第13回は、「オムニチャネルとAIスピーカー」です。

 皆さん、「Google Home」「Line Clova」「Amazon Echo」「HomePod」という名前を聞いたことがありますか。これらは全て、Google、Line、Amazon、Appleが既に発売しているAIスピーカーのブランド名です。なぜ、昨年来、各社は、AIスピーカーを立て続けに発売したのでしょうか。それは「オムニチャネル戦略」と関係があるのです。

顧客情報を入手し、マーケティング活動に生かす

 本稿 第1回に取り上げた『オムニチャネルって何だ?』の内容を少しおさらいすると、小樽商科大学の近藤公彦教授によると、オムニチャネルとは「全て(オムニ)のチャネルを統合し、消費者にシームレスな買物を提供する顧客戦略である」でしたね。

 日本ではスマホの普及率が70%を超え、多くの人が既にオムニチャネラー化しています。この現状を踏まえ、冒頭で紹介した各社は消費者の生の情報(バイアスのかかっていない情報)を手に入れるために、日常生活に入り込もうとしているといえるでしょう(この生の情報はこれまで取得が不可能でした。それを「AIスピーカー=IoT時代のコンシェルジュ」の位置付けで利便性を強調し、家庭に踏み込もうとしています)。

 今、消費者は、日常生活で「二律背反の状況」に置かれています。すなわち、「利便性」と「プライバシーリスク」です。

 ここで紹介したAIスピーカーは、家庭内のコンシェルジュ・サービスに近い存在で、買物、情報検索・提供、家庭内インフラ(電気、ガス等)と連動することで利便性を高めるものです。しかし、AIスピーカーを利用することにより、消費者は個人情報を全て吸い取られることになります。

 AIスピーカーを発売する企業はその貴重な個人データを日々蓄積し、そのデータ(ビッグデータ)を使って、消費者に対し、的確なマーケティング提案をしています。

 まさに、One to One Marketingを実践しているわけで、その代名詞がAmazonやGoogleのRecommend情報なのですが、先日、Facebook社が保有する個人情報データが外部流出する不祥事が発生し全米を騒がせたように、プライバシーリスクと背中合わせなのです。

今、重要な「どの位置にチャネルシフトさせるか」

『世界最先端のマーケティング』(奥谷孝司、岩井琢磨/日経BP)という書籍の中で、「チャネルシフト」という概念を提唱しています。

 これは「自社の主たるチャネルポジショニング(店舗orネット)を軸に、消費者の購買プロセスの『商品検討』と『購買の場』をどのように捉えるか」ということ。今後、小売企業はこの点を踏まえ、どの位置にチャネルシフト(戦略)させていくかを考えないといけません(この考え方はネット小売企業だけに当てはまるものではなく、リアル店舗小売企業にも当てはまります)。

 Amazonであれば、元々、「ネット」からスタートしたのですが、タッチポイントをリアルにも持ちたいために、ホールフーズ・マーケットを買収し、自社でAmazon BooksやAmazon Go(コンビニ)を作り、Amazon EchoやAmazon Dush Buttonにより、消費者の自宅の中に入り込むチャネルシフトを強力に推進しています。

「いかにして、企業は消費者と顧客関係性を深め、強化できるか」。それが、今、小売企業がつくらねばならない「Engagement(顧客との絆)」であり、「顧客経験価値」の醸成につながるのです。

 余談ですが、AIスピーカーを選ぶ際には、自身のライフスタイルを考慮すべきです。Amazon Echoは「買物の利便性」、Google Homeは「情報検索・提供」、Line Clovaは「Lineとの連動によるCommunication強化」、AppleのHomePodは「音質の良さ」が特徴なのだそうです。

(学習院大学 経済経営研究所 客員所員 中見真也)