今回はマーケティング的観点から、ファッション業界以外で働く人たちにも役立つであろう話をします。性別、職種など関係なく、気軽に読んでみてください。

 突然ですが「黒いパンツが欲しいんです」とお客さまに言われたら、あなたは何をお薦めしますか? 

「そのまま黒いパンツをオススメする、もし自店になければお取り寄せのご案内や他店で売っているところをご紹介……」と答えた方、真面目で素晴らしいですね。

言葉を字面通りに受け取るのは「危険」

 禅問答のようですが、そもそも、お客さまは黒いパンツが欲しいのでしょうか? 

「黒だと痩せて見えるから」と体形を気にされている方なら、黒で太って見えるパンツよりも、白でも身体のラインがスッキリと見えるラインのパンツのご紹介が正解です。なぜなら、その方の本心は「黒いパンツが欲しい」ではなくて「痩せて見せたい」にあるからです。足の太さがコンプレックスという方なら、プラスワンアイテムとして足を隠すためのロングブーツをお薦めしてもいいかもしれません。

「黒は地味な自分でも着られそうで無難だから」という理由なら、ネイビーやベージュなど毎年定番のベーシックアイテムでも良さそうです。同じ黒でも、奇抜なデザインの黒いパンツは「無難」を希望されているなら避けるべきでしょう。

「黒はどんな洋服とも合わせやすいから」が答えなら、コーディネートに困ったときのお助けアイテム・デニムだって許容範囲に入ってきます。どんな洋服とも合わせやすいものを探しているおしゃれ初心者なら、一度洗濯すると細かい糸くずが付いてケアに手間のかかる黒より、取り扱いの楽な素材の方がヘビーローテーションできる気がしませんか?

「食べこぼしの汚れが目立たないから」という消極的理由なら、白く跡が残ってシミになりがちな黒よりも細かい柄が入っているデザインの方が目立たなくて済みそうです。ちなみに泥汚れでも黒がベストと思われますが、激しい泥汚れを事前に手洗いするなら水に濡らすとどこが汚れたか分かりづらいので、実はあまりお勧めできません(経験談)。

 ここまで読んでお気付きですか? これらの場合なら、相手が黒いパンツを欲しがっていたとしても、そのまま黒いパンツをご紹介することが正解とは限りません。もっと言えば、色は「黒」である必要も、「パンツ」である必要もないのです!

デザイン、素材や生地感、着用する人、着て行く先は?

 では、上記のような理由ではなく、黒いパンツが本当に欲しかった場合を掘り下げていきます。

 デザインはどうでしょう? ショートパンツなのか、膝丈なのか、半端丈か、足首が見えた方がいいのか、見えない方がいいのか、ダメージはありかなしか。裾は広いワイドタイプか、絞ってあるスキニータイプか。黒は黒でも柄物はOKなのか、OKなら大柄と小柄はどこまでが対象なのか、無地がいいのか。着用イメージはどんどん変わっていきます。

 素材や生地感も大切です。メタリック、レース、メッシュ、レザー、ニット、コーデュロイ、シルク。しわになりにくい、自宅でのケアが重要、上質に見えるというスタイル提案の他にも、季節感を意識した素材アプローチが響くシーンもあるはずです。

 着用するのは本人でしょうか? もしかすると、友人、兄、姉、弟、妹、父親、母親、祖父母、親戚、会社の同僚かもしれません。あるいは人間ですらなく、ペットの犬や人形の着せ替え用の洋服、観賞用なんて使い方もないとは言えません。

 着ていく先は想像できますか? 普段着といっても行き先はたくさんあります。学校、部活動、アルバイト先、職場、取引先、飲み会。休日ならさらに選択肢が増えます。ショッピング、ドライブ、デート、婚活、ライブ、野外イベント、BBQ、街コン、義実家。もしかしたら急な不幸があって、取り急ぎ喪服代わりに今すぐ着替えられるものを探しているのかもしれません。