ゴルフでは、『力まない、考えない』の2つの否定語の格言をよく聞きますが、これって本当にできるのでしょうか?

 店舗の現場でも「歩くな!」「ロス出すな!」「デッドストック出すな!」の指示を聞きますが、実現できた現場を見たことがありません。

「力(リキ)まないためには力(チカラ)が必要」

 ラウンドレッスンに参加したとき、レッスンプロにこう言いました。「力(リキ)まないためには力(チカラ)が必要なんですね!」 そのプロは「その通り、木村さん、その表現頂きです!」と返してきました。この日はプロから体幹を使ってのスイングを厳しく指導され、クラブが振れてきて、加速するスイングを少し実感できました。その結果、クラブフェースの維持に苦労して、両腕の筋肉がパンパンとなり、この言葉が出てきたのでした。正確には『力まないためには筋力が必要なのですね』の所感を、語呂をあせて言ってみたのでした。

 このとき、プロの『その表現頂き』の言葉で気付いたことがありました。人間は基本的に『…しない』という否定語では行動変革はできないという心理原則を思い出したのです。ゴルフでは『力まない、考えない』は難しいし、できない。そうか!『力まないために何をする?』『考えないために何をする?』と考えればいいのだ。また一つ教訓を得た瞬間でした。

『力まない』ために腹式呼吸をしよう

『力む』とは腕に余計な力が入っている状態です。人間は物を遠くへ飛ばそうとすると本能的に腕で飛ばそうとするため、腕に力が入ります。これは人間の狩猟本能が影響しています。ましてやアマチュアは筋力がないため無理して腕に力を入れるのです。男女を問わず、プロは排気量の大きい車、アマチュアは排気量の小さい車のようなものなのです。

 従って、長期的な対策として、力まないためには腕周辺の筋肉(前腕屈筋群)を鍛えることです。具体的には、SWを持ってアドレスし、前傾姿勢を取ります。前傾姿勢のまま、両手首を上へコックします。クラブのシャフトと両腕の角度が90度くらいになるはずです。

 この姿勢で肩を視点に両腕をゆっくり上下にフリフリします。そのとき、手首のコックは決して解きません。シャフトと腕の角度90度を維持します。50回できるようになれば、前腕屈筋群を鍛えることができます。この動きは腹筋も鍛えてくれます。

 一方、短期的対策としては、腕に力を入れないために、他の部位に力を入れることです、それは腹筋です。アドレス時に鼻で息を吸い、口で大きく長く息を吐きます。すると腹筋に力が入ります。腹式呼吸です。腹筋に力が入ることで、腕に力が入る可能性が低くなります。

『考えない』ために息をすることに集中

 人間は考えたら体が止まる。これはスポーツの大原則です。テレビで、大相撲の解説者 若松親方が言っていました。「現役時代、仕切り線の前で、右に仕切ったり、左に仕切ったりして、対戦相手に『何をするのだろう?』と考えさせた」と。どんなスポーツでも体を動かすときに考えたら負けです。

『考えない』という無心の境地は難易度が高過ぎます。そこで、ゴルフとは遠いことを考えればよいのだと考えました。

 メンタルトレーニングの領域にマインドワンダリングという手法があります。簡単に言うと人間は【過去の失敗への失望】と【未来の失敗への不安】でストレスを感じ続けています。そのストレスを軽減するために【今】に集中するというものです。この状態をマインドフルネスと言います。

 その【今】に集中する方法が【呼吸する】ことです。考える対象を【呼吸する】ことにあてるのです。アドレス時、ただ息を吸うこと、息を吐くことだけを考えます。他には考えません。

 いかがですか、『力まない』『考えない』ために、息をすることに集中するのです。これ、簡単ですけど、奥が深いです。

否定語の指示を肯定語の指示にする

 店舗の現場では『歩かない』ために『各作業の段取りをしっかりやる』、『ロスを出さない』ために『ロスの見える化を徹底する』、『デッドストックを出さない』ために、『特売残在庫、エンドの戻り在庫のその後の見える化』を考えてみましょう。