの概念に落ち着いたという。

 この店名を漢字で表記すると硬いものとなり、ひらがなでは柔らかいというイメージがあり、カタカナにすると都会的な雰囲気を醸し出して女性が入りやすいのではと考えてこの表記にした。筆者としてはソラノイロとはロハスを連想しやすいことから、そのマインドを持つ女性客への浸透が早かったのではないかと思っている。

 ソラノイロのべジソバの麺はグルテンフリー(グルテンを含む小麦粉を使用しない)のものにした。そこで、グルテンを拒む人が目的来店するようになった。

「一風堂」でラーメン職人の素地を養う

 宮崎氏は「一風堂」を展開する力の源に勤務していた。同社に就職することになったきっかけは、大学4年生の就職活動に始まる。

 宮崎氏は将来的に飲食店を開業したいという希望を持っていた。そして、会社訪問の一環でその世界を学ぶためにラーメンのテーマパークを訪ねた。そこで博多一風堂 創始者の河原氏と出会った。会話をしたのはわずか10分間だけであったが、宮崎氏は河原氏が語るラーメンに対する情熱から強く影響を受けた。宮崎氏は河原氏からこのように言われた。

「君がラーメン店をやってみたいという思いは、その道のりとして真っすぐのものしか見えていない。ラーメン店開業までにはさまざまな道があるから、いろいろな経験をしてみなさい」

 そこで、まずラーメン店にアルバイトとして大学卒業まで働いた。河原氏が書籍の中で説いていた「飲食業として、人様に光を投げかけたい」「ラーメンという仕事を通じて人様を元気にしたい」という河原ワールドは宮崎氏がラーメンの道を進むに際して大きな励みとなった。そして、「河原氏と一緒に仕事をする」ことを目標にするようになった。

 大学卒業後は麹町に本社がある会社のサラリーマンとなった。同社は4カ月で辞めて、調布にあるラーメンの個人店に入ったが、そこも4カ月で辞めた。この間に何度か河原氏と面談しており、その経緯で2000年に力の源に入社した。

 力の源の宮崎氏は、ラーメン職人の道と本部スタッフを経験した。

 まず、3カ月間の研修を受けて、その後、「一風堂」五反田店の立ち上げを経験。入社2年目の24歳から同店の店長となった。2003年に異動し西麻布「五行」の立ち上げ。2004年に京都「五行」の立ち上げ。2007年銀座「五行」を立ち上げて店長となった。2008年にマネージャーとなり、「五行」をはじめとした「一風堂」以外のブランドの飲食事業を担当した。2009年に人材開発室室長となり、会社の塾の塾長にも就任した。ここでは先輩社員や年上の社員にも研修を行った。このような塾長としての業務を行いつつ店の立ち上げも20軒ほど行った。そして、2010年10月に退社した。宮崎氏はこう語る。

「五行の担当になったときは、力の源の新ブランドを立ち上げるということがミッションでした。ここに6年間在籍したことから、豚骨に加えてさまざまなラーメンをつくることができるという自信がつきました」

 こうして宮崎氏のラーメン職人としての素地は培われていった。

「ラーメン」の形で日本食の奥深さを発信

 ソラノイロが大きく注目されるようになったのは、麹町本店が『ミシュラン』の2014年版でビブグルマンを取ったことから。以来、2015年版、2016年版と連続でビブグルマンを取った。これに伴って商業施設から出店要請の問い合わせが増えていった。こうして2015年6月に東京駅のラーメンストリートに出店した。ここでは麹町本店で提供しているべジソバを提供してほしいという要請があったが、「これからはインバウンドの時代だ」ということでビーガン対応に切り替えた。

東京駅店を通路から見たところ

 東京駅店のビーガンラーメンのスープはニンジンだけでつくっている。ニンジンを炒めてグラッセにして、それをフードプロセッサーにかけている。性能の高いものを導入したことでスープを飲んだときにニンジンの粗いザラザラ感がなくなりポタージュのようなとろみのあるスープになった。

 同店の規模は約20坪、24席。外壁は外国人にとって分かりやすい日本の情景をアピールしていて、店内はカフェのような開放感がある。既存のラーメン店にないデザインであることから、ラーメンストリートの中で異彩を放っていると同時に、ラーメンストリート全体を斬新な雰囲気にしている。同店では外国人観光客が常に1割程度食事をしている。