ヤング世代を中心にジャージがファッショントレンドとして注目されている。ワールドトレンドに照らしても、直近のミラノコレクションではマルセロ・ブロンがMLB、NBAとのコラボレーションラインの中でも登場したし、ロシアの新鋭ゴーシャ・ラブチンスキーといったストリートファッション色の強いデザイナーにも引き続き、取り上げられている。

 そうした中、先日ニューバランスジャパンが20~40代の男女500人に行った「ジャージに関する意識調査」の結果が興味深かったので紹介したい。

他人がジャージを着ていても許せるシチュエーション】は、

「夜のコンビニ」が80.2%と断トツで「友人同士の食事」(26.4%)、「職場」(19.8%)と続き、「デート」については16%だった。さて、この数字をどう読むか。

「デート」に関して6人中1人くらいはOKということは残り5人はNGなので、現状では「デート服」には昇格できていないと読むかしかないだろう。しかし、「友人同士の食事」くらいなら4人に1人くらいはOK。しかし、残り3人はNGということなので、やはり「夜のコンビニ」程度にしか認められていないのは少し残念な気もする。

 実は「着用しよう」とする本人の気持ちと、本人以外の人間が評する判断は必ずしも一致しない。ファッショントレンドが広がり始めるのは、誰かが着ている姿を見て「素敵」に感じる共感力によるところが大きいが、評する人たちの価値観も固定されるものでもない。

サブカルチャーから火が付いた

 そもそも、このジャージがファッションパンツとして登場したのは1984年の頃。米国映画「ブレイクダンス」の熱が冷めやらぬ頃、ヒップホップグループのRUN-DMCの「Walk This Way」の大ヒットともにジャージスタイルが、ヒップホップファッションの代名詞のように日本に上陸したのだ。それまでスポーツブランドという概念しか持たなかったアディダスをRUN-DMCが着たことで格好良いストリートファッションとなったのが始まりだったと思う。はやらせたのはデザイナーでもアパレル業界でもなく、サブカルチャーから火が付いたトレンドだったのが衝撃的だった。現在、若いデザイナーたちがこの80、90年代をオマージュしながら、新しいクリエイティブを発信している姿を見ると、その頃を思い出して懐かしく感じてしまう。

 では、その当時ジャージは「デート服」としての市民権を得ていたか?と聞かれると

 何とも答えにくい。今、ココベイでは毎月300人の20~30代男子の着用実態を渋谷で調査しているが、2月末の調査でジャージをはいていたのは3人。これから暖かくなるに従い、着用人数も増えることも考えられるが、この一年の中で一番多い月でも昨年6月調査の7人が最高で、率にすると3%にも満たないのが現状なのである。

 やはり、街中(渋谷)にジャージをはいて出掛けられる度胸を持った男子は、「お洒落男子」であって、マーケティング用語でいうところの「オピニオンリーダー」であるに違いない。振り返って考えてみても、その当時、皆がジャージをはいていたかと冷静に思い出してみると今ほど、刺激や娯楽の種類が少なく「ファッション」への情熱も関心もあったことを差し引いても、せいぜい今の数字より数%プラスされたくらいの着用率だったのではと、予想する。

「デート服」への市民権獲得は……。

 もう、何年もこの着用実態を調査していると分かるのだが、業界で騒がれる「売れ筋商品」と定点観測で見る結果は必ずしも一致しない。売上実績も一つの購入結果であって、それ以上でもそれ以下でもない。ましてや、何にひかれて何の為に購入したのかまでは、なかなか分からないもの。ましてやターゲットにしている生活者のファッションへの好奇心や関心度、消費の優先順位といった思考をビッグデータとして把握することは難しい。

 そのうち、AI先生が全てを解決してくる日が訪れるかも知れないが。

 しかし、最期にこれだけは言える。

 今も昔も、ジャージはお洒落パンツとして、多く人たちからは好感を持たれていない。

 また、これからも広く普及する可能性は限りなく低い商品かもしれない。「デート服」への市民権への獲得にはまだ少し時間が掛かりそうな気がする。