ショップオープンを記念して、こだわり抜いたジーンズが有名なBONCOURAが特別限定で制作したトートバッグ。力織機(りきしょっき)で丹念に織られた帆布生地をインディゴ染めし、最も付加の掛かる底部分は経年劣化に配慮した二重仕立てになっている。

 3月29日の開業初日に10万人の来場者を記録した東京ミッドタウン日比谷。銀座、有楽町からほど近く、オフィス街で劇場や映画館が多かったこの場所の「商業地」としての顔をのぞかせた。

 “THE PREMIUM TIME, HIBIYA”をコンセプトに、贅沢な時間と空間の中で特別な体験を味わってもらうために地下1階から地上7階まで計60にも及ぶ個性的な店舗をテナントした。

 新業態22店舗、日本初出店5店舗、商業施設初出店が14店舗ある中で、ファッション愛好者からの支持が厚い「MAIDENS SHOP(メイデンズ ショップ)」が、初めて大型商業施設に出店したのが新業態店「well-made by MAIDENS SHOP」。5坪ほどのスペースだ。

世界中の”スタンダード”を集めたセレクトショップ

オープン記念に国内ブランドのUNFILに別注したTシャツでユニセックスサイズにも対応している。 オーセンティックなアメリカのTシャツをイメージしたボックスシルエットが特徴。
家蚕の紡績糸を作る過程で落ちた短い繊維を集めて作られたローシルクで編んだ、100%シルクの生地が独特な風合いを醸し出している。

「MAIDENS SHOP」は、21年前に神宮前2丁目にオープンしたセレクトショップ。

 世界各国から“良質”な商品だけを集めることを主眼に、アメリカで生まれたジーンズやフランスのバスクシャツ、イギリスのオイルドジャケットなど、その国で産まれ育ったスタンダードを求めて、世界中からよりすぐりの商品を集めてくる。多くの人たちから永年愛されてきた珠玉の一品を、古き良きアメリカを感じさせる空間で提供する。

 大衆向けというよりは、素材やディテールなどの違いが分かる洋服好きの人たちからの支持が厚い。

 新たに日比谷というロケーションを選んだ理由について聞いてみた。

「ここ日比谷は古くから音楽や演劇、映画など鑑賞できる環境に恵まれ、しかも公園が近くにあって大人がゆったりとくつろげる。そうした景色の良さと私たちのお店が持つフィーリングとの相性が良かったから」(ショップサブマネージャー櫻木美希さん)

 神宮前の店舗との違いについても聞いてみる。

「(東京ミッドタウン日比谷は)商業施設という性格上、いろんな人たちが行き交う。神宮前の店舗のようにターゲットをセグメントする(絞る)のは好ましくないだろうと。ファッションを中心に捉えつつもそれだけにとらわれず、取り扱い品種を生活シーン全般にまで増やして、来店客の間口を広げてみました」(同櫻木美希さん)

 確かに、店内にはレザーグッズやダイナーウエア(食器)、サービングボード(食器として使える木製の板)、洗濯用液体洗剤など神宮前の店では取り扱っていない商品が目に留まる。メインのアパレルについても神宮前店ではメンズのM、Lサイズが基本だが、同店ではユニセックスサイズまで対応している。女性目線でも楽しめそうな品揃えになっているのだ。

パリの有名セレクトショップ「Merci」(メルシー)のアートディレクターによるコレクション。アメリカンモダン・ダイナーウェアや日本の弁当にインスパイヤされたコレクションは、シンプルでありながらパズルのように組み合わせて使える。自分好みにセレクトする楽しみが味わえる。
スウェーデンの掃除用品ブランドSMART(スマート)は時代にフィットしたデザインとナチュラルな素材が魅力。用途別の4種類が入ったダスターセット。ドイツ・ゾーリンゲン地方伝統の本格的なテーブルナイフのジャーマン・マルチナイフやイギリスの田舎町でハンドシェイビングされたプライウッドのサービングボードなど。

