イズミが広島につくった大型SCの「LECT」は核店舗、テナントの組み合わせにも工夫がこらされている。セブン&アイ・HDが前例踏襲型のSCをつくり続けるのとは対照的だ。

 イズミはグループで中国地方を中心に、「ゆめタウン」65店と昨春開業した「レクト」で大型SC、GMSを66店、「ゆめマート」78店、「ユアーズ」38店など123店のSMを展開している。

 これに対して、セブン&アイ・ホールディングス(HD)は、国内でコンビニ「セブン‐イレブン」2万260店、GMS「イトーヨーカドー」164店、「ヨークベニマル」「ヨークマート」のSM298店、そごうと西武の百貨店15店、赤ちゃん本舗、ロフト、デニーズなど専門店597店を擁するグループだ。

 その両社が業務提携することになったのは、既報セブン&アイとイズミが「婚約」の通りである。今回は提携に至った背景や両者の狙いに言及し、そこから見えてくる真実にできるだけ迫り、提携後の行く末を予想してみる。

イズミからの申し出に『渡りに船』だった?

 営業収益はセブン&アイが5兆8356億円に対し、イズミは7021億円(いずれも連結ベース)と大きな開きがあり、今回の提携はイズミから持ち掛けたということもあり、それを受けて大が小に手を差し伸べるという構図と思われがちだが、そのような単純なものではない。

 両者がかなり前から交流があり、提携に関して『あうんの呼吸』もあっただろうが、イズミから申し出に『渡りに船』と思ったのは、日米のコンビニ事業を成長の柱とし経営資源を集中させ、エリアと業態の「選択と集中」を進めようとしているセブン&アイだろう。

 大きな取り組みで具体的に進捗しそうなのが、イトーヨーカ堂に関することである。まず、中国地方で唯一の店舗であった広島県の「イトーヨーカドー福山店」をゆめタウン業態に変更しイズミが引き継ぐことで、懸案だった問題を解消できることになった。

 さらに、西日本における店舗の共同運営、共同出店等が検討されており、現在、大阪に5店、兵庫に3店のイトーヨーカ堂の店舗もイズミへの移行の可能性もある。実現すれば東海地方の8店舗を除いて関東圏を中心とした東日本に集中することができる。

 その先にはさらなる「エリアの選択と集中」も予想され、イトーヨーカ堂の業績が安定的に浮上しなければ、「イズミに学びたい」ということから、イズミのノウハウを活用しイトーヨーカ堂を再生するというプランが具体化してくることも十分考えられる。イズミによるイトーヨーカ堂の救済である。

 イトーヨーカ堂は17年度の売上高は1兆2136億円だが。収益が改善したとはいえ営業利益はわずか30億円、営業利益率は0.247 %の稀に見る低水準、これに対してイズミの営業利益率は5%(16年度)で、格段の差がある。このことから見てもイトーヨーカ堂との関係においてはイズミが業務提携を主導していくことは理に適っている。

 そして、それがうまくいかなかったら、選択と集中はエリアから業態に進んで、GMS事業消滅の危機につながる可能性をはらんでいる。

 セブン&アイは高収益企業だが、「収益の大半をコンビニ事業で稼ぐ一本足打法」であることは周知の事実だ。収益マシンのセブン‐イレブンは2018年2月まで客数が8カ月前年割れとなるなど、一抹の不安も抱えている。それだけにコンビニ事業に経営資源を集中させるということから、低収益の不採算事業から切り離そうとする可能性もゼロではない。

 業績面で足を引っ張るイトーヨーカ堂とそごう・西武は一大懸案事項である。イズミとの提携をきっかけに、今後新たな動きが出てくることも十分考えられる。

今、扱っているPB「くらしモア」はどうなる?

 提携には、仕入れの統合、輸入品、地域産品等の共同調達・商品供給もうたわれている。特に食品分野で、両社の中国(兵庫県を含む)、九州エリアの食品に関する売上げが9785億円と11.0%のシェアを持つことから、具体的な取り組みも出てくることが予想される。

 やり方次第で大きな成果を収めることも期待できるが、ただ、どちらがイニシアチブをとるか、帳合などの問題もあり、一筋縄ではいかないと考えられる。

 イズミの狙いの本命は、16年度に約1兆5000億円を売り上げたPBナンバーワンのセブン&アイHDのPB「セブンプレミアム」だろう。

 イズミは、ライフコーポレーション、平和堂なども参加するニチリウを通じてPB「くらしモア」などの商品供給を受けているが、セブンプレミアムは品揃えを強化するためには極めて有力なツールとなる。現時点ではセブン&アイ・HDからセブンプレミアムの供給を受けることを明言していないが、その可能性は極めて大きいだろう。

 3月に同じく業務提携した小田急商事も、セブンプレミアムの導入が予定されており、セブンプレミアムの商品供給の魅力は大きく、これからも提携するところが出てこよう。

 そして相手グループ店舗また敷地内への出店も視野に入れている。これはおそらく、ロフトなどのイズミの店舗への出店がメインとなり、イズミのブランドショップ「エクセル」の逆出店もある。セブン銀行のATMもイズミの店舗に設置されていくだろう。

 両社は電子マネーにおける提携も行う。セブン&アイの「ナナコ」とイズミの「ゆめか」が相互の店舗で使えるようになれば、確かに消費者にとっては利便性が高まる。だが、そればかりではなく、購入履歴などのデータの活用も進み、将来的にはシステムの統合も予想される。しかし、そのためには超えなくてはならないハードルもいくつかある。

 今回はあくまでも業務提携で資本提携ではない。セブン&アイ・HDの井阪隆一社長は、「自前ではスピードの変化に対応できない」と、イズミと提携する理由を説明した。その言葉には現状への強い危機感があり、イズミに対してSOSを発信し、謙虚に学んでいこうとする意味合いも込められているようにも思える。かつてはイズミがイトーヨーカ堂に教えを請うたことを思えば立場が逆転したともいえる。

「結婚」に発展するか? 「婚約破棄」になるか?

 今回の提携で今後、不都合な真実も表に出てくる可能性もあるかもしれない。それを乗り越えて両者が相互に恩恵を受けられることができれば、この提携は「結婚を意味する資本の関係」にも発展するかもしれない。だが、婚約破棄に至る可能性も全くないわけではなく、たとえ結婚しても幸せな生活が待っているか今の時点では不透明だ。

 以上、あくまでも個人的な見解と推測を述べたもので、限られた情報の中で必ずしも正鵠を射たものでないかもしれないことをお断りしておく。