数年で今いるパートを半分にしないといけなくなる

 吉田:今国会で成立したときは、中小企業では2020年まで2年間の猶予があります。大企業では2019年からの適用ですから1年の猶予しかありません。小売業では、資本金5000万円以下、または、常時雇用が50人以下の会社が中小企業とされています。

 常時雇用は、期間の定めのない人をいうので、パートも短期雇用契約(アルバイト)でない限り、常時雇用に分類されます。

 複数の店舗を持つ小売業のほとんどは雇用数では大企業に分類されますが、資本金が5000万円以下のときは、中小企業として取り扱われる慣行です。

 しかしいずれにせよ、たった1年の差しかないので、どちらでも事実上、同じことでしょう。

 編集部:今まで、小売業は賃金格差をどう正当化してきていたのでしょうか。

 吉田:従来から、労働基準法で、「使用者は、労働者が女性であることを理由として、男性と差別的な取り扱いをしてはならない」という性差別の禁止と、「使用者は、労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱をしてはならない」という規定がありました。以上が、差別的労働の禁止と解釈されていましたが、条件は曖昧(あいまい)でした。

 このため主に、正社員には転勤や転属がある、パートにはこれがない契約だとして時間給の格差が是認されていたのです。

 今度の「働き方改革法」では、同一の労働内容であるときは、転勤・転属の条件だけでは、時間給格差を正当化できないとした点で、踏み込んだものです。

 編集部:あるところでは「正社員は幹部候補生として、現場で研修的にいろいろな作業を経験する」。このため、パートとは時間給に格差があるとしていると聞いていますが、これだけでは無理になるのですか?

 吉田:規定では、将来の幹部候補生であるという条件は抽象的なものとしか認められず、時間給格差は正当化できないとされています。労働内容に、賃金の違いを正当化するだけの違いがない限りは、同一賃金にしなければならないということです。

 編集部:なるほど……、そこまではっきりしたものなのですね。パートが正社員と時間換算で同じ賃金となれば、パートを半分に減らさないと、経営ができなくなるでしょう。

 吉田:その通りです。現在、1店舗に50人(正社員換算で25人)のパートが働いているなら、最長でも数年のうちに25人(正社員換算で12.5人)に減らさねばならない。

 配置を減らしても、同じ商品作業が行われなければならない。これが「同一労働・同一賃金」の経営的な意味です。

 これは店舗現場の商品作業の数量生産性を2倍に上げなければならないことを意味します。1人時当たりの発注数量、棚陳列の数量、レジ販売の数量、棚替えの商品数量が2倍ということです。現場作業の生産性は、物流センターのように商品数量で計るものです。

 編集部:現在、小売業、外食産業、サービス業で人手不足が言われている理由は、店舗の商品作業が「人海戦術」で行われているということでしょう。店舗の人を減らすだけでは、生産性は上がらないでしょうね。「店舗が回らない」状況が生じるからです。具体的には、どうしたらいいのでしょうか。

 吉田:①まず、現在行っている店舗の商品作業種類を挙げ、②次に、それぞれの作業の手順(フロー:流れ図)を描き、③ムリ、ムダ、ムラをなくし、情報システムも加えて、④生産性の高い作業フローを再構築することです。

 製造業では「生産ライン」でこれを行って生産性を上げてきました。自動車工場でいえば、1人当たりの生産台数にあたるものです。

 しかし小売業では、これを行ってこなかった。経営者は、売上げが15億円だから約50人が必要として人を配置し、必要な作業を委任して、個人の工夫を含んで実行させてきたからです。店舗の作業手順は、店舗や店長ではなく、会社(業務本部)が作るべきものです。

 ところが、任せるという作業委任が行われているため、生産性を上げるには人を減らす以外、どうしていいか分からないという会社が多いのです。

 売上げが増えて、人員数が同じなら生産性は上がるので、生産性を上げるには売上げを増やすことだと、本末転倒したことを言う人も多い。原因は、本部が店舗現場の作業の種類と手順を知らないからです。個店経営の体制では特にこれが多い。店長に全権が委任されているからです。

まずは表を使った「店舗の生産性分析」から始まる

 吉田:店舗の商品作業の種類がどんなものか分からない人も多いと思いますので、当方が作成した「店舗の生産性分析の基本表」を示します。エクセルで作成し、自動計算ができるものにしておきましょう。

店舗の人的生産性分析と改善表(エクセルで作成する)

 編集部:この表ですね。読者のために説明をお願いします。

 吉田:商品作業の作業工程(作業フロー)から言います。表を見ながら、読んでください。

入荷/検収作業は、店舗に入荷した商品の、荷受けから一時保管、そして検品・検数・検質の作業です。このよう分類し、その作業時間を計測します。2週間くらいでいいでしょう。合計の人時を記入します。その後、改善目標を書きますが、その方法は、後で述べます。

②次は、商品の陳列作業です。入荷/検収した商品を、店舗の所定の棚や平台に陳列する作業です。この作業時間が、レジと並んで最も多いでしょう。店舗の総作業人時の35%にはなっているはずです。

③は、発注の前の棚調べ作業です。次の時間も販売有効な在庫がいくつあるかを確認する作業です。スーパーマーケット(SM)では鮮度管理の作業にもなります。

④は、有効在庫の棚調べをもとにした、発注差作業です。

⑤はセルフサービス型の店舗では少ないと思いますが、販売/接客作業です。

⑥は、SMでの、店内調理/加工作業です。

⑦はレジ作業です。商品陳列と並んで多い作業です。店舗の総人時の40%程度になるでしょう。

⑧は棚変更作業です。商品の入れ替えや、陳列場の変更です。

⑨は、価格札を含むPOPを作って、所定の場所につける作業です。

⑩は、クリンリネス作業です。清掃だけではなく、陳列、商品、POPのクリンリネスも含まれます。

⑪は会議や書類作成の作業です。

⑫は、店舗内、本部、取引先とのコミュニケーションの時間

⑬は、その他の管理作です。

 もっと細かく分類できますが、13項目くらいにとどめないと、作業人時の計測が困難になります。作業時間の計測方法は、店舗の全員の作業者が、作業項目をあらかじめ書いた日報の形式で書き込んで、その時間を集計します。

 ここで1回のスペースに達しました。この生産性分析表への書き込み方は、次回も続けます。