最新決算の「注目点」はここだ!

 イオンの2018年2月期の決算が発表され、営業収益が前期比2.2%増の8兆3900億円、営業利益が13.8%増の2102億円となり、営業利益は6期ぶりに過去最高を更新した。事業別の内訳は以下のとおりである。

2018年2月期決算のセグメント別の業績(億円、%)

 収益の柱である「総合金融事業」と「ディベロッパー事業」と「ドラッグ・ファーマシー事業」が継続成長、「GMS事業」と「国際事業」が増益転換したことが、過去最高に貢献した。

 ディベロッパー事業ではイオンモールの中国事業で8モール(赤字は5モール)、アセアン6モールが黒字化を達成。中国23億円、アセアン5億円の利益改善となった。アジアでの営業利益は通期でまだ8億円のマイナスだが、第4四半期は営業黒字化している。増益のうち約7割が海外事業なので、今後はさらに収益向上が見込め、利益成長をけん引していくものと思われる。

 稼ぐ力のある総合金融(営業利益率17.1%)とディベロッパー(15.3%)は、これからも収益源としての役割を果たしていくだろう。

 ドラッグ・ファーマシー事業も市場の拡大が続くことから、成長が見込め、M&Aによる規模拡大も十分可能性があり、貢献度が高まることが予想される。

次なる主要課題は「SM事業の収益性向上」

 今回29億円の減益となったSM事業は、第4四半期で増益に転じ、今期の滑り出しも順調で、このままで進めば来期は増益が見込めるだろう。

 イオンではGMS改革にスポットが当たりがちだが、SM事業は営業収益が3兆2409億円とGMS事業の3兆842億円と肩を並べる事業で、ここでの収益改善も重要なポイントとなる。

 地域の分社化が進んでいけば、経営効率も改善されるだろうが、収益性の向上には(これは業界全体にもいえることだが)事業構造の抜本的な改革が必要だ。そして当面は各地域において店舗の営業力を高めて競争に打ち勝っていくことが求められている。

 SM業界はイオンを軸に業界再編が進んだが、今後も淘汰・再編の動きが加速するのは確実で、市場における寡占化が進行する。ローカルチェーンのイオン傘下入りも見込まれ、事業規模のさらなる拡大も予想される。規模拡大も続くが、SM事業の収益性をいかに上げていくかが次の主要課題になってきている。

「値下げは価格戦略ではない。小売業の基本から行った」

 一方で、GMS事業は大幅増で営業利益が105億円になったことで、今回の一連の決算報道でもみられるように、その回復ぶりに注目が集まった。営業利益が前期と比較し主要企業のイオンリテールで34億円、旧ダイエーのGMSと他の子会社でそれぞれ42億円ずつ増え、損益が改善された。

 イオンリテールでは、1点単価を下げて買上点数を増やしたことで売上減に歯止めがかかり、PB「トップバリュ」でNBとバッティングする商品群で値下げしリニューアルしたことも寄与した。この商品群は16年度より売上構成比が4.2ポイントアップし27.5%となっている。

 イオンリテールの岡崎双一社長は「値下げは価格戦略ではない。より良い商品をできるだけ安くという小売業の基本から行った」と説明し、消費者の節約志向に対応した単なる低価格戦略とは一線を画した取り組みであることを強調した。

 値下げの他にも、過去に行った地域事業部への権限委譲や商品分類の部門を越えた再編など、一連の改革の成果も復調要因に挙げ、今後のさらなる組織改革にも大きな成果を期待しているという。

 食品と比較して改革が遅れている衣料品では「キッズリパブリック」が形になりつつあり、住居余暇でも「ホームコーディ」で売場の活性化を図ろうとしている。

 両分野で改革への種はまかれつつあるが、まだまだ収穫に至ってない段階だ。正解が導き出されるまでGMSのあるべき姿を求めるイオンの取り組みはさらに進行していくが、新たな方程式も必要となるだろう。

「お客さまに喜んでもらえる店づくりを愚直に進める」

 イオンの岡田元也社長は、「小売業が基本から離れてしまったところをECに突かれてしまった。小売りの基本に戻らなければいけない。お客さまに喜んでもらえる店づくりを愚直に進める」と述べ、反省し、再定義し、やり直していくという。

 そのためには相当な投資が必要だと認識しており、特にITと物流へのインフラ投資が鍵となるとみている。

 18度は前年度より252億円多い総額で5070億円を投資する。店舗投資は282億円減額し、逆にインフラ投資は、前年度無かったECに284億円、IT・物流に823億円と合計で534億円増やす。

 まず、米国のEC関連のスタートアップ企業のBOXED社に出資し、AIを活用したデータ分析や高度な物流システム効率化のノウハウを取り込み、EC事業を強化し早急に拡充を図っていく。

 イオンは20年度にデジタルシフトを進め、ECなどデジタル関連の売上構成比を16年の0.7%を12%に引き上げ1兆2000億円まで拡大させる計画で、そのためには「マーケットプレイス」の再構築が急務となっている。

 今回の取り組みがどこまで奏功するかは不確定だが、ヤフーとの提携の行方も注目され、さらなる展開も出てくるだろう。

スピード感が必要でM&Aも加速化する!

 来期は営業収益が前期比3.7%増の8兆7000億円、営業利益は14.1%増の2400億円を見込みが、20年度は10兆円、3000億円を目標にしている。この実現のためには、ECで1兆円以上とDSで約6000億円の上乗せが必要となる。いずれにしてもかなりのスピード感が必要で、時間を買うという意味で両分野にとどまらず、M&Aも活発化していくと推測される。

 リアルとネットという対立の構図から抜け出て、リアルがネット事業を自ら行うことで成長を担保しようとしているイオン。EC事業においてはイオンは出遅れて、アマゾンなど先行企業の背中ははるか遠くにあり、追い付くのは容易ではない。

 ECではイオン自らがスタートアップで事業を起こす必要があり、その道のりは決して平たんなものではないが、その道を通らなければ未来は見えてこない。かつて大企業では企業内でベンチャーに挑んだがその成功例は極めて少なかった。ベンチャーからスタートアップ時代を迎えているが、巨大企業集団のイオンでスタートアップが成功すれば、稀に見る快挙となろう。