土産品のサムライラーメンのパッケージ

従来のビーガンラーメンのイメージを覆す

 今、インバウンドに対応したショップで土産品として「Samurai Ramen UMAMI」(以下、サムライラーメン)を目にすることが多くなった。以前はムスリム(イスラム教徒)のインバウンドが集まるショップで置かれていたが、現在はそれに限ったことではない。長方形で重厚な金色のパッケージがよく目立ち、表面に「Vegan」(ビーガン=完全菜食主義)、「NO MSG」(グルタミン酸ナトリウム不使用)と記されている。ロゴマークが戦国武将で兜の中央に「麺」の文字を掲げているのがユニークだ。2食入りで800円(税別)。パッケージを開けると乾麺の束が2つと箸が2膳入っている。買い求めたインバウンドにとっては現地で贈答品としても重宝されているのではないか。

土産品の中身
パッケージ裏にある成分表示

 筆者もビーガンラーメンを食べる機会がある。「身体によい食べ物」と頭で分かっていても、日本伝統のラーメンと比べると「うま味」が弱く、率直に言って「ビーガンとはこういう食味なのだ」と割り切って食べている。使用食材に動物由来のものが禁じられているために、うま味を表現することが難しいという。しかしながら、サムライラーメンは筆者のビーガンラーメンのイメージを大きく覆した。

 サムライラーメンのつくり方は、袋に入ったインスタントラーメンと同じである。作り方も英語・アラビア語・中国語で記載されたしおりが同梱されている。スープは白みそを使った上質のみそ汁で野菜のうま味が感じられる。ラーメンというよりも日本料理を感じさせる。この商品が、日増しに目につく機会が増えている理由が理解できた。この商品はハラール対応もクリアしていて(アルコール由来不使用)、ベジタリアン、ビーガンもムスリムもうま味を「おいしい」と理解したら、これは地球規模のビッグビジネスになるのではないか。

 この商品を企画・ブランド管理しているのは株式会社Funfair(本社/東京都世田谷区、代表/石丸啓明)である。この商品が誕生した背景と動向、そして展望について発案者である同社取締役の白澤繁樹氏が解説してくれた。

日本のラーメンを食べられない人がいる事実

白澤繁樹氏

 白澤氏は1976年生まれ、鹿児島市の在住で、元々、web・広告業界出身で、現在は障碍者向け就労支援事業「ひふみよベース紫原」を経営する。元々、webや広告の制作業界にいたことから、「少ないリソースで高品質のモノをつくる」という分野において経験が豊富だ。それを生かして、サムライラーメンを白澤氏が発案したのは2014年のことであった。

 白澤氏はモノづくりの他に、商品の輸出を小規模で行っていた。この事業で、これらの商品のカスタマーであったニューヨーク(NY)在住のアメリカ人と親しくなった。

 このやり取りの過程で「NYではラーメンがとても人気だが、豚骨スープのものをビーガンは食べられない」ということを知った。白澤氏は「日本人が気軽に食べるラーメンを食べられない人がいる」ということに大きな衝撃を受けたという。

 白澤氏は、ここにマーケットが存在すると考え、早速日本で発売されているビーガン対応のラーメンを取り寄せて食べてみた。しかしながら、白澤氏自身が「また食べたい」と感じたものは存在しなかった。そこで、ビーガンにとって「おいしい」と思ってもらえる商品を作ろうと考えた。

 ラーメンの製造は、白澤氏の試作品のレシピを元に、食品メーカーに依頼し、現在のバージョンは鹿児島・日置市に本拠を置く食品メーカーがライセンスを受けて生産している。スープは現在ノーMSG、ノーアルコール、麺は日本で一般的に使用されているクチナシ色素を無添加として「国境のない」ラーメンを想定している。

 現在は、ビーガン、ムスリムを含めた外国人から支持されているサムライラーメンだが、当初は白澤氏が想定したほど売れなかった。

 販促についてあれこれと知恵を絞っていたところ、商品企画段階で知った「ハラール」を思い出した。ハラールはビーガンの条件を包括していて、東南アジアをターゲットにできることからマーケティングコストが欧米よりも安く、海外向けのプロモーションエリアとしては最適であると考えた。そこで白澤氏は、インドネシア、マレーシアでSNSを使ったプロモーションを行った。

 Facebookでサムライラーメンのページを立ち上げてこの商品の魅力を訴求した。しかしながら、海外にいる人がこのアピールを見てもどのようにすれば食べられるのか分からない。そこで「どこでその商品が買えるのか」という問い合わせがくると、「日本に来れば買うことができる」という回答をしていた。

 そのやり取りに対して、ハラールの情報発信をしているハラールメディアジャパン(現・フードダイバーシティ)が気付き、同社から問い合わせがあった。そこで白澤氏がサムライラーメンのスペックを伝えたところ、「それはハラールの認証が無くても、ムスリムが食べられる商品である」という意見をもらい、留学生向けに試食をしてもらうイベントを繰り返し行った。

ハラールエキスポジャパン2014に出店

 白澤氏は、ここで改めて「ムスリムはインバウンドも在日もおいしいラーメンを求めている」ということに確信を持った。その頃、ムスリムインバウンドが多く訪れる東京・浅草にハラール認証を得て、ムスリム対応を行っている「セカイカフェ」ができたばかりで、同店でこの商品を土産品として扱ってもらった。フードダイバーシティ主催の「ハラールエキスポジャパン」は2014年に第1回が開催されたが、この会場に商品を展示してもらった。こうしてサムライラーメンはムスリムが安心して食べられる、ビーガン対応のラーメンであることを周知していった。

 大きな特徴となっている金色のパッケージは当初、試作品を外国人に見せたところ「チープだ」という意見をもらった。では、ゴージャスなものにしようと金色にした。ストーリーは侍が最も栄華を誇っていた時代、「豊臣秀吉の金色の茶室」である。異国の人にはクレージーに映るようだが、それは大いなるキャッチになると白澤氏は判断した。

 さて、サムライラーメンは2017年11月21日から23日にかけて東京・浅草で開催された「ハラールエキスポジャパン2017」に出展し、試食を提供したところ1300食が消費された。また、食品メーカーとのコラボレーションによる「山葵玉(わさびを使ったトッピング)」の提案の反応も上々で、これまでムスリムインバウンド向け土産品として注目されていた段階から、より多くのテイストを提供していく段階に進んでいると思われる。