商業施設に入っても変わらないスタンス

かつてのオスマン帝国、イラン、アゼルバイジャンおよび中央アジアのテュルク系国家の国々において、伝統的な綴(つづ)れ織りで製造されている絨毯をキリムという。純粋な装飾のため以外では、ムスリムの人々による祈りのための敷物としても用いられる。
遠くケニヤのローカルな素材を使って、現地の卓越した技術を持った職人によるハンドメイド製品。写真奥のバングルは水牛の角を加工した。


「well-made by MAIDENS SHOP」では今回新たな立地環境で新しい出会いが生まれるにあたって取り扱い品種を広げた。

 ここがまたこだわりの「MAIDENS SHOP」らしく、ライフスタイル全般に取り揃えた商品にもまたそれぞれに語られるべきストーリーがある。最近は「商品」にまつわる物語やこだわりといった部分が軽んじられるようになった気がするが、「商品」とは本来、作り手側の思いや背景があって初めて「商品」となる。

「well-made by MAIDENS SHOP」では商品のどこがどう良いのか、あるいはその「商品」の背景にあるこだわりや事情などがキチンと説明書きまでしてある。初めて訪れる人たちに向けて親切な取り組みともいえよう。神宮前の店舗が不親切と言っているわけではない。東京ミッドタウン日比谷に店を構えるとは、より多くの新しい接点が生まれるということであり、そのための心構えがしっかりとできているということだ。

 アパレルの品揃えは、新たにユニセックスサイズ対応された商品以外は神宮前の店舗に準じている。デンマークから昔ながらの製法で編み上げられたセーラーセーターで有名な「ANDERSEN-ANDERSEN(アンデルセンアンデルセン)」や元エルメスのプロダクトマネージャーが立ち上げた、フランスのクラフトマンシップを大切にしたブランド「De Bonne Facture(デボン・ファクチュール)」などのウエアは引き続き扱う。

 無理に商業施設に合わせるのではなく、自分たちがこだわり続けたスタンスを変えることなく、取扱い品種を広げても、セレクトする基準を維持するというセレクトショップ本来の姿勢で取り組んだ形だ。

「MAIDENS STORE」はなぜ20年以上愛され続けるのか

エンダースキーマ(Hender Scheme)は日本のシューズブランド。プレミアムなレザーを使ったシューズのほか、バック、名刺入れなど革小物なども展開している。特に人気スニーカーをオマージュしたヌメ革製のシューズ「オマージュライン」が人気。工業製品として製造されてきたスニーカーを、あえて浅草の家内制手工業と呼ばれるような、町の工場の人たちが作る。エンダースキーマのシューズの特徴はモノが作られる背景や工程にあり、表層的なデザインではなく、過程や考え方をデザインしている。

 老舗飲食店でさえ10年経てば顧客の8割は入れ替わるといわれる世の中で、移りゆくトレンドを扱うファッション業界で常にお客をつなぎとめるだけの魅力を継続して発信することは想像以上に難しいはずだ。

 2018年4月、米国西海岸発のセレクトショップ「アメリカンラグシー」事業からサザビーリーグが撤退することが決まった。この「アメリカンラグシー」も1号店オープンから20年を数えるセレクトショップで、当時は群雄割拠と新しいセレクトショップが多数生まれ、勢いもあった。

 命運を分けたのは業態進化に向けた息が上がらないロードマップだ。

 「ブランド」というと認知力やプロモーション、話題作りにばかり気を取られてしまいがちだが、本来の意味である「ブランド=信頼」を構築するためには商品の「品質」がわれわれとブランドの間に来なければならない。

 そういった意味においても「MAIDENS SHOP」が新たに取り組むこの新業態店は、未来につなぐためのセレクトショップのひとつの形なのかもしれない。

  • 企業名/メイデン・カンパニー
    店舗名/well-made by MAIDENS SHOP
  • 所在地/千代田区有楽町1-1-2
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