アメリカ小売業界の特徴の一つは、「新しいアイデアへの積極的かつスピーディな投資」だろう。創業者たちは事業計画書を持って、精力的に投資家や業界のプロをはじめ、さまざまな人々に意見を求め、出資を仰ぐ。100人以上に会うのがスタンダードなのだそうだ。特にデジタリーネイティブの世界では、テクノロジーの発展スピードが速いので、常に次のステップを考え、投資を続けないと企業が成長しない。

 ショップトークでは数多くのスタートアップ企業が紹介されたが、司会者が企業紹介の際、最近獲得した融資額を必ず付け加えるのが印象的だった。しかも多くの企業がまだ起業後1、2年だ。今回は、今注目されている事業モデルで新市場構築に取り組む企業を紹介する。

◆ロケッツ・オヴ・オーサム (rocketsofawesome.com)

ロケッツ・オヴ・オーサムの配送箱。【出所】hellosubscription.com、2017年5月
典型的なコーディネーション。【出所】Facebook.com/Rockets of Awesome、同社フェイスブックページ


3カ月に一度の子供服サブスクリプションで、ワクワク感をお届け

 2016年に開業したロケッツ・オヴ・オーサムは、今アメリカで急成長しているオンラインサブスクリプションモデルの子供服版だ。共働きがほとんどのアメリカでは、忙しい母親はショッピングモールに行く時間が無いため、思いついたときにすぐオンラインで購入する。同社サイトでは、子供のサイズや好みの色柄や遊び等に関する質問に答えると、単価16ドルから38ドルの服が8点選ばれる。出荷前の48時間以内に商品内容を確認して入れ替えることも可能だ。1回当たり20ドルのサービス料がかかるが、商品を1点でも購入すれば20ドルは返金される。送料・返品は無料で、全商品購入すると25%オフとなる。3カ月ごとに商品が送られてくるのは、子供の成長やシーズンを考慮してのことだ。

ロケッツ・オヴ・オーサムCEOレイチェル・ブルメンタル氏。【出所】筆者撮影

 同社の特徴はまず、商品がオリジナル開発したものであることだ。同社CEOのレイチェル・ブルメンタルによると「Jクルーの品質、ギャップの価格」で、子供たちに今人気のデザインの商品が上下コーディネートされて送られてくる。

 次いで、受け取る子供たちがサプライズギフトをもらったような気分になる演出だ。配送箱は外側が青空に雲の絵、内側には楽しいイラストが描かれており、手がついていて、カバンのように持ち運べる。ライフスタイルブロガーとして著名なキャリー・ヒギンズ氏はブログ[1]に「おしゃれに興味が出てきて、母親が買うものは何でもノーという娘が、ロケッツだと、何が届くかを楽しみに待っている」と紹介、これに対して多くの読者が賛同のコメントを寄せている。

この市場にはギャップやターゲット、アマゾンも参入

 同社は既に1250万ドルもの融資を受けており、今後の成長に大きな期待が寄せられている。もっとも、CEOのレイチェルはオンライン眼鏡販売で成功を収めたワービー・パーカー共同経営者の妻なので、ワービーの成功ノウハウがバックにあるという安心感が期待を増幅している部分はあるだろう。

 子供市場でのサブスクリプションモデルは大手チェーンの間でも急激に増加している。昨年秋ギャップ社はベビーギャップ、オールドネイビー、今年4月にパジャマと寝具に特化したベッドタイムボックスで参入しており、ターゲットも今年2月にキャット&ジャックのPBラインをサブスクリプション化している。

 そして5月1日、アマゾンも児童書のサブスクリプションサービス、「プライム・ブック・ボックス」の試験営業を開始した。新生児~2歳、3~5歳、6~8歳、9~12歳の4コースがあり、出荷前に選ばれた内容を確認して不要なもの、既に持っているものを削除すると自動的に代替の本が選ばれる。アマゾンで過去購入した本は当然リストから除外されており、コースは1カ月に1回、2カ月、3カ月の3コースで、1カ月当たり22ドル99セントだ。

 毎月教育教材が届く定期購読制度は半世紀前から存在していたが、現在のサブスクリプションモデルはAIを活用しているのでよりパーソナルな好みに細かく対応し、無駄を省き、対象品目もさまざまな領域に拡大できる。しかし成功の鍵はなんといっても「箱を開けた瞬間、いかに子供が大喜びするか」にあるようだ。