「おいしそうなお肉、わ!黒毛和牛だ!今ここでBBQしたらおいしいよね!」

 売場ですぐに食べたくなる新業態グローサラント「LUCUA FOOD HALL」は、2018年4月1日(日)にJR西日本SC開発の手によって、元三越伊勢丹のデパ地下部分約1500坪にできました(核テナントとして、スーパーマーケット〈SM〉の阪急オアシスの新業態“キッチン&マーケット”が入り、改装オープン)。

 SMとデパ地下とフードコートを合体させたグローサラント(SMを意味するグロサリーとレストランをかけ合わせた造語)は中食マーケットがデパ地下やコンビニに侵食され飽和状態になってきた今、SM業界が外食から売上げを奪える最強の新業態として注目されています。

 今回は現地視察をもとに、「LUCUA FOOD HALL」が外食の代替として消費者に支持されるかがテーマ。アメリカSMのミールソリューション(食事を解決すること)の取り組み事例をもとに、新業態として成り立つビジネスモデル構築の可能性を解き明かしていきます。

ポイントはfarm to tableの疑似体験

 

「LUCUA FOOD HALL」しか生み出せない付加価値とは、一言でいうと、来店客が今すぐ食べたい衝動に駆られる臨場感による“こと”の演出です。

 来店客は「間接照明で照らされたカボチャとお芋のスイーツサラダの黄色が発する鮮度感に魅了」され、その片側の「対面キッチンで作られた黄金色の出汁巻き玉子に作りたてが醸し出すおいしさをイメージ」したとき、「赤身とさしの入った黒毛和牛盛り合わせの肉を目にすることで、とろける食感を思い浮かべ、すぐにBBQしたくなると感じる」

 お客がこうした心の動きをするような、提案が行われているのです。

 皆さん、「farm to table」という言葉を知っていますか?

 これは「地元で採れた鮮度を維持し、調理後、できるだけ早く食卓に上らせる」というもの。鮮度が良いことで(自然の恵みの)栄養素が最大化された旬の食材を、調理でさらにおいしくする。そうすることで、「おいしさ」と「心と体の健康」をお客に提供するという考え方です。

「LUCUA FOOD HALL」はそのためにSMが核となり、素材の鮮度が醸し出す“おいしさ”を訴求し、ここですぐに食べられる設備(セルフ調理、イートインスペース、電子レンジ、手洗いなど)を完備しています。こうすることで、プロが焼く絶妙の火加減のステーキではなく、今自分が選んだ肉を自分の好みに合わせて焼いて味わう価値を提供しているのです。

SMは「素材の3つの価値」を提供しよう

 60年前、既にグローサラントに取り組み始めていたアメリカでは、共働きが増えた時代に食事を解決する手段としてSMが外食を競合相手にベンチマークしました。

 そこで、売場の一角にファストフードを導入し、店舗内でシェフが対面調理を始め、惣菜もつくるようになった(グルメ化で外食に負けないクオリティーを追求した)のですが、これにより人件費や廃棄ロスが膨れ上がり、利益を生み出すビジネスモデルを構築できなかったという経験をしています。

 この経験を踏まえてアメリカのSMが追求したのは、「素材を扱うSMしか提供できない“おいしさ”をfarm to tableの疑似体験を通してコストをかけずに訴求すること」でした。

 そこで訴求されたのは、「素材の産地」「素材の原材料」「素材の生産方法」という3つの価値で、それぞれ次のような取り組みが行われました。

1.素材の産地(LOCAL):地元素材を共有し、数種類の惣菜をつくる。

2.素材の原材料(SAFETY):無添加トマトピューレ使用の料理デモを現場が持ち回りで実施する。

3.素材の生産方法(SUSTAINABLE):BBQをテーマに自然素材ソースを関連陳列する。

 新業態グローサラントが少子高齢化の日本でSMの救世主となり、新しいマーケットを開拓しビジネスモデルを確立するには、この3つの価値を売場で具体的に展開することが重要です。

 farm to tableの疑似体験で、採れたて(獲れたて)をすぐに食べることが最もおいしく体によいことをお客に感じてもらい、健康を意識する潜在ニーズを掘り起こし、リピート率をアップさせるのです。

「グルメ化」で米国SMの二の舞を演じるな

 アメリカのSMが、グローサラントという新業態をグルメ化することと理解し、シェフを雇ったことで割高なグルメ価格を提供するはめになりました。その結果、消費者にグルメSMは高いだけで外食が提供する料理のおいしさとは比較にならないという烙印を押され、一気にグローサラントの存在価値はなくなってしまいました。

 日本のグローサラントがこの二の舞を演じてはいけません。

 外食に唯一対抗できるfarm to tableの疑似体験を駆使し、「素材の鮮度がおいしさにつながる」ことを消費者に伝えれば、グローサラントはSMの新業態として、「地元に密着したおいしくて健康になるお店」として支持されるのです。