小売企業、チェーンストア企業の方々と長いこと付き合ってきて、不思議だなと思っていることがあります。それは言葉の定義が曖昧なまま会話して、コミュニケーションが成立していないことに気が付かないことです。そのために起きた問題をたくさん見てきました。

 しっかり、言葉を定義して使いましょう。

 これから、その認識が混同される言葉を紹介していきます。

言葉の意味が曖昧でも平気な理由

「小売業、チェーンストアのお客さま層の特性」が、その理由ではないかと常々思っています。

 小売業、チェーンストアのお客さま層は「不特定多数という特性」を持っています。従って、小売企業、チェーンストア企業は長年に渡り、お客さまの店舗に対する期待を想像し、仮説を立て、検証しながら仕事を進めることに慣れてきました。多少曖昧なことがあっても平気に仕事を進め、問題がある場合、仕事を修正し続けてきました。いってみれば「仮説検証型の仕事の進め方」です。

 一方、メーカーの直接対価を支払う顧客層はバイヤー、購買担当という個人です。どんな経歴、どんな仕事の進め方、どんな言葉の使い方をするのか明確に分かります。従って、顧客を事細かに調査し、曖昧さを許さない仕事の進め方に慣れてきました。いってみれば「論理的仕事の進め方」です。

 どうもこの差が小売企業、チェーンストア企業が言葉の定義が曖昧でも気が付きにくい風土を作ってきたのではないかと思っています。

「生産性は2方向」「効率は1方向」

「生産性は分数の概念」で、分母にインプット(資源)、分子にアウトプット(価値)がきます。資源がどれだけの価値を稼ぎ出しているかを示すものです。

一方、「効率は整数の概念」で、投入資源のムダを排除することを指します。

 例えば、生産性を上げる施策は、「インプット(資源)を下げるか」「アウトプット(価値)を上げるか」、2つの方向があります。効率を上げるといった場合は「投入資源を下げる」という1つの方向しかありません。生産性を上げるという意味と効率を上げるという意味は違うのです。

 人時売上高という生産性指標は「売上高÷投入人時」で算出されます。人時売上高の向上の方向は「売上高という価値を上げるか」「投入人時という資源を下げるか」、2つの方向があります。それを明確にしなくてはなりません。

 人時生産性という指標があります。「荒利益高÷投入人時」で算出されます。人時生産性を上げる方向は、「値入れ高を上げるという本部バイヤーの努力」「ロスを下げるという売場責任者の努力」、そして「投入人時を下げるという店長の努力」と3つの方向があり、どこに問題があるのか特定できないまま、取り組みを進めると、現場は混乱する危険があるのです。

『人時生産性を上げる』という言葉は取り組みを曖昧にする大変危険な言葉なのです。人時生産性は『良い、悪い』という評価に使う指標なのです。問題解決を進める指標には向いていないのです。