インディテックス本社。テキスタイル倉庫や自社ファクトリー、物流センターなどを併設する。業容の拡大に伴い、新棟を建設中だ(写真左手)。

「ザラ」を展開するインディテックス社は世界一のカジュアルチェーンだ。2017年1月期の売上高は233億1100万ユーロ(約2兆8900億円)、前期比11.5%増と順調で、2位のH&M、3位の「ユニクロ」を擁するファーストリテイリングに水をあけている。
 営業利益率も17%と断トツに高い。ファストファッションの代表的ブランドで、自社で企画・開発から販売まで手掛けるSPA(製造小売業)だ。広告・宣伝を打たず創業者のアマンシオ・オルテガ会長も各国の社長もマスコミに登場しないため、実体はベールに包まれている。
 スペイン北西部のア・コルーニャにある本社は創業の地であり、世界に張られた情報網や生産網、物流網の中枢だ。全ての商品が生み出されるデザインルームやデジタルルーム、仮想店舗、自社工場、テキスタイル倉庫に加え、マドリードの物流センターを取材し、ザラの強さと速さを支える仕組みを探った。

1 企画~投入は最短2、3週間。少人数のチームで迅速に決定

 本社にいるデザイナーは約600人。うちザラは350人。カテゴリー(ウイメンズ、メンズ、キッズ)とアイテム(シャツ、ジャケット、スカート、デニムなど)、北半球と南半球、さらに商品開発サイクルで担当が分かれる。

 商品開発サイクルでは、店頭の売れ行きや顧客ニーズなどに基づき、平均2~3週間の短サイクルで期中向け商品を作るチーム、2 市場の変化や大きな潮流などを捉えるチーム、3 3カ月から半年かけて完成度の高い商品を開発するシーズンの立ち上がり担当チーム――を編成。

 商品の企画・開発拠点となるデザインルームはウイメンズ(2万4000m2)、メンズ(1万3000m2)、キッズ(同)のフロアに分かれる。白を基調とした広々としたフロアの中央には国ごとに担当を持ったプロダクトマネジャー(MG)たちの席が並ぶ。その片側にデザイナーチーム、もう片側にはテキスタイルや付属、生産工場など取引先との窓口になるバイヤーチームを配している。

 パターンからサンプル、商品のプロトタイプまで作るパタンナーのチームもフロア内に併設。原寸大の型紙プリンターやミシンなどもあり、ミニ工場のようだ。

 職種ごとではなく、プロダクトMGとデザイナー、パタンナー、バイヤーら6、7人がチームを組み、同時進行で商品の企画、検討、サンプル開発、商品化決定までを行う。このワークスタイルはザラが鮮度の高い商品を素早く店頭に投入し、消化率を高められる理由の一つだ。

2 商品開発の基点は顧客・店のデマンドチェーン

デザインルームでは中央に席を構えるプロダクトMGを軸に、デザイナー、パタンナー、工場への発注や生地バイイングなどを行うバイヤーなどがチームになり同時進行で業務を進める

 商品開発の基点は店舗からレポートされる顧客のニーズや動向だ。市場動向に合わせた「マーケットイン」でも作り手の独自の企画を提案する「プロダクトアウト」型でもなく、顧客のニーズ・店舗のニーズに合わせた「デマンド」型だ。供給者都合のサプライチェーン(供給連鎖)ではなく、顧客基点のデマンドチェーン(顧客の需要から生産や販売などの活動を行うこと)を目指している。

 店舗と本社との情報共有役は、世界中にある全店のMG(ストアMG=ウイメンズMG、メンズMG、キッズMG)と本社にいるプロダクトMG(各国のウイメンズ、メンズ、キッズごとに担当)だ。売れ行きや在庫状況などのデータはパソコンやタブレットなどで共有しつつ、生きた情報や気になる動きなどを電話やメールで毎日やりとりし、顧客ニーズの的確な把握に力を傾けている。

 プロダクトMGはその情報に基づいて何を作るべきかを決め、デザイナーに企画を託す。出来上がったデザインはプロダクトMG、バイヤー、パタンナーら6、7人で構成する混合チームで検討・修正し、サンプルを作製。修正を繰り返し、商品化のベースとなるプロトタイプを作り上げ、生産オーダーをかける。

3 データを基に店発注枠を用意、48時間後に世界全店に納品

 商品は「商品データベース」に登録される。各ストアMGは各国にいるカントリーMG、営業担当、本国のプロダクトMGと話し合いながら、店からパソコンやタブレットを通して必要な商品を発注できる。これを週2回、約1時間行う。

 全店共通商材や推奨商品などもあるため、プロダクトMGが全体的なバランスを取りながら数量や品番をまとめ、発注から1時間後には物流センターへの発送指示を完了。店別に段ボールに詰められ、発注から2時間後に出荷準備を開始、8時間以内には物流センターから出荷する。ヨーロッパの店舗ならトラックで36時間以内、日本やアメリカなどその他地域には空輸で48時間以内に店舗に届く。

4 データセンターで情報を集約、仮想店舗で陳列方法を確立

オフィスの一角にあるデータ処理センター。世界各国の動向をリアルタイムに把握。背後には大容量のコンピューターがずらり
地下には店舗さながらのパイロットストア(仮想店舗)が並ぶ。什器にどのように陳列するのかを考え、写真に撮ってイントラネット経由で指示。店舗では新商品でも混乱なく陳列できる。
オフィス内には撮影スタジオも完備。専属のヘアメークやカメラマンに加え、モデルやスタイリストなどを随時配し、ウェブやECカタログなどに掲載されていく

 全世界での売れ行きはデータ処理センターにリアルタイムに集まってくる。この情報を迅速に共有して分析し、次の意思決定や行動につなげている。

 本社地下の仮想店舗(パイロットストア)も圧巻だ。30ブース近くあるウインドー専門店、ウイメンズの「ザラウーマン」「ザラベーシック」、同カジュアルの「ザラTRF」、メンズ、キッズなどの仮想店舗が並ぶ様はまるでショッピングモールだ。ここで陳列やディスプレーの組み方を決め、写真に撮って全店にイントラネットで指示を出す。

 EC(電子商取引)部門にはカスタマーセンターも併設。天井が高い10以上の撮影ブースではヘアメークやカメラマン、スタイリストなどが代わる代わるモデルに対応。服を着用させ、撮影したそばからウェブサイトにセットし、翌日には売り出されているというスピード感だ。