第17回は、「ネットスーパーで収益を上げる難しさ」です。

 皆さんは、平均して週に何回ぐらいスーパーマーケット(SM)行きますか?

 私がこれまでSM(ヤオコーやハローデイ)の協力を得て、ストアロイヤルティ関連の店舗アンケート調査を実施した経験からは大体、週2、3回ぐらいでしょうか。結構な来店頻度ですね。毎日来店しているという専業主婦の方も結構いました。

ほとんどのSM企業では「赤字」

 今日、リアル店舗型SMでは、消費者のオムニチャネル化を踏まえ、ネットスーパー事業に本格的に力を入れ始めている企業は多いようです。しかし、大概の企業は収益的には「赤字」です。そのため、ネットスーパー事業はうまく軌道に乗らないケースが多々聞かれます。

 では、なぜ赤字になってしまうのでしょうか。その背景を考える際、これまでに何度が紹介してきた「チャネルシフト」の考え方が重要になります。

 リアル店舗型SMがネットスーパー事業にチャネルシフトする場合、単に消費者がスマートフォンで買物するケースが増えてきたから、自社もタッチポイント戦略の一環で、ネットスーパーをやる(利便性の向上)という考えでは、採算を取ることは非常に難しいでしょう。

最大の課題は「誰が物流費を負担するか」

 なぜなら、ネットスーパー事業最大の難しさは物流費を誰が負担するかにあるからです。ほとんどのSMは、例えば、買物合計金額3000円や5000円以上などの金額を設定して、配送料を無料にしています。

 しかし、消費者はいつもネットスーパーでばかりで買物をしているわけではありません。店舗とネットスーパーを併用しているのが実情でしょう。

 そうした場合、SMが考えるべき戦略は2つあります。①送料は買物合計金額に見合い、今日の物流費の高騰を見据え、自社が決して損をしないよう、確実に有料化を図る。②店舗ピッキング型ネットスーパーの場合、ネットスーパーの対象エリアを限定する。

 この2つの考え方について、物流の専門家である(株)イー・ロジットの角井亮一氏も自著の中で書いていらっしゃいます。

英国の先進事例では「有料化」は当たり前

 本質的には、①は消費者の「配送料は無料」という既存意識をどのように変えるかの問題になります。この意識を変えることは結構難しいと思われます。前回の「オムニチャネル時代における宅配問題」(再配達有料化問題)とも似た話です。

 ネットスーパー事業で成功しているグローバル先進事例・イギリスのテスコやアズダ等のSMは配送費の有料化は当たり前です。きちんと消費者に適正な配送費を負担してもらっています。さらに、両社は既存店舗とネットスーパーの顧客のID-POSデータをマーケティング(CRM)に生かし、販売促進の一環として、時折、優良顧客に対し、配送料の無料化を仕掛けたりしています。そうした取り組みを通じて、一人当たりの購買客単価をさらに上げていこうとしているのです。

「対象エリアの限定」で参考になるヤオコーの事例

 ②についてはヤオコーのケースが参考になります。ヤオコーではネットスーパーを2015年2月より地域限定でスタートしました。そこで、さまざまな実証実験を行い、2016年7月から志木宗岡店、2018年5月から上福岡駒林店へと拡張し始めています。

 ヤオコーらしく、三芳藤久保店で約1年半、店舗ピッキング型ネットスーパーとしてかかる物流コストを事業として吸収したとしても、収益上、損益分岐点を超えるには、「客単価を上げるべきか」「商品単品の荒利益を上げるべきか」を徹底して仮説検証を繰り返したそうです。

 また、「リアル店舗で行っているミールソリューションなどの付加価値サービスをスマートフォン上のアプリでどのように実現できるか」「SMの目玉商品である生鮮や惣菜をどう買ってもらうか」などの実験も繰り返したそうです(それは現在も続いています)。

三芳藤久保店では単店黒字化を達成している

 恐らく、ネットスーパーで黒字化を果たしているSMは見掛け上、管理会計のテクニックを使い、物流費を店舗内の会計処理を行わず、本社の別勘定項目等でうまく会計処理しているようです。よって、物流費込みで事業黒字化を果たしているSM店舗はほとんどないと思われます。それほど物流費込みでのネットスーパーの収益黒字化は難しいのです。

 そうした中、ヤオコーは三芳藤久保店での単店黒字化を既に達成しているそうです。買物の利便性や低価格訴求だけでネットスーパー事業を行っても、決して長続きしない。リアル店舗同様、SMで持続的成長を遂げるには、ネットスーパーであろうと、ビジネスモデルやアプリ上の「サービス品質」が重要となるというわけです。