日本の小売業界「長期売上高の推移」から分かること

 編集部:今日は、2枚の大きな図表をご持参いただいているようですね。図表①の小売業界の長期売上高グラフと、図表②のその内容ですね。1994年から2017年までの24年間のデータです。

 

 吉田:経済産業省が集計している商業動態の小売売上げデータから抜粋して、作成したものです。今まで、小売業界には、こうした24年間の売上高の時系列での全体集計はなかったので、今回、あちこちからデータを拾って、整合性をとって作成しました。図表①が、その棒グラフです。図表②は、途中で商品別の小売業の分類替えがありますが、合計データには連続性があります。

 

 ただし、経済産業省の売上げデータは、なぜか消費税を含むものです。大きく見せたいためでしょうか。消費税は1997年には3%から5%に、2014年には5%から8%に上がっていますから、その分を差し引いて、売上額を見る必要があります。2014年以降は8%(11.2兆円)も含まれるので、大きいのです。

 自動車販売とガソリンの販売が約30兆円、この統計では無店舗販売が7兆円はあるので、37兆円ぐらいは引いて、有店舗販売を見る必要があります。

 以上の結果、最新の2017年の有店舗小売額はグラフの142.5兆円より、45.6兆円も少ない96.9兆円になります。

 96.9兆円が全国約100万店の小売総額で、1店舗平均では年商が9690万円(約1兆円)と極めて小さい。店舗の売場面積が狭いと、人的な生産性(売上げ/人時=人時当たり売上げ)は低くなります。1人当たり売場面積を大きくできないからです。

「アベノミクスで消費が増えた」は間違っている

 編集部:税込みの総額では、22年前の1996年の146兆円が最高になっていますね。これが8年後の2004年には128兆円へと、約12%も減っています。その後は、2017年の142兆円にまで14兆円(11%)増えていますが……。この増えた内容はどうなってきたのでしょうか。

 吉田:2009年に、米国発の金融危機だったリーマン危機で132兆円に減っています。これが回復したのが、2012年の137兆円です。その後の5年で142兆円へと5兆円増えています。

 何が増えたのか。

 実は、年間で2800万人に増えた海外観光客によるインバウンド消費の4.4兆円です。わが国の人口1人当たりの店舗消費額は約100万円/年です。この4.4兆円のインバウンド消費によって、消費人口が440万人も増えたようになっているのです。

 2013年の138兆円から2014年の141兆円への増加は3兆円で、その伸び率は2.2%でした。この増加は、2014年4月から消費税が5%から8%へと3%上がったたによるもので、小売業の税抜き売上げはむしろ減少しています。

 以上のように、わが国世帯の消費は、2011年ごろの135兆円から、現在までほとんど増えていません増えたのはインバウンド消費(4.4兆円)と消費税分(3%:10兆円)の合計14.4兆円分だけなのです。2012年からのアベノミクスで、消費が増えたかのように思われていますが、増えた内容は、売上げの3%の消費税が10兆円分、そして観光客の消費が4.4兆円です

 編集部:うーん、なるほど。実態はそうなんですね。そうすると、24年間でいえば、わが国の店舗での小売総額は、国内世帯分ではむしろ減っていることになりますね。

 吉田:本当の内容はその通りです。

 政府は、アベノミクスのプラスの効果による個人消費の増加を言いたいので、店舗の総売上げの増加の内容を、あえて言わないのです。実際は、このデータ範囲にした24年間も、店舗の売上額の国内世帯による増加はないのです。