「人件費単価の上昇で 人件費が毎年上がってしまって……」とあるチェーンの管理本部長からのご相談です。

―――なぜ 管理本部が店舗人件費コストを心配されるのでしょうか?

「人件費は管理本部の担当ですから……」

―――管理本部では、人件費は下げることはできませんが、店舗運営本部ならば、いくらでも手立てはあります、とキッパリ申し上げました。

 そもそも、店舗運営本部が、業務量を減らす前に、管理本部が定時昇給、新入社員採用、パートナーの時間給といった単価アップを行えば、人件費が上がるのも無理ありません。

 一般的にいいますと、社長が単価引き上げ与件を踏まえ、店舗運営本部に対し、総量引き下げの指示を出します。結果的に人件単価が上がったからコストオーバーで減益というのは、店舗運営本部がその役割を果たしていないからにほかなりません。

 そこで今回は、経営者が店舗運営本部に対して指導すべきことについて、少しお話しをさせていただきます。

今より少ない人員で新規顧客を増やし続ける

 まず、これは大基本として、一時的に利益を上げるためのコストカットではないということです。

 貴社の店舗で、「今より少ない人員で、新規顧客を増やし続ける収益モデルをつくることができるか?」ということへの挑戦となります。

「新規顧客を増やし続ける」と申しましたが、そのためには戦略的に余剰コストを作り出し、それを利益を生む業務に再投資していくということです。大事なことは、この目的達成のために、どこから手を付けていくのかを明確にしておくということです。

 店舗運営本部で戦略的に余剰を作っていくべきコストには、人件費、水道光熱費、施設保守費等がありますが、今回は、その中で最も構成比の高い『店舗人件費』について、触れていきます。

業務を利益を生むもの、生まないものに分ける

 ここでの店舗運営本部の人件費については、大きく分けて「利益を生む業務」と「生まない業務」の2つに分けて考えていくことになります。

「利益にならない業務なんてあるのでしょうか?」という声が聞こえてきそうですが、少し言い方を変えますと、直接、お客さまからお金をいただく業務と、それ以外の業務というふうに分けて考えていくことということです。

 前者はレジ、ギフト、対面販売といった、まさにお金を受け取る業務ですから、こちらの都合で止めることは、なかなかできないものです。後者は、発注、荷受け、仕分け、加工、品出し、清掃……といった、いわば、お金を受け取るための準備であったり、後片付けです。こちらは、社内的なコトなので、作業効率を高くし、時短化すればするほど、生産性は上がり、人時売上高も上がります。

 まずは、利益を生まない業務はできるだけ短くし、利益を生む業務にできるだけ時間を使うという手順を踏んでいくことなります。

 具体的には「手が空いている人は、部門を超えて、レジや忙しい部門に支援に行ってください」ということになってくるわけですが、現実的には、人によって時間給も契約時間も異なりますし、仕事のスキルややり方も違います。店舗の縦割り組織の壁を乗り越え、人を自由自在に仕事に割り当て活用するのは、1店舗であっても容易なことではありません。

まずは「人時」だけを見て、改善させていく

 そこで、まずは「人時」に注目し、そこを改善していくという考え方になります。そもそも人件費の計算式は『人時×人時単価』となりますが、市場の相場で簡単に引き下げることのできない「人時単価」はいったん置いておき、総量だけをコントロールすることに集中していくようにします。

 こうして「人時」についての取り組みを進めていくと、指導先チェーンの経営者から必ず出てくるのが、「それがどういうもので、どう活用していくかは分からんのです」という声です。

 おっしゃる通り、「人時」はなじみの薄い言葉なので、私も前職時代に、こう話しても、周囲になかなかイメージが伝わらず、その定着に長い年月がかかったという苦しい時期がありました。