2018年4月3日、スウェーデン発祥の音楽配信最大手「スポティファイ・テクノロジー」が米ニューヨーク証券取引所(NYSE)に上場。初値はNYSEが事前公表していた参考価格132ドルを上回る165.9ドルと上々のスタートを切った。さらに多額の資金を得た同社は競合他社を引き離せるのか? なぜこれほどの支持を得たのか考えてみたい。

優れたビジネスモデルで一気に頂点に

私がスポティファイに入れた音楽。

 CDが売れなくなり、配信とダウンロードによる楽曲の提供で単価も下がった今、歌手はコンサート活動などで稼がざるを得なくなった。今思えばその始まりは1990年後半から2000年前半「ナップスター」ということになるのだろう。その後、アップルは2000年代半ば頃からiPodとiTunesを使ってナップスターに変わり、ダウンロードによって音楽を配信する新しいビジネスモデルを確立させた。そして、今はストリーミング・サービスに取って代わった。ナップスターからわずか10数年で音楽市場これほど変わるとは誰も想像できなかったではないか。

 ストリーミングによる音楽配信サービスは、アップル、グーグルの他、日本ではそれにAWA、LINEなどが加わって「群雄割拠」という言葉がふさわしい市場になっている。スポティファイは世界65カ国・地域で、月間利用者数は1億5700万人、そのうち有料会員は7100万人を抱えている。

 そのスポティファイがなぜ“音楽を聴く”世界でトップに立ったのか? 日本においては2016年9月からと最後発だ。これまでにもさまざまな分析がいろいろな媒体でなされているが、実は以下の4つの比較的単純な理由ではないかと考える。

(1)ストリーミング1本勝負にした

 これまでは自分で曲をダウンロードして音楽を聞いていた。それは自分のスマートフォンを中心としたITデバイス内のメモリーを使うことを意味する。アプリを入れ、ソフトウェアの自動更新、写真などでスマホを1年も使えば自分が想像した以上にメモリーを使う。アンドロイドのスマホであればマイクロSDカードなどの外部メモリーを使えるが、iPhoneではそうは行かない……。

 ストリーミングはこの心配が必要なくなった。スポティファイはストリーミング1本勝負にしたところが大きい。

 裏を返せばインターネット環境が整っていないとサービスは利用できないことから、ネット環境が整っていないエリア(地方、山間部、海)では利用ができず、ネットが発達していない国では利用が厳しいところもあろう。そもそも先進国でもデータローミングで高額請求されることを考えると使用には躊躇してしまう。

 ただ、その場合、スポティファイにはプレミアムプランという月々980円を払えばオフラインでも使える機能がある。事前に聞きたい曲をダウンロードしておけばネット環境が使えなくても音楽を聞ける。スマホのメモリー使うことになるが、好きな曲全てをダウンロードすることはないと思うので使用するメモリーはごくわずか。スポティファイはしっかりとバックアップも用意している。

(2)優れた検索機能を有している

 4000万曲以上の楽曲数があるとしているが、他のストリーミング・サービスと大差はない。そうなると、検索機能の差が物を言う。スポティファイはシングル、アルバムごとにカテゴリーが整理されている他、「エグザイル」と検索しても「EXILE」で登録された曲もピックアップしてくれる(=検索漏れが少ない)ことが挙げられる。これが的確にできるサービスは実は多くはないのが実情だ。

(3)曲に同調して歌詞が表示される

 全ての音楽ではないが、曲に同調して歌詞が表示される点も見逃せない。音楽コンテンツの製作、配信などをしているシンクパワーは、音楽と歌詞が同期する機能(=プチリリ機能)を2016年からスポティファイに提供を開始。使ってみれば分かるが、これは結構、感動する。歌詞を暗記し切れていないストレスから解放されるのは意外に大きなことだと気づかされる。近年、体験型のサービスが大事といわれているが、間違いなくこのプチリリは音楽を聞く人に新しい体験を与えている。

(4)無料モデルをつくった

 無料であれば、広告は飛ばせないなどの制限がある。ただ、他のサービスでは最初の1カ月は無料で2カ月目になるとユーザーは使わなくなるという悩みがあるが、スポティファイは無料なので利用者がすぐ離脱するのを回避でき、いつか有料会員になってもらえればいいというスタンスを取れる。